電子工作の一歩先へ(2)「保育園の電子遊具作り 制作編」

電子工作の一歩先へ(2)「保育園の電子遊具作り 制作編」

yakulは、プロトタイピングやオリジナルのデジタルプロダクトの企画、設計、量産を行うハードウェアベンチャー企業です。

チームラボ社で「チームラボハンガー」や「チームラボボール」「メディアブロックチェア」などを開発したエンジニア・アーティストの穴井と、アート案件やWebサービス開発やビジネスを作っていたディレクターの大山とで2013年秋からはじまりました。ハードウェアを軸としたサービスをビジネスレイヤーからつくれるのが強みです。仲間も常に募集中です!

http://yakul.jp/

https://www.youtube.com/watch?v=23I0jr7ohww

「電子工作の一歩先へ」と題して、電子工作を実際のプロダクトに落としこむまでの流れを、具体的な事例を使って紹介します。前回に引き続き、福島県南相馬市の保育園のために作った【電子の世界 / 知らない世界 / きみの世界】というデジタルのおんがく遊具を作った話について書いていきます。

プランニング編はこちら
https://media.dmm-make.com/item/1355/

制作

<システム概要>

システムとしては上の図のような感じになっていて、筐体の上部に配置したスイッチ(円盤)を押すとmicro SDに内蔵されたmp3が再生され、演奏中は筐体がLEDにより光るという仕組みになっています。


<まるいけんばん>

↑ 初期試作の機構写真


↓ 実際の機構

・機構
当初は、表面のアクリル板にスイッチを埋め込み、その上に木の円盤をのせるようなシンプルな構造で実現することを考えていましたが、今回は相手が子どもです。鍵盤を引きはがそうとしたり、思いきり飛び乗ってきたり叩いたりする可能性が大いにあります。

そういった想定外の利用シーンも考慮し、鍵盤が引きはがされないようにスイッチとアクリル板を可動式のネジで固定したり、強度を担保するために鍵盤を取り付けるアクリル板を厚くしたりといった工夫をしました。

子どもと一概に言っても、思い切り叩いたりする子から、ちょっと控えめに押してくれる子までいます。どんな子でも楽しめるように、軽く押しても反応するけれども、強く押されても耐えられるように、バネを用いた機構を採用しました。バネは、「テーパーバネ」と呼ばれる円錐型のコイルバネを使っています。

また、鍵盤の大きさが異なるとバネへの加重が変わるので、鍵盤の高さがバラバラになってしまいます。そのため、鍵盤固定用のネジの締め具合を調整することで、鍵盤の高さと感度の調整を行いました。


<スイッチの選定>

鍵盤の下に仕込むスイッチには、あまたあるスイッチの中からゲームセンターの筐体等で使われているスイッチを使いました。
これには、2つの理由があります。

1つめは、スイッチに高さがありすぎると子どもが隙間から手をいれて挟んでしまったり、横からスイッチが見えてしまうため、平たいスイッチが適していたことです。

もう1つは、設置する板への加工の有無です。
一般的に世の中のスイッチの多くは、薄い板へつけることを想定して作られています。
そのため、分厚い板にとりつけるには別途板に対して加工が必要になるのですが、今回は、天板のアクリル板を割れないように厚くする必要がありました。そこで、通常はあまり使われない、比較的分厚い板に取り付けられるゲームセンターのスイッチを使うことにしました。

スイッチは本当に奥が深く、固定方法にもツメ方式やリングで挟み込む方式など様々な種類があり、それぞれ向き不向きがあるため適切なものを選択する必要があります。


<運用しやすさ、安全性>
遊ぶ時間以外はしまっておけるように、キャスターがついていたり、コードはコンセントにさすだけでOKな仕様になっています。


<できあがり>

再認識した、複数人プロジェクトのおもしろさと難しさ

1. コミュニケーション
今回のプロジェクトは、さまざまな業種の人たちが集まり開発が行われました。
基本的にはメールや電話で連絡をとりあいながら進めていくのですが、業界が異なると工程や共通言語が異なり、コミュニケーションコストの問題が生じます。

たとえば、同じハードウェアの会社では、データシートを送るだけでサイズの指定ができます。しかし、今回は筐体に部材を収まるかどうかを確認する際に間違えがおきないように、実際の部材を送るなどしました。他にも、毎日工場に足を運び、直接その場で話しをしながら、お互いにひとつひとつ確認することで、業界の違いを超えていきました。※yakulだけでなく、関わったみなさんがお互いにいろんな面で配慮してくださったと思います。

これらの一連の流れは、Webのシステム開発でも行われるプロジェクト内の用語定義や、言語の共通化に近いものを感じました。

2. 専門家が集まると良い意味で新しい問題が生まれる
関わる人が多くなると新しい何かが生まれる可能性と共に、全員が新しいことにチャレンジするため、関わる誰もが専門ではない作業もでてきます。良い意味での新しい問題です。

たとえば、基板を木の筐体へ固定するにあたり、僕らは木材加工のプロではないので、できれば木工の職人さんにお願いしたいなと思っていたのですが、木工職人さんも基板を筐体に固定した経験はありません。単純なことで忘れがちなのですが、どこがチャレンジなのか、どこが全員にとって新しいのかを意識しながら進めていく必要があると思います。その上で、切り分けて作業できるようにすることが大切なのではないかと感じます。

3. 切り分けることと分業できるようにすることの大切さ
関わる人が多いプロジェクトでは、分業できる形にする事≒切り分けられるようにする事が重要です。
こう書くと、お互いの責任範囲を明確にするような話だと思われるかもしれませんが、プロジェクトとして、離れて作業する人が分業したり問題に対しての保守性を担保するために、皆がアーキ的な観点から設計する必要があるという話です。

開発効率だけでなく、保守性についても同じことが言えます。自分たちが作った部分に対しての保守性だけでなく、他の方が作った箇所の保守性を考えて設計を行う事などを意図しています。

小さな例ですが、上述の木工職人の方に基板を固定する用の板をつくっていただき、基板は僕らが組付けたのですが、その際に基板とスイッチの間にコネクタをつけました。コネクタの費用はかかりますが、この一手間で開発時にそれぞれ分業ができたり、問題がおきた時のメンテナンス性もあがります。こういう意識の積み重ねが製造効率や保守性へ影響し、よいものになるかどうかを分けていくのではないかと思います。


「電子工作の一歩先へ」と題して、電子工作を実際のプロダクトに落としこむまでの流れを、ハードウェアや機構設計部分から、複数の業種の人とやるときのポイントについてを紹介してみました。
yakulではチャレンジングなわくわく案件をいつでもお待ちしています!

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