深圳の工場見学ツアーとオープンソースハードウェア MFSZ 剣客商売(ハッカービジネス) (4)

深圳の工場見学ツアーとオープンソースハードウェア MFSZ 剣客商売(ハッカービジネス) (4)

ギークの天国は、2次元でもシリコンバレーでもなくて、深圳にありました。前回は面白いプロジェクトを次々に生み出すHAXLR8(ハクセラレータ)の紹介をしました。今回はオープンソースハードウェアを牽引する、seeedstudioと、深圳の工場群の紹介をします。
http://www.seeedstudio.com/depot/

チームラボの高須です。チームラボMake部という部活の発起人です。すごくMakeが好きです。これで4回目のMakerFaire深圳のレポートです。今回は、なんで深圳がMakerの楽園になったのかを伝えようと思います。中国語ではMaker、Geek、Hackerの区別がなく、全部 剣客「Hacker」と呼びます。深圳は剣客そのものが行うビジネス、そして剣客を対象にしたビジネスで満ちています。スーツでなく、MakerがMakerのまま、自分たちのMake活動を通じて生活しようとしているのです。彼らはMakeを人生そのものにしようとしています。

今回紹介するのはSeeedstudioと深圳の工場群です。HAXLR8RがMakeそのものをビジネスにして、自分たちで何か作ろうとしているのに対して、SeeedstudioはMakerがMakeするためのツールを提供して、Make活動を助けるビジネスを行っています。

オープンソースハードウェア

回路図、必要な部品リスト、形状のCADデータなどを公開して、だれでも同じものが作れるようにしたハードウェアをオープンソースハードウェアと呼びます。

オープンソースにすることで世界中で普及する可能性が上がり、開発者コミュニティが生まれる可能性が上がるので、そういう効果を期待するMakerは積極的に自らのプロジェクトをオープンソースハードウェアにしていきます。
有名な3DプリンタのReprapプロジェクトも、クリスアンダーセンが主導する3D Roboticsのクアッドコプターもオープンソースハードウェアです。
Arduinoは代表的なオープンソースハードウェアですが、ただし、ちょっと特殊で、商標をArduinoが握っているので、僕がArduinoとまったく同じモノを作っても、それはArduinoを名乗れません。Seeedstudioで作っているArduinoもSeeeduinoという名前になっています。
IAMASの小林茂先生が作られたFunnel I/Oツールキットは、Arduinoプロジェクトから認定されて、Arduino FIOという名前になりました。

誰かが互換ハードを作っても開発者にお金が入らないオープンソースハードウェアで、どうやってビジネスが成立するのか。
開発コミュニティが大きくなることで、たとえばそこに向けた本を書くなどのビジネスはあります。
また、たとえオープンソースでも、必要な部品を個別に全部そろえて基盤を加工して組み付けるのは面倒出しお金もかかります。開発元が自ら部品を全部まとめてキットやセット、完成品を作って売ることはビジネスになります。大量に調達するので個別に各ユーザーが集めるよりは安くなりますし、「めんどうでなく、きちんとした完成品が手に入る」ことにもっと多くのお金を払うユーザーもいるでしょう。
オープンソースハードウェアを作って普及させ、その環境から収益を上げるというのはいかにもMakerムーブメントっぽい面白いやりかたです。

小林先生がファシリテーターを務め、Maker Conference Tokyo 2012(日本科学未来館、2012年6月12日、主催はMakerFaireTokyoを運営するオライリージャパン)で行われた「オープンソースハードウェアの理想と現実 ─ 小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]准教授)/金本 茂(スイッチサイエンス)/ドミニク・チェン(NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事)」は非常に興味深いディスカッションでした。ここにメモが公開されています。
https://docs.google.com/a/team-lab.com/document/d/1tmu7A2PrQVXvLlJEdH_oqQ4k8SZczqU2AH2j1MShm9o/edit#heading=h.k3yn163vi0lk

SeeedStudioはそういうオープンソースハードウェアのセット/キットを販売し、オープンソースハードウェアを推進しています。
深圳の開発力を背景に人気のオープンソースハードウェア作者のプロジェクトをキット化し、きれいなマニュアルや箱を用意して世界のどこにでも届けます。

深圳の他の工場や企業はもっと安く作れるかもしれませんが、「ちゃんとしたものかどうか」というブランドや英語力、世界のオープンハードウェア作者との繋がりで、Seeedstudioは世界でブランドを築いています。

