なべたんの極力直そう(1)「仁保のガードレールを極力直そう(前編)」

なべたんの極力直そう(1)「仁保のガードレールを極力直そう(前編)」

渡邉朋也
渡邉朋也 (ID233) 公認maker 2014/07/17
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春は出会いの季節であると同時に別れの季節でもあります。先日、職場の同僚の送別会に参加するため、山口市の仁保(にほ)に行ってきました。

仁保とは?

仁保は、山口県山口市の中心部から北東におよそ10kmほど離れた場所に位置する山あいの地域です。その面積の多くを山や森が占めますが、平坦な地区には田畑が広がり、米や果物の生産が盛んにおこなわれています。……などと言っても、大半の方が山口市の中心部はおろか、山口県の位置すらピンと来ていない状態だと思いますので、地図にピンを立てておきました。こちらです。

だいたいこんな感じの場所です。山口市の中心部の、たとえば山口県庁や山口市役所のあたりからは自動車で20分くらいで行けると思います。自分は自転車を運転できないので、あくまで推測ですが。ちなみに自転車だと50分くらいかかりました。自転車で行く場合は、仁保峠を越えていくルートよりも、大内を回っていくルートの方が楽でオススメです。

道の駅の向かいには、巨大なパラボナアンテナが立ち並ぶKDDIの通信施設があります。日本最大の衛星通信施設らしいです。パラボナアンテナは国際通信など国の重要なインフラを担っている大変な設備ので、自分のようなパンピーは近づくことができませんが、その手前に「パラボラ館」という博物館があり、そこには自由に入ることができます。衛星通信とか光ファイバーについて学べるので、そういう知識が必要な時に重宝します。

道の駅からちょっと離れるとこんな感じになります。田んぼ、山、田んぼ、山、田んぼ、山、家。田んぼはまだ春なので、耕してあったり、耕してなかったり、水を引いてあったり、引いてなかったりと中途半端な状態です。この辺りは川の上流で水がキレイなこともあってか、けっこう米が美味いです。せっかくなので、もうちょっと仁保の様子を紹介しておきます。

仁保のガードレール

話は送別会に戻ります。ことしの送別会の会場が、大正から昭和初期にかけて活躍した小説家、嘉村礒多の生家「帰郷庵」だったので、自分は先ほど紹介した「道の駅」からさらに県道123号線に沿って北に自転車で移動していきました。自動車なんてめったに通りませんが、都会で自転車に乗るように、規則正しくガードレールの脇をひたすら走ります。

山口県の県道のガードレールがオレンジ色なのは、1963年に国体が山口で開催されたときに、当時の県知事が名産の夏みかんの色にしようと提案したから……。どこまでも続く大自然、どこまでも続くガードレールを眺めていると、そんなドライブの最中に使えそうな山口トリビアが脳裏に沸き上がってきます。とその時、思いがけない情景が飛び込んできました。

ボルト無いじゃん!

ここだけボルトが無いなんて、なんだか気持ち悪くないですか?正直、別に……って気もしますけど、逆に直さない理由も無いですよね?ちょっと危なさそうな気もするし。というわけで、3Dプリンターを使ってボルトをつくることにしました。

採寸する

周囲にあるガードレールを観察すると、1つのことが理解できます。それは、どのガードレールにも同じようなボルトが取り付けられている、ということです。その道のプロが見たら「1本1本違うんだよ」とたしなめられそうですが、少なくとも今の自分には同じに見えます。ですから、これらのボルトと似たようなものをつくり出すことができれば、先ほどのガードレールも直すことができる。そのように考え、早速ほかのガードレールに取り付けられているボルトを採寸しました。

ノギスの使い方を誰からいつ教わったのか、全く思い出せないにも関わらず、サクサクとノギスを使えてしまう自分が怖いです。ノギスの才能があるかもしれません。ノギスは、ちょっとやる気出すだけで1/10mm単位でモノの大きさを測ることができるナイスなアイテムですので、このウェブマガジンをご覧のみなさんもぜひ導入をご検討ください。次にこの採寸結果に基いてポンチ絵を描いてみました。

頭が丸いボルトなんて、初めて見たかもしれません。ちなみにワッシャーの内径はボルトの直径よりも大きければOKという感じで適当ですし、ワッシャーの厚みは2.5mmだったとこの絵を描いてから思い出しました。

このポンチ絵を見ていると、ナットとワッシャーは問題無いのですが、ボルトが少し大変そうです。というのも、3Dプリンターは、溶けたプラスチックを下の方からちょっとずつ積み重ねることでモデルを形成するようなので、底面よりも上部が大きすぎるとうまく出力できないのではないかという懸念があるのです。まさにこのボルトがそんな形状をしています。ですから、今回はボルトを出力しやすいように頭とネジ部分に分割して、出力した後に接着剤などで結合させることにしました。

ここからはモデリングの作業に移ります。自分は3Dと言えば現実くらいで、ほとんど3Dプリンターやモデリングソフトウェアを触ったことが無いので、自分のような初心者でも比較的取っ付き易いTrimble社の「SketchUp」というソフトウェアを使います。
http://www.sketchup.com/

ボルトの頭をつくる

ボルトの頭は、まるで正球の一部を切り取ったような形状をしています。なんだか知ったふうな口をきいてしまいましたが、実際はそんな気がするだけで、本当に正球の一部なのか、自分のノギススキルでは分かりませんでした。すみません。才能ありません。ここではとりあえず正球の一部なんだということで話を進めていきます。

