クリエイティブ安産祈願(4)「日本漂流してローカルなものづくり拠点を巡ってみた」

クリエイティブ安産祈願(4)「日本漂流してローカルなものづくり拠点を巡ってみた」

市原えつこ
市原えつこ (ID369) 公認maker 2014/10/01
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地方クリエイティブコミュニティの知られざる世界

日本全国に散らばるヤバい土着文化を求めて、2014年前半は週末ごとに日本全国を回っていました。リサーチと気分転換を兼ねて。愛知県の桃太郎神社をはじめ、日本の地方には予想もしなかった未知の世界がしばしば転がっており、その衝撃が作品制作のきっかけになることがこれまで多かったからです。

全国のユル〜い観光名所は、期待に違わず日本的なしっぽりとしたイマジネーションを与えてくれましたが、それ以上にエキサイティングだったのは、地方に点々と存在するものづくりコミュニティのあり方でした。

東京を中心とした文化のムーブメントについては、おおよそ情報がウェブやSNS上に詳細に情報がアップされていることが多いのですが、地方でローカルに行われているものごとについては外部にあまり情報が漏れておらず、地域に密着した形で告知が行われていることが多いようです。東京のように大勢にリーチしてなんぼ、みたいな世界ではなく、必要な範囲の人に必要なだけ届けるスタンス。つまり、現場にいかないと知る由もない。

でも、そこには自分たちが想像しなかったようなコミュニティのあり方が存在していて「こんな生き方があったんや……!!」という強い刺激をうけました。

この記事では、そんな魅力的な地方コミュニティ拠点をいくつか紹介したいと思います。

3.11以降は西日本への移住者も増え、少しずつ顕著になってきた「脱・東京」の流れ。
今後の生き方を考える上で、少しでも参考になれば幸いです。

北九州:fabカルチャーを地域に発信するシェアスペース「fabbit」

小倉にあるファブラボ&シェアオフィスfabbit。

3Dプリントに関連する設備は一通り揃っている、充実の環境です。
工作設備もMTGスペースも整ってるのに破格の入居費(自分用デスクを構えて月9,000円+MTGスペースを無料で利用可)。フリーランスホイホイすぎる。。値段を聞いて思わず福岡に引っ越したくなりました。

fabbitも含め、福岡や北九州にはシェアオフィスやファブラボが増えているようです。

エキソニモやカズワタベさんを筆頭にテック界隈の人々が移住し、盛り上がりつつある福岡移住。
確かに、街のサイズ感がちょうどいいし、ほどほどに都会だし、東京へのアクセスも飛行機ですぐだし、女の子は謎にかわいいし(これはマジだった)、食べ物はおいしいし、地価は安い。非常に暮らしやすそうな拠点に感じました。生活にかかる固定費やストレスを省きつつ、ITの力で場所を選ばず仕事をする。そんなライフスタイルが、福岡なら可能になるかもしれません。フリーランスのIT関係者におすすめの街です。

広々としたMTGスペース。固定席会員は無料。

“学び、集い、つくる場所” 「fabbit」は、シェアオフィスを軸として多様なアクティビティを内包する複合施設です。 入居者以外も利用できるライブラリや、ITスキルなどを習得できるスクール、 様々なセミナー・ワークショップが行えるイベントスペースを併設。 学ぶ・集う・つくる、という3つの側面から、 北九州における新たな文化の担い手をサポートします。

出典- http://fabbit.in/about/

別府:地域に開いたアート版トキワ荘、清島アパート

清島アパートとは 大分県別府市にある戦後すぐに建てられた3棟22 室からなる元下宿アパートで、現在、NPO法人BEPPU PROJECTがアーティストの活動支援の一環として運営しています。「若い人が集まることで、活気が生まれてほしい」と、大家様のご理解のもと、全国各地から集まる様々なアーティスト/クリエーターの居住・制作環境として活用されており、清島アパート住人や集まってくる人々による多様な企画が催されています。

出典- http://beppuproject.com/kiyoshima/

別府に、若手のアーティストが共同生活しながら作品制作を行っている「清島アパート」という場所があるという情報をいただき、現場に行ってみました。

一階は公開制作のアトリエになっていて、二階がプライベートスペースになっているようです。
月額10,000円で家賃と光熱費込み、という驚愕の生活費。(入居者は公募で審査)これなら生活維持のための労働に時間をとられず、制作に思い切り没頭できそうです。

ここで生活するアーティストさんも非常に面白くて、
鉛筆を使って鉛筆らしからぬテクスチャで平面作品を作っている勝正光さん、
キャンドルを使って、繊細な色使いの立体作品を作っている菅英二さん、
ミロのヴィーナスを天ぷらにする作品など衝撃的な作品の多い現代美術家の眞島竜男さんなど。

