TOKYO.maker report「ICC - オープン・スペース2014」

TOKYO.maker report「ICC - オープン・スペース2014」

宮越 裕生
宮越 裕生 (ID209) 公認maker 2014/07/18
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「TOKYO.maker report」は東京のはざまで面白いことをはじめたクリエイターたちの活動を紹介していくレポートです。

東京・初台のNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて、今年もオープン・スペースがはじまりました。
オープン・スペースは、ICCが今見るべきメディア・アートをピックアップし、作品、ミニ・シアター、映像アーカイヴなどを無料で公開する、毎年恒例の企画展。今年度一杯、2015年3月8日(日)まで展示公開しています。

今年はインタラクティブ・アートの先駆者ジェフリー・ショーの代表作から若手アーティストの新作まで、全体的にメディア・アートのエッセンシャルなところをおさえた展示となっています。

日常に溶け込む、一歩先行くインタラクション

ユークリッド(佐藤雅彦+桐山孝司)《指紋の池》

エントランスにあるユークリッド(佐藤雅彦+桐山孝司)の《指紋の池》(2010)は、指紋認証センサーに指を置くと、液晶ディスプレイに自分の指紋が現われ魚のように泳いでいくという、指紋のためのビオトープ。
もう一度指を置くと、アーカイヴされた自分の指紋が一直線に泳いで戻って来ます!
まるで自分の分身のようで、本当に可愛らしいです。群れとなって泳いでいる姿も、見ていて飽きません。

HABILITATE 筧康明研究室

入口右手には、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の筧康明研究室による研究開発コーナー「HABILITATE」が展開。
こちらもほとんどが体験型展示です。
シャボン玉が電球のスイッチになる《Iridescent I/O》(下写真)や、赤と緑の粘土をくっつけると、色がオレンジに変わる《NeonDough》、紙の楽譜に光をあてると演奏が聴ける《onNote》、尺取虫のように這う磁力球《tamable looper》など、十数個の作品が並んでいます。

今回筧研究室が展示しているのは、
“「ヒトとモノ」、「ヒトとヒト」、「ヒトと場」など今そこにある関係を、少し新しく、そして時に少し良くするためのデザインおよびエンジニアリングの取り組み”。(「HABILITATE」ステートメントより)
筧研究室の手にかかると、粘土もシャボン玉もインターフェイスになってしまうよう。セレンディピティを感じさせるおもしろい作品ばかりです。ぜひICCで体験してみて!

《大きな耳をもったキツネ》evala+鈴木昭男

ICCには、無響室という部屋があります。
無響室とは、部屋全体が音の反響を吸収してしまう素材で囲まれている部屋。

通常、人は音の反射によって空間の広さなどを把握しているのですが、この部屋には反響がないため、自分の位置を定められなくなります。また、外部の音が遮断されるので、ほとんど無音に近い状態を体験できます。

《大きな耳をもったキツネ》(2013/14)は、この部屋で観賞するサウンド・アーティストのevalaとサウンド・アートの先駆者的存在、鈴木昭男による音の作品。

作品は一人づつ部屋の中に入り、真っ暗な状態で体験します。
evalaが無響室で録音された空間の残響を擬似的に作り出し、音響的変化を伴う音の運動を再構成したという立体音響の世界は、リアルすぎて恐いほど。
音の素材には、鈴木昭男の自作楽器による演奏音や京都府京丹後市内でフィールドレコーディングした音などを使っています。

何かが上からが降ってくるような気がしたり、体が浮いたような気がしたりと、とても身体的に音を感じられます。
はじめての方は、まったくあたらしい音の体験ができるはず。

本作は当日、作品の前で予約を受付けています。
土日は、午後に予約がうまってしまう日もありますが、
平日ならそれほど待たずに聴けるそう。

正統なメディア・アートの流れを汲む、メディア・アート・クラシックス!

《レジブル・シティ》ジェフリー・ショー

上はインタラクティヴ・アートを代表する歴史的な作品、ジェフリー・ショーの《レジブル・シティ》(1988-91)。
スクリーンの前に設置された自転車をこぐと、シミュレートされたマンハッタン、アムステルダム、カールスルーエの町をサイクリングできます。

ハンドルをきる度に3Dコンピュータ・グラフィックスの町が広がって楽しい!
今見てもまったく新鮮な作品です。

《ミラー No. 12》ダニエル・ローズィン

イェルサレム出身のアーティスト、ダニエル・ローズィンの《ミラー No. 12》(2013)は、作品の前に立つと、絵画のようなテクスチャーに覆われた、自分の姿が映ります。
じつはここに映っているイメージは、スクリーンの背面に設置されたカメラが撮影した映像を、
被写体の動く方向や速さに応じて、さまざまに変化させたイメージ。

