FAB TALK #03 KULUSKA SLIPPER  クルスカスリッパ(後編)

FAB TALK #03 KULUSKA SLIPPER クルスカスリッパ(後編)

FabLab Kamakura
FabLab Kamakura (ID239) 公認maker 2014/10/07
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image01 : KULUSKA OBAMA SLIPPER

オープンデザイン : 鎌倉からアフリカへ

世界中を旅するファブラボノマドのノルウェー人、Jensによってアフリカに渡ったクルスカスリッパ。同じデータを共有しても、つくられる場所が違えば同じものができるとは限りません。オープンデータの旅は、続きます。

image02 : スリッパを縫うIzak photo by Jens Dyvik

Jensと一緒にケニア入りしたデータは、完成写真だけを頼りに彼らなりにあみ出されていきます。現地の素材や創意工夫とともに変化していきます。何が正解で何が間違っているなどということはありません。ファブラボ鎌倉では、KULUSKAさんはより長持ちさせるためスリッパを縫う糸は、蝋引き紐(ワックスコード)を使用していました。しかし、手に入らなければ縫える糸を工夫して使えばいいのです。

image03 : アフリカの大地が印字され、サンダルになったクルスカスリッパ

スリッパからサンダルへ

降り注ぐ太陽の熱によって、どこまでも続くアフリカのひび割れた大地。住んでいれば日常風景なのかもしれないですが、その土地の魅力に外から来た人が気がつくということは往々にしてあります。ノルウェー人のJensは、大地のヒビ割れパターンを写真で取り込みデータ化し、レーザーカッターでスリッパの底に彫刻しました。これもレーザーカッターならではの表現方法のひとつ。そして彼からのメールには、こうありました。

「どこにいてもアフリカの大地を歩いている気分なるスリッパをつくったよ」

ついでにスリッパの先っぽが取られサンダルの写真が添付されていました。赤道直下の暮らしでは、通気性の良いサンダルの方が快適なようです。これまでも、私たちの数えきれないの日常品はその土地の風土、知恵やアイデアが重なることで、たくさんの時間をかけて変化をしてきたはずです。通常であれば、その軌跡を追うことは困難です。しかし今、テクノロジーを介して、変化の速度や拡がりを追える手段を持てたことは、非常に興味深いものがあります。

image04 : 古いタイヤをサンダルにして売るマーケット

ケニアでは、車の古いタイヤを解体してサンダルにして売っています。リサイクルと声高にいわずとも、クッション性の高いゴム素材は、サンダルにはピッタリなので利活用されている。使える素材はとことん使うスタンスが、とても素晴らしいですね。

image05 : ナイルパーチの皮でつくられるクルスカスリッパ / ウロコが見える

牛革から魚の皮へ

さて、ケニアでは牛皮の値段が高いため、その土地らしい素材としてビクトリア湖に生息する巨大な淡水魚ナイルパーチという魚の皮を使って、スリッパがつくられました。実は、このナイルパーチという魚は、日本では白身魚として一般的に食べられている魚です。日本での給食やお弁当などのフライ、回転寿司での白身、マクドナルドのフィレオフィッシュなどで口にしている方も多いかもしれません。白身は商品価値があるのですが、大量に破棄される皮の利用法のひとつとしてつくられたスリッパです。

image06 : ホワイトハウスに送付された“Obama Grandma Slippers”とレポート

オープンデザイン : ケニアからホワイトハウスへ

ナイルパーチの皮を使ってつくられた赤いお洒落なスリッパが完成しました。ケニアのファブラボ(ARO FabLab)の近くにオバマ大統領の祖父母が住んでいるということで、あるサプライズが、Jensによって企てられました。それは、孫にあたるオバマ大統領を印字したクルスカスリッパをプレゼントする企画です。ダメもとでアポを取ってみたところ、なんとJens達はSarah Onyango Obama氏に会う事ができました。Sarah氏は、オバマ大統領が印字されているスリッパをとても気に入ってくれ、「今度来る時は、あと10足お願いね」というメッセージをもらったそうです。(笑)

こちらの映像でプロジェクト(ダイジェスト版)をご覧いただけます。

Making Living Sharing - Trailer #2

https://www.youtube.com/watch?v=zgcxH8Qliac

Jensの世界中のFabLabを旅して制作したドキュメンタリー映像はこちら(42:25分)

Making Living Sharing
Youtube : https://www.youtube.com/watch?v=YTwt7ji3EgY

今年の6月に、米国ホワイトハウスでMaker Faire が開催されました。Jensやその仲間達はケニアでの一連のクルスカスリッパの物語を書いた手紙をホワイトハウスへ送りました。今度は、オバマ大統領が受け取るので“Obama Grandma Slippers”と手紙を一緒に添えて。無事に受理され、ホワイトハウスでの展示が実現しました。どんなことも、やってみないとわからないものですね。

