「金魚すい」OPEN A&T!(7・最終回)

「金魚すい」OPEN A&T!(7・最終回)

中垣拳
中垣拳 (ID133) 公認maker 2014/09/25
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この連載は,慶應SFCにて1年生を対象にインタラクティブアートのワークショップを提供している団体A&Tの活動を元に,そのような作品づくりを始める人に向けたノウハウやテクニックをオープンにしていくような内容となっています!

金魚すい - A&T2013

http://vimeo.com/87654011

「金魚すい」は金魚をチューブ型デバイスで「スポッ!」と気持ちよく吸い込むことができる作品です。このチームは金魚を吸い込む瞬間の快感を追求し、振動スピーカによってチューブから伝わる触覚,ディスプレイによる視覚の提示とこれらのタイミングを丁寧にデザインすることで、リアリティのある感覚を実現しました。

「金魚を吸う」という謎のコンセプトだったことからA&Tのディスカッションにおいて「なぜ金魚を吸うのか?」という問いを散々浴びせられていた作品でした。しかし,金魚を吸い込む気持ち良さを追求することで、アート&テクノロジー東北における展示でA&Tでは初めての最優秀賞を受賞しました。私自身も「体験が持つ説得力」と「拘りを持つことの重要性」を実感することができた作品でもありました。

さて,最終回の今回は、ノウハウやテクニックというよりは、より大きな話としてA&Tが果たす役割についてその限界と可能性について語ります。

A&Tの限界

第1回の記事で説明した通り、A&TではTechnology Driven(How)ではなくIdea Driven(What)を重視して作品を作るように1年生をディレクションしています。これによって,1年生の新鮮な妄想ありきの作品が多数生まれてきました。単位は出ませんが、だからこそ授業よりも真剣に取り組む学生が集まっていて、苦労しながらも毎年成果をあげています。学生のみによる運営とは思えないほど、ワークショップとしては非常にうまく機能しています。

一方で、A&Tのワークショップではチームでものづくりを実践するため、他者との意見をすりあわせながら作品を作ります。しかし,これでは“個(Identity)”が滲み出るような作品が生まれにくいという問題を抱えています。アーティスト・研究者・デザイナーとして、“個”は非常に重要なキーワードで「作家性」「軸」「スタイル」という言葉に言い換えると分かりやすいかもしれません。ただおもしろいものを考えるだけではなく“なぜあなたがそのものを作るのか?”という問いを持つ必要があるのです。Idea Driven(What)よりさらに本質的なIdentity Driven(Why)なものづくりへ。この“個”が育てることまでをカバーできないのが,私が感じているA&Tのワークショップとしての限界です。

A&Tの限界

A&Tの可能性

このような限界を打開する解決策として「コミュニティとしてのA&T」に可能性があると私は感じています。

今年の6月末にA&Tのワークショップが6年目の開催を終えました。年々規模が拡大し、僕が1年生のときには参加者が4名だったのが現在は16名にまで参加枠が増えています(これでも入学式の前に応募多数で締め切ってしまうほど)。参加人数の数だけ次年度の指導する上級生も増えています。つまり、このワークショップは1年生が成長できる役割だけでなく、縦と横のつながりを広げながら、慶應SFCにおけるものづくりコミュニティの形成の役割を果たしているのです。

規模拡大するA&T

規模拡大するA&T

このように人と人がものづくりを介してつながっていくことで、ワークショップが終わったあとも,議論する仲間を持つことができます。“なぜあなたがそのものを作るのか?”—意識的に問い続け合う仲間を持つことで、互いに“個”を意識しながら作品を作っていけるのではないでしょうか。

A&Tが単なるものづくりワークショップにとどまらずそれぞれの“個”を意識できるコミュニティとして育っていくことで、学生がそれぞれの“個”の強みを持ち、優秀なアーティストや研究者、デザイナーとしてさらに大きく躍進できるのではないかと私は考えています。

個人でこれからものづくりをしていく人にも、“個”を意識していけばよりよいものを作っていけるのではないかと思います。

コミュニティとしてのA&Tが持つ可能性

というわけで、これで連載「OPEN A&T!」を終わります!
短い間でしたが有り難う御座いました!


慶應SFCの外で「自分の大学でもA&Tの取り組みを作っていきたい!」など、活動に関するご意見・ご相談・ご興味のある方は、ぜひTwitterやメールなどでお気軽にご連絡ください!


Twitter : @art_and_tech
Web : http://at.sfc.keio.ac.jp/

これまでの連載:中垣拳


「TimeTurner」OPEN A&T!(6)
https://media.dmm-make.com/item/2199/

「Re Flower」OPEN A&T!(5)
https://media.dmm-make.com/item/1875/

「24^3」OPEN A&T!(4)
https://media.dmm-make.com/item/1871/

「しゃぼ音玉」OPEN A&T!(3)
https://media.dmm-make.com/item/1519/

「あし@」OPEN A&T(2)
https://media.dmm-make.com/item/1517/

「インタラクティブアートを始める人へ」OPEN A&T(1)
https://media.dmm-make.com/item/267/

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