なべたんの極力直そう(2)「仁保のガードレールを極力直そう(後編)」

なべたんの極力直そう(2)「仁保のガードレールを極力直そう(後編)」

渡邉朋也
渡邉朋也 (ID233) 公認maker 2014/07/28
0

前回は仁保のガードレールのボルトの頭と角根までつくりました。続きの作業を行いましょう。

ボルトのネジをつくる

次はネジ部分です。まがいなりにも高度情報化社会と呼ばれる社会を生きていく中で、まさかネジをゼロからつくる機会に恵まれるなんて、人生は何が起こるかわかりません。しかし、かつてヨーロッパにおいては旋盤を持つことがステータスだった時代があり、貴族の間でネジをつくるという趣味が流行っていたという話を聞いたことがあります。いまで言えば、与沢さんやホリエモンさんがネジをつくっている感じでしょうか。この例えは今の時期、あんまりシャレにならなさそうですが、ともかく貴族のような高貴な心を持って作業を進めていきましょう。

まず、身の回りにあるボルトを観察してみることにしました。一見すると、ボルトのネジ部分はとても細かいので、とても面倒くさい作業になりそうだなと思いますが、ずーっと眺めていると、ただ円柱に螺旋状に溝が彫ってあるだけだということに気づきます。螺旋というのは、XY平面で回転する点Pが、Z軸方向に等速直線運動した際の軌跡で求められると、数学の先生が言っていました。しかし、モデリングソフトウェア上で螺旋なんてどうやってつくればいいのでしょうか。

https://www.youtube.com/watch?v=IT5r3AQZBnw

と思ったら、SketchUp上でネジをつくってるおじさんの動画を発見しました。とても参考になる……と思ったら作業スピードが早過ぎる!基本的にはこのおじさんの作業をなぞることで今回のボルトもつくれそうなので、ゆっくりと順を追って進めていきます。

まず、原点の回りに円を書きます。

今回のボルトのネジ径と同じ、直径16mmの円を描きました。次に円周上を右クリックして「曲線を分解」を選択します。

すると、円が正24角形になり、正24角形を構成する辺や頂点に対して個別に処理を行えるようになります。以前どこかで、SketchUpは多角形として円を表現していると書きましたが、実は正24角形として表現しているのです。SketchUpならではの手法で、非常に感心します。次に、円周上の任意の頂点を選択し、X軸方向へ持ち上げます。

持ち上げる高さは適当で大丈夫です。すると、円周上にツノのような形状ができあがります。次にツノの1辺を残し、全てを削除します。

この時、反対側のツノを消さないように注意してください。反時計回りに上がっていくツノを残してください。逆のまま作業を進めていくと、いわゆる「逆ネジ」が出来てしまいます。次に、残したツノを、原点を中心にYZ平面(地面)上で15度回転させながら、コピーします。

この15度というのがキモで、これは要するに正24角形の中心角(360÷24)ということですね。これができたら、このツノが円周上を1周するまで繰り返します。

SketchUpは繰り返し処理が可能です。いったんコピーの作業をした直後に、右下のテキストエリアに「23x」とか入力すると、23回繰り返してくれるので、ツノが1周します。次に、こうして出来上がったこの冠状のオブジェクトを全部選択して、X軸方向に持ち上げながらコピーします。

この時、コピー先と、コピー元が繋がるようにします。基本的にはそうなるようにSketchUpの方でスナップしてくれるので、それに従えば大丈夫です。信用してください。次に、この作業をまた23回繰り返します。

先ほどと同様、コピーしたあとに、右下のテキストエリアに「23x」とか入力すれば大丈夫です。出来上がった形状をよく見てみましょう。実はこれ、螺旋1周分が24個並んだものなのです。ただ、24個も螺旋はいりません。どれか1本を残して全て削除します。

螺旋ができました。しかし、こんな陰毛みたいに緩い螺旋だとナットがきちんと締まらないので、X軸方向に圧縮します。

この時の高さがそのままネジのピッチになります。直径16mmのネジのピッチは、JIS規格では2mmらしいので、なんとなくそのようにします。だんだん見えて来ましたね。次に、この1周分の螺旋構造を選択し、X軸方向に持ち上げながらコピーします。

例によって、コピー先と、コピー元が繋がるようにします。そして、適当な回数繰り返しましょう。猛烈にネジ感が出てきましたね。次に、この螺旋構造をグループ化し、原点を中心に、地面上で180度回転させながらコピーします。

すると2つの螺旋ができます。これらがそれぞれネジの山と谷になっていきます。次にこの2つの螺旋の内部を円柱で埋めます。

螺旋の下に16mmの円を描き、プッシュ/プルツールで持ち上げれば大丈夫です。ネジの原型のようなものができました。次にどちらか片方の螺旋を絞って谷をつくります。

まず、円柱に巻き付いている2つの螺旋のグループ化を解除し、どちらか片方の螺旋を「尺度ツール」を使って、中心を基準にYZ方向に縮小します。このとき、X軸の大きさは変えないようにします。ググっと谷の螺旋が小さくなることで円柱が絞られ、突然ネジが現われます。ネジの高さは、これまたJIS規格では1mmちょいらしいので、そのようにします。

