FAB AND CRAFT(1)

FAB AND CRAFT(1)

はじめまして。フリーランスデザイナーの皆川めぐみです。
デジタルファブリケーションの技術とアナログな工芸的手法を横断した、デザインやものづくりのあり方を実験する「FAB AND CRAFT」という個人による制作プロジェクトをしています。仕事としても遊びとしても取り組んでいるため、最近では両者の境目はかなり曖昧で、ほぼいつでも何かしらのデザインやものづくりのことを考えて日々を暮らしています。

働き方が少し風変りだからか、「なぜ、そんなスタイルで仕事(と遊び)をしているの?」「どんなもの作っているの?」などなど訊かれることが多いので、どんな活動をしているのか、これから何をしていきたいのか、ここから発信できれば、と思っています。今回はまず自己紹介を兼ねて、「私がどうしてこの制作活動に取り組んでいるか」のお話からしたいと思います。

私自身がデジタルファブリケーションで初めて制作した作品。
組み立て式のスタンプキット「FabStamp」

「ものづくり」を「暮らし」の中に

普段私は、渋谷を中心として都内に点在する、さまざまなものづくりスペースを利用して、デザインや制作の仕事をしています。クラフトやデザインの現場で行われてきたものづくりに、「デジタルファブリケーション」の考え方や技術を融合させることで、新しい価値やコミュニケーション、延いてはライフスタイルが生まれるのではないかと考え、この活動をしています。

「デジタルファブリケーション」とは、パソコン上で作成した図面データに沿って、レーザーカッターや3Dプリンタなどの加工機械がその通りに加工してくれるものづくりの手法です。従来、これらの加工機械は工場などで業務用に利用されるものでした。それが近年、デジタルな加工機械を一般市民に開放するFabLabをはじめとした工房の登場、機械自体の低価格化などにより、個人でさえも自分の好きなときに必要な量のものを制作できる環境が生まれ、「自分が本当に必要とするもの」を、自分の手で生み出すことが可能になりはじめています。アイディアを思いつくところからモノをアウトプットするまでのスピードの速さや、データを共有しさえすれば、同じ機械のある場所でなら世界中何処でも同じものをすぐに作れるなど、オープンさやスピード感がその特徴です。

何を作るか、何故作るか、どう作るか。

このようなデジタルなツールを個人で操るものづくりでは、何をどう作るかを考え実現するプロセスを、作る本人が担うことになります。この点が、予めこのプロセスを誰かが肩代わりして作られた大量生産品を買うこととは大きく異なります。作る目的(私には何が必要? 何故それを作るの?)を考えて明らかにし、練習・学習を経て実現方法(どうやって作る?)を習得するところからのスタートです。「自分に本当に必要なものを作れる」ということは、裏を返せば「自分に本当に必要なものの姿も、実現方法も自分で分かっている必要がある」ということでもあります。
例えて言うならば、ものづくりのツールは自転車のようなもので、そのもの自体が勝手に動いて、私たちのために何かモノを生み出してくれる訳ではありません。自転車は、乗るには練習が必要ですし、乗れるようになってからの目的地は隣町でも世界一周でも本人次第です。全ては、道具を操る人自身の意思を必要とします。
できることの可能性は幅広く、無限です。個人がデジタルファブリケーションを使えば、ごくプライベートな贈り物の制作もできます。あるいは新たにビジネスを立ち上げるための商品開発あるいは生産にも活用することもできます。
また、デジタルファブリケーションは、従来のデザインやものづくりの現場に取り入れられることで、制作プロセスに新しい可能性を与えることができます。円滑なプロトタイピングに用いることもできますし、アウトプットしたいものに応じてアナログな技術と横断して用いることで、ものづくりやデザインの世界の表現力をより豊かなものにすることもできます。

レーザーカッターと手仕事による仕上げを組み合わせて制作しているジュエリー。

しかし、新しく暮らしの中に現れたこれらのツールでできることは、まだまだイメージしにくいのが現状です。プライベートに使うにしても仕事に使うにしても、アイディアを導き出し、作り方のイメージを湧きやすくするための、誘い水となるアイディアが必要とされています。
私が日々デザインしているものは、主にそういった「アイディアの誘い水」となるようなプロダクトやコミュニケーションの方法です。応用の余地がある作例を提示することで、より多くの人が「私にもできそう」「私もやりたい!」と感じられることを目標に制作をしています。デジタルファブリケーションの間口を広げ、裾野を広げていくことで、自分の暮らしを自分でより良くしていく力を持つ個人が増えていくのではないか、と考えています。

次回からは、その考えに基づいて自分自身で制作したものの話や、私の身の回りで起きているデザインやものづくりに関する様々な出来事について、紹介していきたいと思っています。

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