Fabって10回言ってみて(1)「ニッティングマシーンハックとグリッチニット日記-前編-」

Fabって10回言ってみて(1)「ニッティングマシーンハックとグリッチニット日記-前編-」

FabLab Shibuya
FabLab Shibuya (ID319) 公認maker 2014/07/22
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はじめまして、FabLab渋谷の山本です。

今回のテーマは「ニッティングマシーンハックとグリッチニット」です。
これは、FabLab渋谷が初めて携わった「つくりたいものをつくるためのマシンからつくった」プロジェクトのお話です。

FabLab渋谷とは

プロジェクトのお話をする前に、かんたんに自己紹介をしておきましょう。
FabLab渋谷というのは、場所の名前であり活動の名前でもあります。


この「FabLab」というのは、世界的な市民工房のネットワークで世界50か国以上に200カ所以上(2013年時点)あると言われています。「(ほぼ)なんでもつくる」というマサチューセッツ工科大学(MIT)のビット・アンド・アトムズ・センター所長のニール・ガーシェンフェルド氏が開講した講義がその発祥で、大学や一部の工場にしかない機材を一般市民に開放したらどんな社会になるだろうか?という大学のアウトリーチ活動として「FabLab」は1998年に産声をあげます。DIYではなく、DIWO(do it with others)の考えで、つくりかたや成果物をオープンにし共に学び、共につくるというサイクル「leran/make/share」を提唱しています。

FabLabについては、総務書の平成25年版の通信白書にまとまっているので興味のある方はこちらをご一読ください。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/html/nc111330.html

そんなFabLabが日本にやってくることになったのは、これらの考えに共感した人々があつまって日本にもFabLabをつくろう!と活動を開始したのがきっかけです。2010年のことでした。当時は「FabLab Japan」という名前で職業もバックボーンも全く違うメンバーが活動をしていましたが、2011年に国内初のFabLabが鎌倉とつくばにできて当初の目標は達成したので名称を「FabLab Japan Network」と改名し、日本語でコミュニケーションがとれるコミュニティのネットワークとして機能するよう目標をアップデートしました。

FabLab渋谷は、2012年に渋谷の宇田川町に場所を構え「つくる人をつくる」ことを活動目的の一つにしてレーザーカッターや3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション機材を使う機会を広く一般に提供し、人と人をつなげたり、人と情報をつなげたりしながら様々なものづくりの支援をしています。

FabLab渋谷では、機材(レーザーカッター、ペーパーカッター、3Dプリンタ、刺しゅうミシン)を使用したい方は、まず機材の講習会を受講し、受講した機材を機材利用日に自由に使える仕組みです。この機材利用日には、学生からサラリーマン、デザイナー、アーティストまで幅広いジャンルの方が集まります。

私達が入居しているのが、co-lab渋谷アトリエというシェアオフィスで、ここは都内初のFabLabであり、国内初のプラグイン型FabLabと呼んでいます。シェアオフィスの入居者には多彩なクリエイターが多くおり、毎日が学びと驚きの連続です。シェアオフィスの入居者つながりで、ユニークな仕事を頂くこともあります。

そうそう、私達というとおり、FabLab渋谷にはメンバーが複数名おります。

メンバーは、機械設計と適正技術をバックボーンにする代表の梅澤、美大でキネティックアートを学んだ井上、その後輩でコミュニティプロジェクトに興味関心のある端谷、同じく美大でプログラミングを学んだナリタ、そして、私。

私も、井上・ナリタ・端谷と同じく美大出身で、メディアアートを勉強していました。(私は、プログラミングが不得意です。そういう技術話を聞くのは好きですが、めっぽう数学に弱いので詳しいことはチンプンカンプンです。)そんなわけで、それぞれものづくりの得意分野があるなか、私はみんながあまりやらない「やわらかもの」担当をしています。

デジタルファブリケーションで作られるもののほとんどが、レーザーカッターで切り出したMDFやアクリルのものか3Dプリンタで出力されたた樹脂ものですが、生活には「やわらかいもの」も必要です。(ほぼ)なんでもつくることを目指すFabLab活動の取り組みの1つの方向性として、私は「衣服」にアプローチすることを考えています。また渋谷という立地で、ファッションは切っても切れないキーワードです。
FabLabの考え方として、地元密着型(ローカライゼーション)と世界発信(グローバリゼーション)の両立というのがあります。せっかく渋谷にFabLabがあるので、衣服のプロジェクトができないかな〜と、私自身なんの知識もなく漠然と思っていたところ運命の巡り合わせがありました。

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。

グリッチニットプロジェクトの発端

ニッティングマシーンハックとグリッチニットのプロジェクトが開始したのは、2012年の秋でした。
きっかけは「ファッションは更新できるのか?会議」(以下、ファッ更)の岩倉さんと金森さんとお会いしたことでした。

ファッションは更新できるのか?会議
http://www.facebook.com/fashion.koushin

ファッション博士の水野さん、弁護士の永井さん、ドリフの金森さん

ファッ更のみなさんは、「ファッションは更新できるのか?」というテーマについて議論するセミクローズド会議を2012年の秋から約半年間さまざまな分野のゲストを迎えて議論をしていました。議論するだけではなく「実装」できないか?と考えてデジタルファブリケーションに親和性の高いファッションデザイナーのnukemeさん( http://nukeme.nu/ )とFabLabを結びつけてくれたのでした。

nukemeさんは「グリッチ刺繍」という作品シリーズで第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査委員会推薦作品に選出されたアーティストで、積極的にインターネットカルチャーをとりこみ手触りのあるコミュニケーションツールとしての洋服作品をリリースしています。(そういうわけで、メディアアート界隈のコミュニティでは知られた人物で、共通の友人も多くいたというオチがあります)

