「二足のわらじだからこそできる ものづくり」ファーイーストガジェット インタビュー

「二足のわらじだからこそできる ものづくり」ファーイーストガジェット インタビュー

DMM.make
DMM.make (ID217) 公認maker 2014/09/05
0

ファーイーストガジェットとは?

ファーイーストガジェットは、デザインコンシャスなコンピュータ関連のガジェットの企画・開発・販売をしており、主に2人のメンバーで活動している。

ファーイーストガジェットでは、すでに2つの商品の販売している。
「Ps/Aiショートカットステッカー」は、Macのキーボードに貼るだけでPhotoshop・Illustratorのキーボードショートカットが手元で一覧できるようになるステッカー。

http://www.fareast-gadget.com/psaishortcutsticker.html

2つめの「No Manners FILM(ノーマナーフィルム)」は、iMacの画面下を自由に書き込めるホワイトボードに変えるシート。
http://www.fareast-gadget.com/nomannersfilm/index.html

2人は本業はそれぞれ別の会社で勤務している会社員であり、pさんはデザイン事務所でプロダクトデザイナーを、mさんは大手メーカーでプロモーション企画を担当しているとのことだ。本業への影響を考えて、名前をふせて活動中とのこと。

左:mさん、右:pさん

世界のどこかで1つ1つ売れる、役割を果たすデザインを

――お二人で始めたきっかけは何だったのですか?

p
小学校5年生からの知り合いで、もともと工作クラブで一緒にプラモをつくったりしていました。
大学も一緒で、卒業後は何人かでクリエイターズマーケットに出したこともあります。当時からmさんは「売れるものをつくる!」と言ってましたね。


――「ファーイーストガジェット」と名付けた理由は何ですか?

p
単純にガジェットがやりたい、という想いがもともとありました。

m
日本だけで売れるとも思ってなかったです。世界のどこかに1つ1つが売れればいいなと。だったら東から全世界に届けたいという想いで、「ファーイースト」をつけました。

p
また、日本のアーリーアダプターは10万人ぐらいと言われていますが、デザインの恩恵を受けてない人をもっと対象にしたいと考えていました。デザインを学んでいた大学では「デザインは色や形じゃない」って教えられましたが、仕事を実際に始めると「結局色とか形(ばかり求められる)じゃん!」という経験が多く……おしゃれなデザインで、フィーリングだけで買われるマーケットにはあまり興味はありませんでした。

m
何かしら役割を果たすデザインが必要だよね。不便を解消したり。

p
そうそう。

商品をつくるときに困ったこと

――実際に2つの商品を製造、販売して困ったことはありましたか?

p
陥りやすいこととして、「製品ができた!」と思ったら、「パッケージ考えてなかった!」みたいなパターンですね。2作目の「ノーマナーフィルム」はiMacのサイズに合わせた製品である都合上、商品サイズが大きいので下手すると送料が1000円とかになってしまう。ありもののパッケージもなくて困りました。結果、「ノーマナーフィルム」では丸めた形で詰める工夫をしたり、ラベルに送付先を載せることでコスト感も問題ないパッケージを実現しました。

――ロットや価格はどう決めていったのですか?

p
ニッチなプロダクトであるため、生産数量はすごく気にしています。通常、業者に出すと1ロット1000とかになってしまうため、最初は市販の機器での製造にトライもしました。しかし、精度が悪く採用に至らず、最終的には数枚単位でも作れるよう業者と調整してコストと品質を両立しています。

m
また、1つめの製品をつくって、実際の傾向から学んでいきました。ベースで売れる数量やメディアに掲載されたときに売れる数量など反応が見えてきます。ただ、売れ行きだけではなく、製品サイクルにも気をつける必要はあります。例えばiPhoneは2年程で大きく仕様が変わるため、製品サイクルを考慮せずに製造してしまうと、在庫を抱えて大変になってしまいます。

――安全性のテストなどはどうしていますか?

p
実際の現場で使用するなどして負荷テストを行っています。2作目の「ノーマナーフィルム」では、じっさいにiMacに貼って3カ月ぐらい使用し、特に、ペンの粉がiMacやキーボードに影響を与えないかなどを見ていました。今後、商品の複雑性が高くなってきたときにテストも難しくなると感じています。

本業との同時並行だからいいものづくりができる

――起業したいと思わなかったのですか?