まず、正球の一部を切り取って、その切片の断面の直径が32.6mm、断面の中心部から切片の頂点までの高さが6mmになる場合について、断面図から考えてみます。

まずはこの円の半径Rを求めたいところです。そこで、実線部分(切片の断面)の頂点をA、左側の端点をB、右側の端点をCとし、それぞれを結ぶ三角形を描いてみます。

△ABCの外接円が、いまその半径を求めようとしている円ということになりますので、こうなるともう正弦定理の出番です。この辺の計算はあんまりニーズが無さそうなのと、ボロが出そうなので端折ります。以下のウェブサイトで細かい計算はしてくれますので、中の人に感謝しながら利用しましょう。
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228774
http://keisan.casio.jp/exec/system/1260261251

ということで、半径Rは25.14083355mmだということが分かりました。ありがとう正弦定理。早速、SketchUpで直径50.2816671mmの正球をつくります。

半円をグルリと回転させて球をつくるという方法もあるのですが、SketchUpは円を、そう頂点の多くない多角形として処理しているようなので、その手法で球を作った場合、3Dプリンターで出力した結果がガビガビになる可能性が高いです。ですので、こだわりたい人はSketchUp内蔵のギャラリーから精度の高い球をダウンロードして使うといいと思います。こだわり派の自分は精度の高い球を使いました。次にこの正球をスライスします。

グラウンド(地面)から高さ6mmのところに平面を配置します。平面の形状は長方形でも円形でも、球より大きければなんでもいいです。配置したら、「面を交差」という機能を使います。

それっぽい形ができました。SketchUp上で断面の直径を測ってみると32.57mm強でしたが、許容範囲ということでスルーしましょう。3Dプリンターで出力する時の誤差の方が大きいです。次に採寸結果によると、この断面の上に2mmの厚みがあるので、それをつくります。

断面を選択した後、プッシュ/プルツールを使って2mm持ち上げます。

これでボルトの頭部が完成しました。

ボルトの角根をつくる

と、ここまでつくってきたところで、1つの疑問が沸き上がってきました。この調子で、ボルトとナットをつくっても、上手く締まらないのではないか、という疑問です。というのも、このボルトを見てみると、頭の部分にドライバーが差し込めそうに無いし、スパナで挟みこむこともできそうに無い。つまり、ナットを締める時に、ボルトをガードレールに対して固定する術が無いということです。だから、このままあのガードレールにボルトを突っ込んで、ナットを回しても、あるところから先はボルトもナットも、くるくる回転してしまってがっちり締めることができなさそうです。

それはそれで一興な気もするし、そんなボルトだからガードレールから抜け落ちてるとも言えそうですが、もう少しこの問題について考えてみることにします。

あれからどれくらいの月日が経ったでしょうか。ようやくヒントになりそうなものを見つけました。

そう、あのボルトの外れたガードレールです。この外れた部分をよく見てみましょう。もし、この場所に取り付けるのが、普段使い慣れているボルトだとしたら、こんな中途半端なかたちにするでしょうか。ボルトの径よりもちょっと大きい正円の穴を打てばいいだけなはずです。もしかして、この穴の形状を活用するのでは……。ということで、ネットを調べてみると、いきなりドンピシャなものが出てきました。

ポンと膝を叩いてしまいました。このボルトを見てください。頭の部分と、ネジの部分の間に、直方体があります。もし、このボルトが取り付けられる側に、この直方体と同じサイズの穴があれば、そこにこのボルトの直方体部分はめ込むことで固定できるではないですか!そうすればナットをがっちり締めることができるはずです。

今回のガードレールのボルトも、おそらくその直方体システムが活用されているのではないでしょうか。穴の部分、とくに手前の穴は、上下がそれぞれ直線になっています。ここにしっかりとハマるような直方体がボルトの頭の下に用意すれば、回り止めの役割を果たしてくれそうです。

この先人の知恵が詰まりまくってそうな直方体システムは正式には「角根」と言うそうで、ガードレールに取り付けられているボルトのような頭の丸いタイプは「丸頭角根ボルト」と言うそうです。丸頭にしておくと、いたずらでボルトが外されるのを防げるらしいのですが、スパナがあれば後ろのナットを簡単に外せちゃうから、そこまでいたずら防止効果は期待できない気もします。何か他にもメリットがあるのだと信じたいです。

というわけで、早速この角根をモデリングしましょう。ガードレールに空いた手前の穴を採寸してみたところ、その大きさは高さ22.5mm、横幅50mmでした。他のボルトを観察したときにボルトの頭から角根がはみ出ていなかったことを考えると、角根の底面のサイズは、大きくても一辺22.5mmの正方形だと考えるのが妥当でしょう。また、しっかりと締められているガードレールのボルトで、ガードレールから浮いているものが見当たらなかったので、角根の高さはガードレールの厚み=2mmよりも少ないと判断しました。ひとまず今回は、角根の高さは2mmとします。

先ほどつくったボルトの頭の上に、22.5mm四方の正方形を描き、それをプッシュ/プルツールで2mm持ち上げます。

これできちんとナットを締められそうです。

ただ、この角根付きの頭の形状は出力が難しそうなので、先ほどボルトを頭とネジに分割したように、球面と角根で分割しておきます。

これで出来上がりです。

次回はネジ部分、ナット、ワッシャーをモデリングした後、実際に出力し、ガードレールを修復するところまで行ってみたいと思います。ご期待ください。(つづく)

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