アトリエをいくつか見せて頂いたのですが、それぞれの作家性がドーンと反映されていて、大変見応えがありました。眞島さんのアトリエではスニーカーなどあらぬオブジェクトが天ぷらになっていたり、菅さんアトリエは色とりどりのキャンドルがぎっしりと並べられ、非常にドリーミー。

旅人の自分向けに入居者の勝さんが別府の面白スポットマップをその場で書いて渡して下さったのですが、これが本当に面白かったです。自分向けに秘宝館っぽいモノを多めに解説してもらえたりw
アーティストが地方に住み着いて、その土地を面白い視点で切り取ってくれることの可能性を感じました。

地域の人を巻き込んだ作品制作を行ったりと、アーティストと町との有機的な相互作用が行われているようです。

尾道:古い町の魅力を再発見。アーティストがハードから町を再生産していく

多くの文人や芸術家に愛されてきた町、尾道。

都市への人口の一点集中に伴う過疎化とともに朽ち果てた空き家が目立ってきてしまった地域ではあるのですが、その町の魅力に魅せられ、様々な場所からの移住者が少しずつ増え続けています。NPO法人「空き家再生プロジェクト」をはじめとした母体が、移住者と空き家を結びつけたり、再生された空き家を拠点とした様々なユニークな活動を斡旋したり、地元のバックアップ体系も強力。

地域の住民や移住してきたアーティストが、家というハードから町を再生産していく。そんなダイナミックなプロセスを尾道では体験することができます。

町に散らばる空き家を有効活用し、住民や移住者がフットワーク軽く活動を立ち上げていく様子は非常に痛快です。(つるけんたろうさんの『0円で空き家をもらって東京脱出!』という漫画が非常にこの辺りの楽しさを的確に描写しているので、ご興味のある方はぜひ)

尾道出身の美容師さんが経営する「坂道美容室」。千光寺道にある築100年以上経過した古民家を美容院として再生したそうです。一席だけのこじんまりしたお店で、古い素材や朽ちた素材が散りばめられた素敵な場所。窓から圧巻の風景を眺めながら髪を切ってもらうことができます。

先ほどの坂道美容室の内装を担当した木工職人、エージさんが経営しているボトルカフェ&ギャラリー「YES。」。世界中各地から集められた飲料を、めいめい好きなデザインの缶切りで開けながら、ここに集う濃ゆ〜い尾道人たちと談話をすることができます。ハンモック席が最高。時間を忘れてしまうような場所です。

こちらはボロボロの家を自分たちで大工仕事しながら再生し、なんとDIYでゲストハウスを建設中。旅の途中で尾道に住み着いたという大工作業中のお兄さんいわく「別にそんなに複雑な技術はいらない。昔の人たちは自分たちで家を造ったり修繕してたんだから、わざわざ高い金を払って業者に頼まんでも自分たちでやれるし、その方がオリジナルな空間にできて楽しい」という力強いお言葉。

尾道にはほかにも「あなごのねどこ」という古民家を再生した素敵なゲストハウスがあります。建築物としても非常に面白いので、尾道に来た際にはぜひ宿泊を。

ゲストハウスのお隣には、さらっと吹き抜けのカフェなんかも作っちゃったり。「チャイダー」なる爽やかな飲みものが人気です。→チャイサロンドラゴン

うーん、尾道人の果てしないDIY精神、スゴイ。。
生活に根付いた、面白い表現やスペースがボコボコと生まれています。

地方を舞台にしたアートフェスが好きでよく行くのですが、大抵それらは東京のキュレーターが主催し、東京のアーティストの作品を派遣するような形態がほとんど。
尾道の特異性は、キュレーターもアーティストもぜんぶ地元の人で行われ、それによって独自のコミュニティが生成されていることだと思います。しかもクオリティがきちんと担保されているのがスゴイ。
とってつけたようなアート施設が不自然に出現するのではなく、土地や生活に根付いた日常的なアートが町中の至る所に散らばっている。単なる東京の移植やコピーではなく、ここでしかできないものごとが生まれています。
「文化の地産地消」とも言うべき、町の文化や歴史、生活に根付いたアートが生まれている尾道。今後の動向も見逃せません。

地方で表現活動をするという選択肢

いかがでしたでしょうか。この記事で紹介できたのは日本全国の活動のなかのほんの一部ですが、拠点や住居そのもののありかたを見直すことで、より多様な生き方が可能になる、ということを様々な現場を回る中で気付きました。

地方だと、地価が安い分「空間」や「町」をふんだんに使ったプロジェクトが可能なのも魅力。
また、地域ごとの共同体が強く、町ぐるみでプロジェクトを起こせるメリットあります。
東京のクリエイティブシーンは非常に華やかですが、今、地方を選ぶという選択肢も面白いと感じています。引き続きいろんな場所を巡っていきたいと思っているので「この町にはこんな活動ある!」など、ぜひ教えていただければ幸いです。

それでは!

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