p
ミュージシャンで言うと、食べられるようになってからで…(笑)

m
……。まぁやりたいですよね。

とはいえ、会社の経験との相互作用で、両方でいいものづくりができています。
例えば会社の仕事でプロモーションを担当するときに、すぐにお金をかけてプロモーションをする話になりがちです。そして大手メディアに相談すると広告枠を紹介され、結果予算が合わず断念することもあります。それがファーイーストガジェットだと、もっとゲリラ的な活動が試せます。例えば、大手メディアに頼らず有名なブロガー、小規模なメディアに商品を直接売り込んだり試してもらうなどです。そして、うまくいくと実際に売れることが体感できます。
そして今度は同じ手法を会社の仕事でも試してみる。すると、メーカーとしてもちゃんと成功することが体感できます。
逆に、メーカーとしての仕事(プロモーションや販売の流れ、サンプル配布や、必要な情報の準備、プレスリリース配信など)は、会社でやってきたからこそファーイーストガジェットでもできます。


p
これぐらいのロットなら安く製造できるとか、そういった計算は会社の経験がいきていると思います。自分が勤めているデザイン会社は小さいところで、よく少ロットの案件を担当するため、小ロットの設計や製造は得意です。
他にも、仕事で海外と絡むデザインを担当したことがあるのですが、生地が中国でどう作られているかの知識や、CADまで海外に外注することでコストを下げるといったやり方も知ることができました。

m
会社だと、自分で「これはいける!」と思ったアイディアもやったことがないからやれない、ということがよくあります。会社勤めで、もしそんな経験が多くて仕事がつまらないと感じている人にはこういった活動はオススメです。外で活動してみると「思ったこと当たるじゃん、自分できるじゃん」と自信になります。

p
今独立することよりも、もっと会社でも色んな経験をしたいですね。会社でものづくりをしているから、この活動ができているということは多々あります。


――逆に大変なところはありますか?

m
お問い合わせの電話番号もサイトに掲載しているのですが、日中に電話が来てしまうときが大変です。

p
他にも、配送先の住所が途中までしか書いておらず、商品が戻ってきてしまったり。住所を聞こうとメールしても迷惑メールに入ってしまっていたり、電話で連絡すると購入者の奥様が出て不信がられたり…。再発送の金額も負担したりと、意外と大変です。まだ大きなトラブルは出ていませんが、気をつけていかなければならないところです。

――お互いにうまく活動できているのは、20年来の濃厚な付き合いがあるのも一因でしょうね。

p
そうですね。お互い厳しく言い合うとこはあっても、互いに本業で担当している分野はプロ、という考え方で、お互い尊重してやっています。

――本当に夫婦漫才見ている感じがします(笑)

m,p
そうですか?(笑)

キャッキャとシールを貼る二人 

Ps/Aiショートカットステッカーを貼ったキーボード

ハードウェアの壁

――今後、ハードウェアにも挑戦したいですか?

p
ガジェットと名前をつけている通り、もちろんやるつもりです!ただ、2人だと難しいと感じています。英語ができて、電気、基板、ソフトウェアに詳しいメンバーが必要です。しかもお金が絡む話なので、なかなか深いところまで一緒にやってくれる人は見つかりません。

m
特にバッテリー系のハードウェアもやりたいのですが、規格を守っているかやテストについては不安です。まだまだ、ハードウェアはプロトタイプから商品への障壁がまだ高いです。

いわゆる同人活動みたいなもの。まずはやってみる!

――これから目指す人に、メッセージをお願いします。

p
まず1こ作ってみるのがいいと思います!
自分たちは最初、投資額が痛くないところから始めました。最小限で最大限学ぶ、から始めたのです。ただし、「とりあえず1個」ではなく、アイデアの中で一番安く、売れそうなものから作りましょう。

m
私たちがやっているのはいわゆる同人活動のようなものだと思います。なので、まずはやってみればいいじゃん、と思います。ちなみにあやしい副業のように思われる方もいますが、法律は守っていますよ。


――お二人とも、楽しい取材をありがとうございました!

m,p
ありがとうございました~。

ちなみに顔を隠している四角いもの。「ただ隠すだけじゃデザインじゃない」ということで、ファーイーストガジェットWebサイトへのQRコードになっています。

「スタートアップ」という言葉を聞くと「会社を辞めて起業」を連想してしまうが、ファーイーストガジェットのように、本業があるからこそいいものづくりができる、というのは貴重な実例だろう。「まずは会社を辞めて…」ではなく、「まずはできることからやってみる」というのが重要なのではないだろうか。

(文・インタビュー 水草亜友)

参考にしてくれた記事

記事が登録されていません。
この記事を参考にして、新しく記事を投稿しよう!

違反について