米国のMAKE:でも取り上げられましたので、ぜひご覧ください。

MAKE :
http://makezine.com/2014/06/24/pancakebot-delivers-obama-grandma-slippers/

image08 : KULUSKA (クルスカ)

オープンデザインそして、旅するクルスカへ

7月2日から7月9日まで、スペインバルセロナでファブラボ国際会議(FAB10)が、開催されていました。このFAB10をゴールとして、KULUSKAさんたちは、日本を出発しフィンランド、イタリア、ノルウェーとスリッパワークショップをしながらヨーロッパを旅を決行! これがはじめての海外だというから、さらに驚きです。ファブラボ鎌倉のFabResearcherとしての報告会なども予定しています。先月、無事に帰国し鎌倉に戻ってきたので、今だから語れる心境をお聞きしてみました。

ヨーロッパの旅の前と後では何が大きく違いますか?

今までは国内だけしか見てなかったですし、見えていなかったと思います。今あるのは、ものづくりの自由さです。自分の心の声に素直に実直にやっていいという開放感かもしれません。ヨーロッパの手仕事や建築物からは、手でつくることの圧倒的な技術力に触れることができました。外側は脈々と受け継がれてきた歴史を物語るけれど、内側の生身の人間関係では確実にテクノロジーの恩恵も受けていることも面白かったです。

例えば、オスロの町並は変わらないのに、デジタルサイネージされて電車の発着のタイミングが調べなくてもわかる。町の様子がスマートフォンのアプリで可視化されて必要な情報は小さな箱から取り出せる。アムステルダムの空港では、自転車をこいで発電することでスマートフォンやタブレットを充電する仕組みが導入されていたり。

物質の全てに意味があり、途方もない年月をかけてつくられた技術ですら意図してデザインに内包されている。その時代に凝縮された感性が今もなお私たちに問いかけてくる。そうしたものづくりの強さとしなやかさに触れて、ものづくりの豊かさを知りました。

ただ、面白いことに日本を離れれば離れるほどに、どこかで日本を探している自分たちもいました。職人達の手技を見て、日本の職人さんの凄さを再認識することもありました。その土地にあった「つくりかた」もあると思います。日本の外側に触れたことで、日本で失われてしまいそうな技術や、光が当たらなくなった素材など掘り起こしたいと強く思うきっかけになりました。


ファブラボ鎌倉からスタートしたKULUSKAの旅は、国内外のファブラボやハッカースペース、コワーキングスペース、ファブラボとは名乗らないけれど同じ仕組みを持つラボなど様々な場をプラットフォームにして進めることができました。イタリアでは、ローマ、カッシーナ、フィレンツェでワークショップを。その後はノルウェー、オランダ、スペインとワークショップの機会をいただきました。


正確な情報を伝えることを目的とした場合には、やはり語学力は必要だと思います。ヨーロッパ滞在中に、この意味を深く伝えるにはイタリア語が必要だ...というときは奇跡的にイタリア語と日本語がわかる方が誰が助けてくれていたり、コミュニケーションが円滑になるようにと通訳をかって出てくださった方もいます。

しかし、ものづくりを介したコミュニケーションを目的としていたので、国籍や言語という壁を感じることは実際にはあまりありませんでした。非言語コミュニケーションだからこそ、お互いに歩み寄って「学びあい・伝えあう」という時間を体験できたのだと思います。これは関わってくださる方々の賛同と協力なくしてはできなかった取り組みだと思います。理解して応援してくださっている方々に深く感謝しています。そして、この旅のきっかけをくれたJensにも。彼の故郷で再会し共にワークショップをできたことは、ファブラボのネットワークがあったからこそだと思います。

そして今、知らない世界に躊躇せず飛び込んでいくことと、自分から働きかけていくことの大切さを改めて実感しています。


KULUSKAにメッセージがあれば、お知らせください。

KULUSKA(クルスカ)http://kuluska-japan.com/
旅するクルスカを応援する会 https://www.facebook.com/kuluska.ouen


クルスカさんはじめ、これから関わる方々の成長がますます楽しみです。ファブラボの可能性やどのように人が変化していくのか、オープンデザインとは何なのか、まだまだ模索は続きます。それには時間がかかりますが、人の変化が顕在化し、集合した時にものすごいパワーを持つ気がしてなりません。


それではまた次回、お会いしましょう。

image07 : クルスカスリッパワークショップでつくられた作品一部 (まだまだ増殖中)

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