score/chart/diagram(3)「頭の中だけで追体験する」

score/chart/diagram(3)「頭の中だけで追体験する」

菅俊一
菅俊一 (ID113) 公認maker 2014/10/17
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この連載は、広大なインターネット上に落ちている興味深い図や表を、毎回1つのテーマに基いて紹介することで、その魅力の正体を探っていく試みである。

基本的に図というものは止まっていて、動くものではない。「何を当たり前なことを言っているんだ」と思われるかもしれないが、実は図の中には「絵としては止まっているのに、頭の中で動かすことができる」という種類のものがあるのだ。例えば、前回取り上げた「工場のライン」の図版はその中の代表的なものと言える。

今回は、「工場のライン」以外にも、「頭の中で動きを作り出すことができる」図版というものをいくつか取り上げることで、図というメディアがどうやって時間を封じ込めているかを体感してもらいたい。

La sélection artificielle des chevaux : le gène de la marche

出典- https://www.surlatoile.org/discussion/257670/selection-artificielle-chevaux

様々な馬の脚の運び方を図示したもの。足跡と対応させて見ることで、頭の中で「馬がどうやって脚を動かして走ったり歩いたりしたか」を容易にイメージすることができる。

Galloping Dog Agility Club GDAC PAWSIBILITIES

出典- http://gallopingdog.com/club/newsletter/

犬のアジリティ(障害物競走)のコースデザイン。障害物の形と矢印によって示された進路を見ていると、飛び越えたりジグザグに躱したり、上に乗って走るといったような、どうやって犬が障害物を乗り越えていくのかという様子がありありと分かる。

World Traveled Family Verrückt, The World’s Tallest, Fastest Water Slide To Make A Splash In Kansas City!

出典- http://worldtraveledfamily.com/gallery/verruckt-worlds-tallest-fastest-water-slide-make-splash-kansas-city/

世界で最も高いウォータースライダーのコース図。「ウォータースライダー」であるということを知ることで、ただコースの構造を見るだけではなく「もし自分がこれを滑ったらどうなってしまうのだろうか」ということを具体的にイメージして、思わず身構えてしまう(人によってはワクワクするのかもしれないが)。

想像力のトリガーになる図版たち

さて、ここまで紹介して来た図版はパッと見る限りでは全くバラバラであるが、きっと頭の中では、どの図版も動いている様子がはっきりとイメージできたのではないかと思う。

これらの図版は皆さんの頭の中で、「動きを生み出すトリガー」として機能している。実際に映像を作って見せることをしなくても、このような形で静止画を「上手く作る」ことができれば、変化のある情報を生み出せるということを、私たちは知っている。

この連載のタイトルにもなっている「ダイアグラム」や「チャート」とは、様々な情報を図式化したものを指す言葉だ。その情報の中には、プロセスや動作なども含まれる。
ダイアグラムやチャートとは本来、時間を圧縮して図の状態で表現し、見た人が解凍することで時間を追体験させるポテンシャルを持っている技法なのだ。

時間的変化、動きを表現できるのは、映像や音楽、身体表現だけではない。
ダイアグラムやチャートのポテンシャルを駆使すれば、静的なメディア、例えば3Dプリンタなどによって作られた立体でも、時間を追体験させる新しい表現が可能なのだ。

新しい表現とは、決してコンピュータを使ったものだけではない。私たちの情報の捉え方や体験を変えさせるトリガーを作ることさえできれば、どんな技術を使おうとも、新しい体験をもたらす、新しい表現を作ることが可能になるのだ。

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