グリッチ刺繍

2012年のMFTの会場で即興刺繍してもらった私のMAKE;パーカー(自慢)

このお話を頂いたとき、nukemeさんは「編み目がグリッチして穴だらけのニットをつくりたい(=グリッチニット)」といい、すでにFabLab鎌倉に「編み機(以下、ニッティングマシン)」があることをリサーチしていました。

私はさっそくFabLab鎌倉のゆうかさんに連絡をとり、編み機の使用について相談をしました。が、その機材は今は大学の機材になっていて自由に使えないことがわかりました。とはいえ、どうすれば「編み目をグリッチ」できるかを考えるために一度その大学へ見学にいくことにしました。

撮影:2012年10月11日
SFCの田中浩也准教授の研究室にあるニッティングマシーン。PCの画面に色々な編み図が表示されている。

見学を終えて、とにかくグリッチニットをつくるには「ハード」と「ソフト」両方をハックする必要があることを確信し、話し合い、ニッティングマシンを新規購入することにしました。

でも、どうやって...?
お金どうする...?


...クラウドファンディングどうだろう?

クラウドファウンディングに挑戦

というわけで、私は人生初のクラウドファンディングに挑戦することになりました。
https://readyfor.jp/projects/nukeme_fablabshibuya_fakko

クラウドファンディングをやる、ということは支援者へこのプロジェクトを通して訴えたい問題点とその解決策を熱く説き、理解してもらうことが必要です。改めてなぜこのプロジェクトを行うのか考えテキストにおこす作業が始まりました。と、同時にnukemeさんはニッティングマシンのハックにむけて様々な情報収集とメンバー集めを行ったのでした。

ニッティングマシンを購入しよう!と決めてからリサーチをおこなうと、家庭用編み機の悲しい実情を知ることになります。

家庭用編み機は1970年代が普及のピークで当時はメーカーが競うように新製品を販売していましたが、安価な既製服が大量に流通しはじめると販売台数が減少し、ブラザー工業が2004年に製造を終了してからはメーカー在庫はなく、販売店舗での在庫または中古品を購入する方法でしか手に入れられなくなりました。

そんな状況しらなかったよ...幻の機械じゃん...と悲しい気持ちになったのですが、逆に考えてこの幻になろうとしている機械をFabLab渋谷が迎え入れて誰でも使用できるようになれば、作りたいものの幅を広げる良い機会じゃないか、と。(絶滅危惧種を保護する気持ちです。)また、単に機材が増えるだけではなく、ある分野に特化したクリエイターが必要とする機材をFabLab渋谷に迎えることで、新規ユーザーが見込め、オープンに機材ワークショップイベントを開催することでコミュニティも活性化できるじゃないか、と貪欲に考えました。

そうして、「つくりたいものをつくるマシンからつくる」というプロジェクト、ニッティングマシーンハックとグリッチニットがスタートしたのです。

ファンディングが成功するかどうか謎のまま、とにかく機材と知識をそろえることにしました。

nukemeさんの情報収集の成果でニッティングマシン「Brother KH-970」の中古品をゲットします。そして強力な開発メンバーが集結していました。テクノ手芸のよしださん( http://techno-shugei.com/ )とメディアアーティストの菅野くん( http://kanno.so/ )です。

ここからは日記帳に綴っていきたいと思います。

ざっくり開発の手順

・まず普通に編めるか動作チェック
・編む機構を理解する
・電子回路部分を読み解く
・改造点を実装する
・編み図を読み込みニッティングマシンに送るためのソフトをつくる
・編んでみる
・糸2本編み(グリッチ模様を編む)に挑戦
・糸1本編み(編み目をグチッチさせる)に挑戦

2013年1月8日

とりあえず組み立てて動作チェックしてみる。

Brother KH-970は、フロッピーでデフォルトの編み図を編める仕様。
90年代の香りがする。

プログラム?ってかわいい。オリジナルの編み図を編むことが出来るが、PCと繋がるわけではない。

2013年1月22日

構造はよくわかりませんが、むき出し格好いい。

はじめてのグリッチニット!Ryoji Ikedaの作品みたいになった。

2013年1月30日

ハックと同時にそもそも「編む」ことの知識が必要!というわけで、ニットのチヒロちゃんこと蓮沼千紘さん[ http://aneddyreb.exblog.jp/ ]をお招きして編みの技術を教えてもらう

2013年3月14日

気がついたら3月になっていた...。ドライブをかける!

よしださんお手製基板。

1本糸編みのテスト。

2013年4月1日

ソフトと接続して編むテスト。

画像を読み込み編み針の幅数にドット絵風分解、その画像を上から1列ずつ編んでいくテスト。
このとき読み込んだのは、グリッチしてある画像。

こうなる

2013年4月2日

仕組みを絵で描いてみる

2013年4月3日

グリッチマフラー誕生!

編みたい画像が編めることを説明する用に、普通の画像を普通に編んでみる。

2013年4月4日

テキスタイルネット展に登壇。グリッチニットを初披露。

2013年4月11日

デイリーポータルZさんに取材される!わーい!
http://portal.nifty.com/kiji/130515160638_1.htm

2013年4月16日

PV撮影をする。グリッチしたギンガムチェクを4人で手分けして編む様子を撮影。本編では早回しで使用されている。
完成したPV

http://vimeo.com/64293934

ここまでで準備が整い、無事にクラウドファンディングに出せることになりました。
次回は、クラウドファンディング編です!

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