ローズィンの作品は、1950〜1960年頃に流行ったキネティック・アートのようなテイストを感じさせます。
モーターや電灯の光を用いて、アートに「動き」や「時間」の要素を取り入れてきたキネティック・アートは、メディア・アートの祖ともいえるもの。今の時代のキネティック・アートといえる作品。

《frequens (linnerscope)》志水児王

上は音や光の現象にフォーカスした作品をつくりつづけているアーティスト、志水児王による《frequens (linnerscope)》(2007–14)。水にレーザの光を照射させ、微細な水の表情を壁に映し出しています。シンプルに水と光の現象を見せている作品。

《バイナトーン・ギャラクシー》スティーヴン・コーンフォード

ロンドン出身のアーティスト、スティーヴン・コーンフォードによる《バイナトーン・ギャラクシー》(2011)。カセットレコーダーの挙動に伴って発される音を、マイクロフォン(圧電センサー)で増幅させ、身近なデバイスから生まれたとは思えない音像をつくりだしていました。

若手作家が見せるあらたな風景

《影はどこにも見当たらない》リヴィタル・コーエン&テューア・ヴァン・バーレン

多数のメディア・アーティストを輩出しているRCA(英国王立芸術学院)を卒業後、
ロンドンを拠点に活動しているアーティスト・デュオ、リヴィタル・コーエン&テューア・ヴァン・バーレン。
昨年東京都現代美術館で開催された「うさぎスマッシュ」展にも参加していたので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。

上はブルーベリーの木々の間を探索するオオカミの姿を映した映像インスタレーション《影はどこにも見当たらない》(2013)。
この作品において、オオカミは赤外線カメラに監視され、その映像が全世界に配信されるという設定の中を生きています。またその設定の中で、赤外線監視カメラはオオカミが動くことによって作られた電力で作動しています。

《思い過ごすものたち》谷口暁彦

照明を落とした展示が並ぶ中、ぽかっと明るい空間をつくり出していた谷口暁彦《思い過ごすものたち》(2013/14)。
DMM.makeの連載「たにぐち部長の美術部3D」( https://media.dmm-make.com/maker/149/ )でもおなじみのアーティストです。
iPadに風にたなびくティッシュペーパーの映像が扇風機の風に揺れたり、iPadのメモ帳の上を水が流れ、文字が入力されたり。宇宙の涯てにある小部屋のような、不思議な空間をつくり出していました。

《視点ユニット》時里充

最後にご紹介するのは、新進アーティストを紹介するコーナー「エマージェンシーズ!」より、時里充の《視点ユニット》。
ユニットに仕込まれたカメラが測定器具の目盛りをとらえ、ものの動いた距離や角度をモニターに映し出すという作品です。
過去の作品《CameraA 2 CameraB》( http://vimeo.com/46956089 )でもカメラの視点に注目したおもしろい作品をつくられていましたが、何か独特な視点を感じさせるアーティストです。

本展について主任学芸員の畠中実さんに訊くと
「現在では、メディア・アートは方法論としても成熟し、いろいろな表現が可能になっていますが、今回のオープン・スペースでは、メディア・アートを成立させている仕組みや原理に、より着目した構成になっているかと思います」
と語ってくださいました。

今回の展示は、メディア・アートのエッセンシャルなところがすっきりと並び、メディア・アートははじめてという人から、勉強している人まで楽しめる展示になっています。
ここでご紹介した作品のほかにも、ナム・ジュン・パイクがリスペクトをよせていたエンジニア、阿部修也の《アベ・ヴィデオ・シンセサイザー》(1972/2012)や、宇宙芸術で知られる逢坂卓郎の《生成と消滅 2012》(2012)などの作品が展示されています。
トークイヴェントなども随時開催されていますので、オフィシャルサイト( http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2014/Openspace2014/ )の方もぜひチェックしてみてください。



写真:川瀬一絵(ゆかい)※evala+鈴木昭男作品を除く
evala+鈴木昭男《大きな耳をもったキツネ》写真: 撮影 木奥恵三, 写真提供 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
取材協力:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

オープン・スペース2014

会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
会期:2014年6月21日(土)〜2015年3月8日(日)
開館時間:11:00〜18:00
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/29─1/5),保守点検日(8/3,2/8)
入場無料

主催:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2014/Openspace2014/

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