インターネット・リアリティ・マッピング(3)「JODIとエキソニモ(後編)」

インターネット・リアリティ・マッピング(3)「JODIとエキソニモ(後編)」

水野勝仁
水野勝仁 (ID145) 公認maker 2014/08/04
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ハッキングされているのはコンピュータか? それとも私たちか?

前編ではJODIとエキソニモの作品には「ハッキングの感覚が溢れている」のを確認しましたが、今回は何がハッキングされているのかを考えて、マッピングしていきます。

デスクトップ・リアリティと遊ぶ身体/消える身体

さて、次にJODIとエキソニモを他のアーティストと大きく分けているのではないかと考えられる「デスクトップ・リアリティ」と身体との関係をみていきましょう。「デスクトップ・リアリティ」というのは前回説明した「インターネット・リアリティ」と同じように、ディスプレイやキーボード、マウスと常に向き合っていることから生じる身体と密接に関係した感覚だと考えてください。「今日レポート書かないと」と言っているときに、鉛筆で書くジェスチャーではなく、キーボードを叩いているジェスチャーをしてしまうような感じです(あるいはスマートフォンのフリック入力のジェスチャーをするヒトもいるかもしれませんが…、そうなるともう「デスクトップ」・リアリティとは言えませんね)。私たちの身体はどんどんコンピュータを経由した感覚が入り込んできているわけです。

JODIとエキソニモにもどりましょう。JODIとエキソニモは「デスクトップ」そのものや、ディスプレイやマウス、キーボードを使った作品があります。このようなコンピュータの物理的なインターフェイスをダイレクトに用いた作品はネットアートやポストインターネットアートと呼ばれる他の作家にはあまり見られないものです。マウスやキーボードが作品のメインに据えられると、私たちはそれらを普段使っているわけですから、作品を見ているときに否が応でも使っている感覚も呼び覚まされるわけです。だから、作品でマウスやキーボードなどが普段と異なった使い方をされているとそこには不思議な感覚がでてきます。JODIの《SK8MONKEYS ON TWITTER》(2009)という作品は、キーボードをスケートボードにして、それでtwitterに投稿するというものです。ツイートをスケーボーで行うとどうなるかというと、twitterというその時々の考えや気持ちを表しているウェブサービスがスケーボーという行為の記録になると、アートライターのTom McCormackは指摘しています。スケーボーの行為の記録ですから、そこでのツイートは言葉的には意味をなしません。それでも、それはtwitterがもっているその瞬間の出来事=スケーボー行為を記録するということにはなっているわけです。JODIはキーボードをスケーボーにすることで、コンピュータと身体との関係性を普段とは全く異なるものにして「デスクトップ・リアリティ」と遊んでいるようです。

>「SK8MONKEYS ON TWITTER」
twitter: https://twitter.com/sk8monkey

http://youtu.be/98nK-Fybks0

対して、エキソニモはデスクトップ・リアリティにおける身体を消していく作品をつくっています。《SK8MONKEYS ON TWITTER》と同じ2009年にエキソニモが発表した「ゴットは、存在する。」という連作では、ヒトの身体の存在がすっかりと消されています。例えば、2つのマウスが重ねられることでディスプレイ上のカーソルが動き出す《祈り》や、スペースキーに置かれたトロフィーなどのモノが「かみ」という言葉の変換候補を延々と繰り返す《迷い》といった作品があります。これらの作品では、ヒトはコンピュータに触れていないけれども、普段ヒトが行っているようなことがコンピュータそれ自体が行うようになっています。「ゴットは、存在する。」はいつもヒトがいるところにヒトがいない。けど、どうしてもそこにヒトの存在を想像してしまう。でも、そこにはやっぱりコンピュータしかないというとても不思議な感じがする作品群です。

>「ゴットは、存在する」
http://www.ntticc.or.jp/Archive/2009/MetaverseProject/GotExists/index_j.html

2009年に発表したふたつの作品から考えられるJODIとエキソニモとの違いは「デスクトップ・リアリティと遊ぶ身体/消える身体」といえます。そして、「デスクトップ」そのものを題材にしたJODIの「myDTP 」シリーズとエキソニモの《Desktop BAM》(2011)もこの違いを示しています。「myDTP」シリーズでは、JODIが自分たちがマウスでカーソルを動かしてデスクトップにあるフォルダアイコンやウィンドウなどと戯れながら「演奏」している様子を画面キャプチャーしたものです。エキソニモの《Desktop BAM》は、自作したカーソル・エディタでカーソルの位置やクリックなどの行為を予めコンピュータに入力しておき、その指示に基いてカーソルがヒトでは不可能な速さで画面上を動きながらアイコンをダブルクリックしたり、ウィンドウを開いたり閉じたりしながら「演奏」するものです。「myDTP」では、カーソルを動かしているのが「いかにもヒトだな」という動きですが、《Desktop BAM》では「カーソルってこんなに速く正確に動くんだ」という感じです。なので、《Desktop BAM》を見ていると、ヒトがカーソルの動きを制限しているのではないかと思ってしまいます。

>「myDTP」

https://vimeo.com/4272902

>「Desktop BAM」

https://www.youtube.com/watch?v=p9gTcP5aIkA

何をハッキングするのか?

「ハッキングの感覚」に基いてネットで作品をつくってきたJODIとエキソニモですが、デスクトップを前にした身体に関しては、「遊ぶ」身体と「消える」身体という別々の方向に進んでいるような感じがします。JODIはコンピュータの前に縛られているヒトの行為をハッキングしているのかもしれませんし、エキソニモはヒトに縛られていたコンピュータをハッキングしているのかもしれません。どちらにしても、JODIとエキソニモはウェブやコンピュータの世界からはみ出して、ヒトとコンピュータから構成される世界そのものをハッキングしはじめているような感じがします。ネットアートのパイオニアであるこの2組の男女ペアアートユニットがこれからどんな作品をつくっていくのか、とても楽しみです。

次回はエキソニモとニューヨークを拠点に活躍するライダー・リップスをマッピングしていきます。

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