超音波の話をしよう(3)「コロイドディスプレイ」

超音波の話をしよう(3)「コロイドディスプレイ」

星貴之
星貴之 (ID1529) 公認maker 2014/10/17
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こんにちは。超音波研究者をやっている、名古屋工業大学の星です。

前回は超音波集束装置を使った遊びとして、粘性流体に図形を描いてみたり、動作音を使って一曲弾いてみたりした動画を紹介しました。

さて本職のほうでは何をやっているかというと、集束超音波の他分野への応用に他研究機関の研究者と共同で取り組んでいます。今回はその中から、共同研究をひとつ紹介します。

世界一薄いディスプレイ

東京大学・落合陽一 氏(博士2年)との共同研究です。
また彼の修士論文のテーマでもありました。

http://youtu.be/Blj4pVsjHwo

Colloidal Display(コロイドディスプレイ)2012

ざっくり言うと「シャボン膜は普段は透明だが、超音波を当てると光を乱反射するようになり※、映像を投影するスクリーンとして使える!」です。

本研究では超音波で「押す」のではなく、超音波の周波数(40 kHz)でシャボン膜を微細に振動させてこの効果を出しています。また膜全体を振動させるため、超音波を集束させずに(焦点距離を遠方に設定して)当てています。すなわち、集束超音波の特長

(1)相手に触らない
(2)狭い範囲を狙える
(3)力の発生場所を自在に変えられる

のうち(1)だけを利用していると言えます。

※ この現象は「キャピラリー波(表面張力波)」で説明されます。超音波がシャボン膜に当たると微細な波(波長数10マイクロメートル)が生じます。この高速振動する波が光を様々な方向に反射させます。

超音波使いは引かれ合う

本研究のきっかけは、第17回バーチャルリアリティ学会(2012年9月)でした。デモ展示会場を見て回っていた落合氏が僕の超音波装置を見て、「これすごい!使わせて下さい!」とその場で交渉。話を聞いたところ、雑誌で読んで知っていたコロイドディスプレイの作者だったので僕もびっくりしました。

それ以前は秋月で売っているパラメトリック・スピーカー実験キットを使っていて、イマイチ出力が弱く、また細かい制御ができず困っていたとのこと。互いの活動範囲を考えると、ここを逃すと他の機会はありえないだろうという奇跡的な出会いでした。

コロイドメタモルフォーゼ

宝石や金属などは表面がキラキラ輝いて見えます(光沢感)。これは鏡のように特定の方向にだけ光を強く反射する性質(鏡面反射)が強いためです。一方、紙や石膏などはどこから見てもまぶしくありません。全方向にまんべんなく光を反射する性質(拡散反射)を持つためです。この鏡面反射と拡散反射の組み合わせで多くの素材の見え方が表されます。しかし液晶ディスプレイや普段使われるプロジェクタのスクリーンはそのような調節機能を持たないため、光沢感が再現できませんでした。

コロイドディスプレイは超音波を当てていないときの透明(ガラスなどと同様、鏡面反射でもある)な状態と、超音波を当てたときの拡散反射の状態という、2通りの状態を併せ持つ点が特長です。超音波を高速(100Hz程度)にON/OFFすると、人の目にはこれらの状態が混ざって見えます。これにより光沢感の再現が可能になります。

またシャボン膜そのものの素材を活かして、膜を割らずに指や棒を貫通させることができたり、超音波を集束させて膜を押して盛り上げたり、超音波を急激に強くして膜を割ったり、これまでにない新しいインタラクションも提案しています。

学会発表でもこの研究は評価され、Laval Virtualでの展示に採択されたほか、ACM SIGGRAPH Student Research Competitionに選抜されたり、International Conference on Advances in Computer Entertainment Technology(ACE)にてSpringer Diamond Award for best researchを受賞したりしています。

ということで、今回は東京大学・落合氏と行った共同研究について紹介しました。ご意見・ご要望などあれば、コメントやメール、ツイッターなどでお知らせいただけると反映するかもです。それではまた☆彡

これまでの連載:星貴之

超音波の話をしよう(2)「集束超音波で遊んでみた」
https://media.dmm-make.com/item/2209/

超音波の話をしよう(1)「不触(さわらず)の誓い」
https://media.dmm-make.com/item/1577/

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