3Dプリンティングによる二次創作と著作権を考える

3Dプリンティングによる二次創作と著作権を考える

yomoyomo
yomoyomo (ID191) 公認maker 2014/09/30
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昨年『3Dプリンティングと著作権を考える』という電子書籍の翻訳を担当しましたが、今回はこの問題を考える上で重要な世界的玩具メーカーの試みを紹介します。

昨年、『3Dプリンティングと著作権を考える』( http://tatsu-zine.com/books/copyright-3dprinting )という電子書籍の翻訳を担当しました。これはデジタル権利擁護団体Public Knowledgeの副代表を務めるMichael Weinbergが書いた文章を翻訳したものですが、刊行から一年以上経ってβ版ということは、残念ながら期待したほどには売れてないようです。

しかし、訳者としての欲目を差し引いても重要な内容を扱っていると自負しており、その価値は今も減じていないと思います。当然ながら、アメリカの法体系における議論ですので、その内容をそのまま日本に持ってこれるわけではありませんが、3Dプリンタがこれから普及していく中で、「作ったけど、これを公開するのって著作権法に違反しないか?」という場面は増えてくるはずです。

惜しいと思うのは、全体的に議論の歯切れがあまりよくないことで、しかしそれも仕方ないことだったりします。結構白黒はっきりしないのが現実なわけで、それは議論の誠実さの証でもあります。ただそんな『3Dプリンティングと著作権を考える』でも、自明だろと言わんばかりにはなから扱ってない話題があります。

それは著作権が明らかに他者にあるキャラクター(やその二次創作、ファンアート)の3Dプリンティングです。

個人で楽しむ分にはともかく、例えばディズニーのキャラクターそのものや、そのキャラクターのあからさまな二次創作を3Dプリンタで作って売るところまでくると、さすがに常識的にまずいだろう、というわけです。

今回はその常識に挑戦するプロジェクトを紹介したいと思います。

これも『3Dプリンティングと著作権を考える』の著者Michael Weinbergのブログ記事( https://www.publicknowledge.org/news-blog/blogs/bronies-show-a-way-to-not-destroy-3d-printing-with-lawsuits )で知ったのですが、世界的に有名な玩具メーカーのハズブロが、3Dプリンティング作品の製品化サービスを手がけるShapeways( http://www.shapeways.com/ )と組み、SuperFanArt( http://www.superfanart.com/ )というサービスを始めています。

SuperFanArtは、ハズブロが保有する知的所有権をShapewaysのサービスを使った3Dプリンティングに開放するもので、つまり、ユーザは『マイリトルポニー』シリーズなどハズブロの玩具のファンアートを3Dプリンティングでき、さらには販売(!)もできます。これは思い切ったチャレンジに違いありません。

ワタシなど『マイリトルポニー』のこと自体ほとんど知らなかったわけですが、元々は女児向けの玩具やテレビアニメとして知られ、日本でもテレビ東京系列で『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』( http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/mylittle-pony/index2.html )が放送中です。アメリカでは、『マイリトルポニー』の魅力に目覚めてしまった男性をBrony( http://whatisabrony.com/ )と言うらしく、要は男女を問わず広く愛されているキャラクターのようです。

Michael Weinbergは件のブログ記事(タイトルに上記のBronyが入っていますね)で、SuperFanArtのチャレンジを音楽業界の失敗の轍を踏まないものとして評価しています。

音楽業界が犯した失敗とは何か? 一つはネット時代の変化に抗い、一般の音楽ユーザやテクノロジー自体に訴訟をしかけたこと、もう一つはDRM(デジタル著作権管理)技術で音楽を縛り、その売り上げを守ろうとしたことです。

3Dプリンティングの分野で一般ユーザが訴訟の対象となったり、DRMによって縛られることなんてあるわけない、とは実は言えなかったりします。

『3Dプリンティングと著作権を考える』にも、あるデザイナーが「ペンローズの三角形」を三次元化した作品をShapeways(SuperFanArtのパートナーです)で販売したところ、それを見て挑戦欲に駆り立てられたユーザが同じく「ペンローズの三角形」を実現する模型をデザインの共有サイトThingiverse( http://www.thingiverse.com/ )に公開した事例が紹介されています。この件では元のデザイナーはユーザの行為を快く思わず、デザインをThingiverseに削除するよう求めたのですが、純粋に他人の作品にインスパイアされて3Dプリンティングしたもののせいで訴訟沙汰に巻き込まれる話はこれから増えてくるでしょう。

またDRMの3Dプリンティングへの適用についても、今は例えば3Dプリンタで銃器を作るのを抑制する文脈でよく言及されますが、権利保持者による著作権を盾にとったDRMの利用も容易に想像できます。そして、3Dプリンタ用DRM技術は既にアメリカで特許が取得されているのです( http://www.technologyreview.com/view/429566/nathan-myhrvolds-cunning-plan-to-prevent-3-d-printer-piracy/ :リンク先でMichael Weinbergがこの特許の適用範囲がとても広範なことをコメントしています)。

ファンアートや二次創作を公開するとなると、ファンコミュニティなどとの微妙な関係が影響するところがあり、ハズブロのSuperFanArtも成功すると決まったわけではないのですが、いずれにせよこの試みが「3Dプリンティングと著作権を考える」上で(しつこく書名を連呼)、作品の権利者とファンの両方にとって有益なチャレンジとなることを願ってやみません。

これまでの記事

「Maker界のレディー・ガガ、ではないが注目のリモア・フリード」Makers' Front(1)
https://media.dmm-make.com/item/261/

「自作できるドローンとそれにともなう責任」Makers' Front(2)
https://media.dmm-make.com/item/1675/

「ウェアラブル、IoT、ロボットなどで起業したい人のヒントとなる3冊(+α)」
https://media.dmm-make.com/item/1543/

「ファブラボ太宰府に行ってきた」
https://media.dmm-make.com/item/1977/

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