熊野MAKE日記 ー 家をつくる・3

熊野MAKE日記 ー 家をつくる・3

pha
pha (ID151) 公認maker 2014/08/28
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これまでの連載

「熊野MAKE日記 ー 家をつくる・1」
https://media.dmm-make.com/item/917/

「熊野MAKE日記 ー 家をつくる・2」
https://media.dmm-make.com/item/1485/

「まずはひたすら破壊する」

水害でやられた家の改修作業で、とりあえず最初にしたことは破壊だった。

壊れてしまっている家具や扉を外に運び出し、水に浸かって腐ったりカビが生えたりしている床板や壁板や天井板をひたすら剥がしまくる。

作るのと違って壊すという作業はあまり細かいことを考えなくていいし、雑に力を振るっていけばいいので結構楽しい。ハンマーを、バールを、ノコギリを、グラインダーを、釘抜きを、あらゆる金属の道具を使って、駄目になった木材を壊して剥がしてバラして捨てまくる。ストレス解消としてなかなかよかった。

と言っても、素人があまりにも適当に壊しすぎると建物が倒壊したりする危険もある。この改修作業は僕とイトウくんがそれぞれの知り合いに声をかけて人を集めたので基本的には素人ばかりの集団なんだけど、やはり素人だけでは難しいところもあるので、一人だけ地元に住んでる大工の人に来てもらって棟梁として監督してもらった。棟梁が「ここ剥がしちゃって」「この柱は大事なので残して」と指示するのに従って解体を進めたりとか、素人ではちょっと難しい複雑な部分は棟梁にお願いするとか、そんな感じだ。

家を壊しまくることで出てきた廃材は、使えそうなものは再利用して棚を作るのに使ったり、もうボロボロのものは焚き火をして燃やしたりとか薪ストーブで煮炊きをする燃料に使ったりした。燃えるゴミを家で全部処理できるというのは良い。ゴミを出す手間が省けるし、火を燃やすのは楽しいし。

(廃材で作った棚)

(薪ストーブでカレーを作る筆者)

「スパゲッティコード」

家というのは土台や柱や梁といった骨格がまずあって、その上に壁板や床板を張ってできているものだ。だから床板や壁板を剥がしていくとその家の基本的な構造が見えてくる。

板を剥がして見えてきたこの家の構造は、なんかよく分からない木材がたくさん複雑に絡み合っていて、何がどうなっているのかよく分からない感じだった。僕は思った。これはまるでスパゲッティコードだ……。

スパゲッティコードというのは、プログラミングの世界で使われる用語だ。無駄に冗長な記述や重複した記述がでてきたりとか、場当たり的な機能追加や補修を繰り返したせいで記述に一貫性がなくなってつぎはぎ状になっていたりとかしていて、ごちゃごちゃに絡まったスパゲッティのように何がどう繋がっているのかがよく分からなくなってしまっているコード(プログラム)のことを指す。

この家の構造も同じ感じだった。わりと大きい家なんだけど、何回も増築や補修を繰り返してきたらしく、建物の構造が複雑でつぎはぎで一貫性がなかった。どこにも繋がっていない何も支えてない柱があったり、上からぶらさがっているだけで土台に固定されていない柱があったり、無駄に二重に重なっている壁や天井の骨組みがあったりした。

これは壊してスッキリさせたほうがいい。ということで無駄な機能していない木材をひたすら取り外していった、建物にとって本当に必要な骨組みだけを残した。プログラミングでいうとリファクタリングという作業だ。

そうして無駄な部分を全て取ってがらんどうになったのがこんな状態だ。

「床を張る」

ここからはひたすらみんなカナヅチを振るって釘を打って板を張っていった。釘を打つのは誰でもできる作業だし、人数がいると進むのも速い。

板は耳付きのものを使った。耳付きというのは下のような形の板だ。

耳付きの板は並べると耳の部分が重なりあうので、板と板の隙間が空かなくて良い。

板の裏には黒いビニールシートを張った。これがあると風が通らなくなるので断熱効果があるらしい。

本当は床や壁の裏には断熱材を張るものなんだけど断熱材は高いので、代用物として畑にかぶせる「マルチ」と言われる黒いシートを使った。マルチはところどころに穴が空いているので(作物をそこから出すため)、穴から空気が通らないように二重重ねにしている。

ちなみに壁より床のほうが厚い板を使っている。板の厚みというのは歩いてみるとすぐ分かるもので、厚い方が安定感があって安心する。

「雑なのも味」

板張り作業は壁よりも床のほうが楽だ。床に釘を打つときは重力を利用できるのであまり力が要らないからだ。壁のほうが釘を打っているとすぐに腕がだるくなってくる。

まあ、別にお金をもらって仕事でやってるわけじゃないので、だるくなったらすぐに休んだりしていた。そのへんは自分のペースで進められるので気楽なところだ。

(疲れたらこんな感じで道で寝たりしていた)

床張りはそんなに難しい作業じゃないけど、やっぱり素人ばかりなので結構雑なところもある。板が歪んでいたりとか、板と板の間に隙間が空いていたりとか、釘を打ち間違えて板に穴が開いていたりとか。でも、もしプロにお金を払って仕上がりがそんな雑な感じだったらちょっと嫌な感じになるけど、自分たちでやったものだとわりと気にならない、というかむしろそういう雑さが愛嬌とか味みたいな感じがして、家に愛着が持てるような気がする。

後から家の中を見回すたびに「このへんの床はあの人達と一緒にやったな」とか「このへんはみんな慣れてきて仕上げが上手になってきてるな」とか、思い出したり懐かしんだりできる。そういうのもDIYのいいところだと思う。


床と壁の板を張り終わって完成したのがこんな感じだ。

板張りの床は寝転ぶと気持ちいい。

これで、床と壁ができたので寝泊まりができるようになった。かかった期間は、十人前後を一週間くらい集める合宿を5回くらい企画して、着手から半年後くらいにできあがった感じだ。

ただ、このときはまだ、大きめの日本家屋がこんなに寒さや暑さに弱いとは気づいていなかったのだった。冬は隙間風で屋外並みに寒く、夏は屋根に直射する日光でサウナのようになるとは……。ということでそのあたりの対策がまた必要になったのだけど、そのへんはまた次の回で。

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