ここは急成長した分野で、2008年頃のSeeedstudioについて、クリエイティブコモンズやオープンソース関連の翻訳を多く手がけている山形浩生さんが書かれています。
http://cruel.org/other/rumors2008_2.html#item2008103103

Makerムーブメントに向けたSeeedstudioのビジネス

Seeedstudioのビジネスは、大きく分けて3つに分けられます。

一つ目
FusionPCBという基盤作成のサービス。Eagleなどで基盤のデータを送れば、PCB基盤になって帰ってきます。
二つ目
独自のハードウェア。Seeedはオープンソースハードウェアを工場で生産し、販売しています。 オープンソースなので誰でも作れるのですが、世界の工場である深圳で作ることによる低コストと、Seeedがマネージメントすることによる高品質を両立しています。フリーポートである香港から安く世界中に発送します。
三つ目
プロデュース。Makerの始めたプロジェクトを、大量生産して「製品」にします。

これがSeeedのホームページに載っているビジネスの図です。何も作れない、アイデアだけのドリーマーに対しても、0.1個のプロトタイプが作れるMakerにも、1つの完成品(完成サンプル)が作れるベテランMakerにも、1,000の完成品が作れるハードウェアスタートアップにも、1万個以上の製品が作れるハードウェア企業にも、Seeedのビジネスは協力できることを示しています。
始めたばかりの人にはパーツやKitを販売し、 Makerには部品のKit化や製品化の手伝いを行い、スタートアップには大量の基盤作成を行います。

SeeedStudioのまわりには深圳の工場ネットワークがついていて、「どんなものでも作ってしまう」体制ができています。
深圳の工場群の恐ろしさ(大量の工場が仕事に飢えてるから、日本で1週間かかる金型製作が1日でできてしまう)については、「おとなのかがく」というドキュメンタリー映画がよくわかります。
http://otonano-kagaku.jp/

MakerFaire深圳の開催後、Seeedは僕ら海外のMaker向けにツアーバスを組んでくれたので、深圳の工場を見ることができました。
僕は製造工程は不得手で、これらの工場がどういうものか(ざっくり、PCBだから基板作ってるんだろう、ぐらいはわかるけど、どれぐらいの品質かはわからない)よくわからないのですが、大変に興味深かったです。
フォトレポートを紹介します。

深圳工場見学フォトレポート

Seeedstudioのフロア。デザイン、マーケティングなどは英語をしゃべれるスタッフが欧米的な雰囲気の中仕事をしています。

自社製品のLEDモニタなどがいろんなところで使われています。

自社製品を作るようになり、プロダクトデザイナーなども多く抱えているので、社内はおしゃれです。

Seeedのオリジナル製品、非常に薄いモバイルバッテリ。「MAKER」のロゴが泣かせる。僕、MakerFaire深圳のプレゼンのお礼でいただいたのですが、ハコあけてこれがでてきたとき、涙でました。

http://www.seeedstudio.com/depot/Ultrathin-power-bank-for-makers-Seeed-Power-Blade-p-1780.html?cPath=1_3

製品開発、製造に使う工作機械

ロボハンド。開発中の製品らしい。案内してくれてるのは広報のスタッフ。

Agile Manufacture Center(敏捷製造中心) アジャイル=手作業!

Seeedと同じビルに入っているAgile Manufacture Center(敏捷製造中心という中国語がかっこいい)の工場。

組み立て。Maker向けのKitなど、多品種少量生産が多いので、ラインでなく手作業が中心の模様。

カンバン方式によるマネージメント。他の工場では直交表も見かけました。

めちゃめちゃ速い職人芸のハンダづけ。

検品もしっかりしています。

検査機、治具も自分たちで作ってしまっています。

一緒にSeeedを訪ねたMakerさんたち。
僕はバッテリに、Seeed社員のサインを集めて回っていて、社長のエリック・パンをはじめ何人かの社員に「初代のMacintoshだ!」と喜ばれました。

同じビルにある食堂。中華料理であり、中華料理が一番おいしいといわれる広州にあるので、200円ぐらいの普通のご飯でもすごくおいしいです。

郊外の工場群

観光バスを仕立てた郊外ツアー。郊外には大量の工場があります。1000以上あるとのこと。

金属部品をつくる

できあがった金属部品。クリップみたいなもの?

