超音波の話をしよう(4)「lapillus bug」

超音波の話をしよう(4)「lapillus bug」

星貴之
星貴之 (ID1529) 公認maker 2014/10/23
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こんにちは。超音波研究者をやっている、名古屋工業大学の星です。

超音波を集束させる装置を使ってあれこれ新しいことをしようとしています。前回は東大・落合氏との共同研究「コロイドディスプレイ」を紹介しました。

今回も引き続き共同研究のお話です。

飛び回るコバエ

東京大学・河野通就 氏(博士1年)との共同研究です。
また彼の修士論文のテーマでもありました。

http://vimeo.com/81077976

lapillus bug(粒子の空中移動制御)2013

超音波の定在波の(音圧の)節には、小さい物体が捉えられて浮くこと(音響浮揚)が知られています。本研究では、上から皿に向かって集束超音波を照射し、皿からの反射波と重ね合わせることで皿の表面付近に定在波を作り出しています。粒は超音波ビームの中心に引き寄せられるため、超音波ビームを移動させるとそれにつられて粒も動きます。粒を浮かせて動かせることから、集束超音波の特長

(1)相手に触らない
(2)狭い範囲を狙える
(3)力の発生場所を自在に変えられる

のうち特に(1)と(3)を活かした応用と言えます。

集束超音波の新展開

集束超音波の共同研究は「これをあれに使おう」という目的が最初からあって始まることが多いのですが、本研究は珍しく「これで何かしてみよう」という挑戦的な試みから始まりました。

縁あって、超音波装置を研究素材として慶應義塾大学・筧研究室に提供したのが2012年7月のこと。それから集束超音波による面白い現象はないかという探究が始まり、そして「少し面白いものができてきた」と報告を受けたのが2013年1月。目の前で小径の金属ナットが浮いて動き回るのを見た時は衝撃を受けました。それを見せてくれたのが、この現象の発見者・河野氏(当時、慶應大・修士1年)でした。

それまで僕は、集束超音波を「押す」ためのものと考えて研究していました。関連研究を調べる中で音響浮揚も見かけてはいたのですが、まさかそれが自分の集束超音波と繋がるとは・・・。集束超音波の新しい側面が見えた印象深い出来事でした。

生物のように動く無生物

河野氏は本研究の前に、多数の電磁石により球体磁石を制御してシャクトリムシのような動きを表現する研究に取り組んでいました。初めて見た時、僕もこの動きに魅了されました。

http://vimeo.com/61151571

tamable looper(磁力球群の移動・変形制御)2012

lapillus bug(コバエ)もtamable looper(シャクトリムシ)も無生物から生物のような振る舞いを生成し表現することを目的とした研究であり、また対象に動力を組み込むのではなく外部から働きかけて対象を動かすという方針も共通しています。

lapillus bugの「生物らしさ」には、飛び回るという動きの他に、浮いている状態で粒が細かく身震いしていることも寄与しています。下図に示すように超音波ビームの中心に向かってポテンシャルエネルギーの谷が出来ており、エネルギーが低いほうが安定であるため粒はその谷へ向かって引き込まれます。

引き込まれた粒は空気との摩擦により徐々に速度を失い、谷のもっとも低い地点(超音波ビームの中心)、バネで例えると最終的には自然長で安定します。超音波ビームの移動や風の影響で粒が中心からずれると、中心に向かう力を受ける → 中心を勢いよく通り過ぎる → 中心に向かう逆向きの力を受ける → 中心を逆向きに勢いよく通り過ぎる → ・・・という振動が生じます。これが身震いの正体です。

この研究は情報処理学会エンタテインメントコンピューティング 論文賞を受賞しており、またSIGGRAPH Asia Art Gallery採択、文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品、Ars Electronica Center常設展示など、アート作品としても高い評価を受けています。

このlapillus bugは現在、2箇所で常設展示されています。近くまでお越しの際はぜひお立ち寄りください!

ICC OPEN SPACE 2014
HABILITATE #02「Physical Digital」
(展示期間 : 2014年9月23日~12月28日)
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2014/Openspace2014/Works/HABILITATE_j.html

Ars Electronica Center年間常設展
(展示期間 : 2014年9月~2015年8月)

ということで、今回は東京大学・河野氏と行っている共同研究について紹介しました。ご意見・ご要望などあれば、コメントやメール、ツイッターなどでお知らせいただけると反映するかもです。それではまた☆彡

これまでの連載:星貴之

超音波の話をしよう(3)「コロイドディスプレイ」
https://media.dmm-make.com/item/2413/

超音波の話をしよう(2)「集束超音波で遊んでみた」
https://media.dmm-make.com/item/2209/

超音波の話をしよう(1)「不触(さわらず)の誓い」
https://media.dmm-make.com/item/1577/

参考にしてくれた記事

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