あとはこのオブジェクトの長さを30mmにカットして出来上がりです。

ナットをつくる

ネジまでつくってしまえばナットは簡単です。基本的にはナットはネジの補集合的な存在なので、六角柱をつくってからネジで型抜きをすればつくれると思います。

まずは六角柱をつくります。

多角形ツールで、1辺と中心点を挟んで向こう側にある1辺との距離が24mmになるような正六角形を描いた後、プッシュ/プルツールで14mm持ち上げます。次に、この六角柱の中心に先ほどつくったネジを配置します。

このままこの六角柱からネジを引き算したいところですが、このままだとネジとナットがぴったり過ぎて締めることはおろか緩めることもできないと思います。実際、近所のホームセンターで買ってきたナットは、ボルトに対して結構ゆとりがありました。そこで、なんらかの方法でナットの内側をオフセットしたいのですが、そういう便利な機能はSketchUpには無いようです。仕方ないので、今回は違う方法でゆとりをつくります。

いま六角柱と重なっているネジをYZ方向にほんの少しだけ大きくしましょう。

なんとなく1mm以上はゆとりが欲しいので、たとえば1.1倍に大きくしましょう。X軸方向はそのままです。もう少しゆとりが少なくても大丈夫だと思いますが、その辺は好みの問題ということでいいと思います。次に、「ソリッドツール」で型抜きをします。

この「ソリッドツール」という機能はSketchUpのPro版とその評価版にしか無いので、お金が無い人は評価版をダウンロードしてから8時間以内にこの作業を終えてください。「ソリッドツール」から「減算」を選択した後、2つのオブジェクトを選択すれば型抜きが出来ます。

これでナットは出来上がりです。

ワッシャーをつくる

ここまでボルト、ナットをモデリングしてきたので、ワッシャーのような単純な形状の物体は秒殺です。

まず、採寸結果に基いて直径39.5mmの円を描きます。

次に、その内部に直径17mmの円を描きます。

次に内側の円を抜きます。

残り部分を選択し、プッシュ/プルツールで2.5mm持ち上げます。

ワッシャーの出来上がりです。10秒。

出力する

ここまでモデリングしてきたオブジェクトをいよいよ出力したいと思います。その前に、ボルトは今回分割して出力するので、出力した後にスムースかつ正確に接着できるように継ぎ手のようなものをつくっておきます。

まず、ネジの上部に継ぎ手のためのでっぱりをつくります。

大きさは何でもいいので、とりあえず、幅7mm×奥7mm×高さ4mmくらいにしておきましょう。

次に、角根の部分に継ぎ手のための受けをつくります。

3Dプリンターの精度が心配なので、受けは大きめに、幅7.5mm×奥7.5mm×高さ4mmくらいにしておきます。これで出力後に両者をはめれば、正確に接着できるでしょう。

これでようやく3Dプリンターの出番です。

今回はMakerbot社の「Replicator 2X」を使用します。この装置でモデルを出力するためには専用のソフト「MakerWare」が必要ですので、インストールします。

これがMakerWareの画面です。灰色の部分が、Replicator 2Xのプレートに相当しますので、この部分にいままでつくったオブジェクトを並べていきます。

並べてみました。背景の都会と相まって戦隊モノのようです。早速、Replicator 2Xに読み込ませるファイルを作成し、SDカードに書き込みます。

SDカードを装着し、いざ出力です。今回は特に込み入った設定はせず、デフォルトのままで行きます。

ついに完成しました。所要時間およそ1時間といったところでしょうか。早速出力された物体をプレートからひっぺがし、物体の下にくっついている「ラフト」と呼ばれる土台もひっぺがします。

なかなかうまく出力されている気がします。3つに分割されたボルトを接着剤でくっつけます。

ボルトが出来ました。ついでなので、ワッシャーをはめて、ナットを締めてみます。

ナットはゆる過ぎもせず、きつ過ぎもせず丁度いい感じです。これなら仁保のあのガードレールも直せるのではないでしょうか。

ついに完成!

仁保に帰ってきました。今日も仁保は晴れています。エルニーニョに負けないで欲しいです。例によって自転車で現場に向かいます。

現場に着きました。ボルトが無くて不安です。早速取り付けます。

取り付けに成功しました。

周囲と比べても違和感無いです。

ただ、周囲のボルト、ナット、ワッシャーの素材が金属だったのに対して、自分がつくったものはプラスチックですから、ちょっと強度が心配です。管理者の方がこの状態で安心されるとマズいので、書き置きを残しておきました。

これで大丈夫でしょう。

まとめ

仁保の周辺で、他にもボルトが欠落したガードレールがあった場合に備えて、今回つくったボルト、ナット、ワッシャーのデータをThingiverseで公開しておきます。周辺の方、ぜひお役立てください。
http://www.thingiverse.com/thing:345192

最後になってしまいましたが、会田さん、松冨さん、片岡さん、田中さん、美和ちゃん、長きに渡る勤務おつかれさまでした。

参考にしてくれた記事

記事が登録されていません。
この記事を参考にして、新しく記事を投稿しよう!

違反について