できあがった綺麗な針金を巻き取る機械

Intel Chinaからのツアー参加メンバー。
メガネはGoogle Grass、腕時計はPebble、電話はiPhone、カメラは富士フィルム、職場はIntelという、一発で友達に慣れそうな人で実際になりました。
Intel Chinaは北京なので、こんど北京にも行きたいです。

大量生産をする工場は自動機械も使っています。

自動機械は香港の会社が扱っている日本製。2008年製なのでまだ新しいです。

手作業で、なじみのある電池ボックスのおしりのところを作っています。

マイナスがスプリング、プラスが出っ張りになっている電池ボックスのおしり。

PCB基板をじゃぶじゃぶと作っています。

できあがって出荷待ちの基板

Arduinoそのものを開発し、
Making Things Talk ―Arduinoで作る「会話」するモノたち
http://www.oreilly.co.jp/books/9784873113845/
を書いたTom Igoe.
かれもツアー参加者。
工場内では白衣と帽子着用です。

もう一回、深圳の工場群を見に行きます!

深圳のレポートはこれで終わりで、次は、MakerFaire台北のレポートを書く予定ですが、もう一つお知らせがあります。

8月3日-9日ぐらいの日程で、ニコニコ技術部主催で、HAXLR8Rのラボを訪問し、seeedstudioや深圳の工場群見学、電気街を見に行く見学会を行います。8/6-7がコアタイム(ほかの数日にも現地のスタートアップ見学などを行います)、現地集合現地解散です。

飛行機やホテルの予約は各自で行っていただき、集合場所に来てくれたら、僕が案内する形式です。(僕の日程や宿泊場所は公開します。なるべくお金のかからない場所に泊まる予定なので、リーズナブルなプランが好きな人や、現地での行動に不安がある人は、同行すると良いと思います)

面白い人たちがたくさん参加します。DMM.Makeに投稿してくれている人も多いです。
野尻先生(小説家、Maker、ニコニコ技術部)
https://media.dmm-make.com/item/1477/

山形浩生(ローレンス・レッシグ、「伽藍とバザール」等の翻訳)
 http://cruel.org/jindex.html

AgIC(日本のハードウェアスタートアップ)
https://media.dmm-make.com/item/921/

勝本さん(CATAPYなどの玩具を開発する研究者)
https://media.dmm-make.com/item/913/

加賀谷さん (脳波Necomimiを発明)
http://jp.necomimi.com/news/index.html

yakul(日本のハードウェアスタートアップ)
https://media.dmm-make.com/item/1355/

スイッチサイエンス(日本のSeeedのパートナー)から数名
 http://www.switch-science.com/

伊予柑(NKH、ドワンゴニコ技、ニコニコ学会、)
 http://enjoynicolive.com/

高尾俊介(takawo杯)
 http://xn--takawo-nu4m.net/

Cerevoから数名
 http://www.cerevo.com/

さんなどが参加予定です。(日本の大手メーカーの人とかも来るのですが、名前を勝手に出すと怒られそう)

何かしらレポートを書くことが参加条件なので、現時点で22本はレポートが上がると思います。まだ把握できてない参加者もいるので、25-30本ぐらいは深圳のレポートが上がるんじゃないかと思います。すごく楽しみです。
まとめサイトは僕が作ります。

参加はまだ受け付けています。
ご興味ある方はfacebookのtakasumasakazu までコンタクトをお願いします。SeeedやHAXLR8Rには、事前にどういう人たちが来るか知らせたり、工場を巡るバスの大きさを調整する必要があるので、よろしくおねがいします。
ニコ技シンセン観察会 8/5-10(コアタイム8/6-7)
https://www.facebook.com/groups/653199074763047/

※あくまで有志の見学会です。特にサポートはないですし、「行ってみたら現地でのツアーがなかった」みたいな可能性もあります。


これまでの連載:高須正和/チームラボMake部

ギークが大臣をやってる国 シンガポール
https://media.dmm-make.com/item/1713/

剣客商売(ハッカービジネス) 凄腕の剣客集団HAXLR8R MakerFaire深圳レポート(3)
https://media.dmm-make.com/item/1469/

その2:ギークはヒーロー「MakerFaire深圳」(2)
https://media.dmm-make.com/item/247/

その1:ギークの楽園はここだ「MakerFaire深圳」
https://media.dmm-make.com/item/245/

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