「いよいよやって来ましたウェアラブルの時代」研究者からMakerへ(2)

「いよいよやって来ましたウェアラブルの時代」研究者からMakerへ(2)

塚本昌彦
塚本昌彦 (ID1097) 公認maker 2014/08/19
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はじめまして。
神戸大学の塚本です。
前回、私が何者なのかのインタビューがあるのでご存知かとは思います(まだの人はぜひご覧下さい)。

前回の記事はこちら。
https://media.dmm-make.com/item/1533/

ウェアラブルコンピューティング・ユビキタスコンピューティングの研究をはじめたのは約16年前。「近いうちに必ず来る!」と考えて、ウェアラブルコンピューティングの実践生活を始めたのが14年前です。
今回はその頃の話からスタートしたいと思います。

HMD装着生活創世記

2001年の3月、当時は阪大の助教授だった私の元に、京都の島津製の“データグラス2”というHMD(head mounted display)がやってきました。
直感的に(これはいける)と思いました。それまで私が知っていたHMDは主にバーチャルリアリティ向けで、アウトドアで使えるものはほとんどありませんでしたが、データグラス2はSVGA(800*600)の解像度を持つディスプレイで、画面としては少し狭いものの、ノートパソコンのUSB電源を使ってアウトドアで利用でき、パソコンのアプリケーションも何とか使えるレベルのものでした。
「アプリさえ立ち上がれば、歩きながら使える!」
その瞬間に、装着して歩くイメージができていました。

ただ、実際にはパソコンにつないでウェアラブル仕様にするだけでも苦労がありました。

■ディスプレイ入力がDVI

当時ほとんどのPCディスプレイ出力はアナログRGBでした。一緒に使おうと思っていた小型PCのVAIO GTもRGBで、そうなるとコンバータを使わないと画面出力ができません。いろいろ探した結果、カード式のコンバータを見つけてつなぎました。さらに、USBで給電しないといけなかったので、充電池が4本入る電池BOXを付けました。充電池で4.8ボルトなのでうまく動作しました。外で長時間使うためにはVAIO本体の方にも大型のバッテリも付ける必要がありました。
こうなると「ずっしり」です。
このまま一日中付けるには重くてどうしようもありません。

というわけで、少しでも軽くするための策としてパソコンのディスプレイを外しました。
ケーブルやユニットはパソコンに工作用の紙テープでテーピングし、本体を肩からひもで吊しました。
荒っぽい工作でしたが、“いつでもどこでもHMDの画面を見つめながら腰に付けたキーボードが使える実践型のウェアラブルコンピュータ”初号機の誕生です。

塚本のウェアラブルコンピュータ初号機(2001年3月ごろ)


しかし、使ってみるとすぐにいくつかの問題にぶち当たりました。

■通信環境がない!
大学では無線LANがあるのでインターネットが使えるのですが、外に出ると使えません。今と違い当時はWi-Fiルータがなかったので外で通信できないのです。“いつでもどこでも”ぶら下げている割には大学と自宅以外ではオフラインで文書作成ぐらいが関の山でした。

■また壊れた!
写真を見ていただいたらわかるようにパソコンから横にコネクタが出ているので、歩いていてちょっとでも接触するとすぐに破損して画面出力ができなくなってしまいます。
実際にコネクタが壊れては買い、壊れては買いと随分つぎ込みました。

また、キーボードがむき出しになっているので、いつの間にかキートップがなくなっていることがあります。
できるだけ慎重に行動しているつもりですが、それでも、キートップは近くにいる人の服に絡まり、旅に行ってしまうのです。次第に、いくつかない状況に慣れてしまって、キートップのないキーは使わずに我慢するか、あまり使わないキーのキートップを必要なキーのところに移してしのいでいました。

■ドアノブが天敵!

さらに、ケーブルの問題があります。
頭に付けたディスプレイからパソコンまで伸びているケーブルがドアノブにうまく引っかかります。引っかかると頭部が引っ張られます。これの不快さは想像を絶するものですし接触不良の原因にもなります。ドアノブがこんなにも引っかかりやすい構造だという知見を得ているのは、点滴中にトイレに行く人と私ぐらいなのではないでしょうか。

後悔したこと

HMD生活をはじめて問題はあるものの、それ自体に後悔はありません。実践的なウェアラブルコンピューティングを知ることは研究する上で重要なことだし、いつか研究者仲間は装着するだろうと思っていたのです。
後悔があるとするなら、PC本体のディスプレイを取り外してしまったことです。外でパソコンを利用する時にHMDを使うのはいいのですが、風呂上がりにちょっとメールチェックしようと思う時にHMDをつけないといけない…これは本当に不便でした。やはり普通に机の上でパソコンを使う際には、大きなディスプレイのほうが圧倒的に便利なのです。

これらの反省点を踏まえ、数か月後に次のバージョンを作りました。


(次回につづく)

これまでの連載:

「スーパーポジティブで行こう」研究者からMakerへ(1)
https://media.dmm-make.com/item/1533/

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