今月のハイパー企画書(番外編)「再考:笑っていいとも!グランドフィナーレ」

今月のハイパー企画書(番外編)「再考:笑っていいとも!グランドフィナーレ」

よシまるシン
よシまるシン (ID143) 公認maker 2014/10/29
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記憶力が急激に落ちてきて困っている。
いよいよアルツなんとかかも知れない、ってそれも出てこないのだ。
この連載も前回までどんな内容をどんな文体で書いていたか思い出せないし、そもそも何の連載かも正直あまり覚えていない。これは非常事態である。
そこで今回は自分の記憶力を取り戻すべく、番外編としてリハビリ企画(そう、確か企画に関する連載だったはず……)を打ちたいと思う。「今年を振り返り、最も記憶に残っていることについてなるべく詳細に思い出しながら自分の意見を述べる」というのがそれだ。もしかすると連載の趣旨から離れてしまっているかも知れないが、今回は特別にお許しいただきたい!

(番外編)「再考:笑っていいとも!グランドフィナーレ ~結局誰が最強だったのか?~」

2014年と言えば、やはりこれだ。この件についてはしっかり記憶している。あの国民的番組のラストに起きた大事件を忘れろという方が無理というもの。ここはネットに一切頼らず、あくまで自分の記憶だけを総動員し、あの場で何が起きたのかを捉え直してみたいと思う。

「暗黙の了解」という幻想の崩壊

お昼の国民的長寿バラエティー番組「笑っていいとも!」が今年、ついに幕を下ろした。それまでに番組終了の噂や憶測は都市伝説的なものとして巷(リアル/ネット)に流れてはいたが、それが現実となったのだ。何月の出来事だったかは、忘れた……が、いや、そこは重要ではなく、そう!その日、まずお昼の放送で通常放送が最終回を迎え、その夜、特別番組としてグランドフィナーレが用意されていたのだ。事件はそこで起きた!
その日までのレギュラー陣に加え、グランドフィナーレには日本お笑い界の天下取り達である、歴代の大物レギュラー陣が総出演することが事前に知らされていた。しかし当然の共通認識として、彼らは各々時間が与えられ、順番に、バラバラに出演するものと思われた。
「まさかあのコンビとあのコンビが一緒に出るはずないよね」
それは国民の「暗黙の了解」であった。その2組のお笑いコンビとは勿論、ダンゴタンゴと透明人間だ。

口火を切る者、応える者

口火を切ったのはダンゴタンゴだ。番組の主役、ハモリ(正式な番組名は「森葉一義アワー 笑っていいとも!」である。言わずもがな、だが)とその長年の盟友、赤シャツさんとの2人トークがあまりに長く、しびれを切らしたダンゴタンゴがピッチャーキャッチャーと共に、突如乱入してきたのだ。場内のテンションが一気に上がった。全国のお茶の間もそうであったに違いない。そう、思い出した。あのとき赤シャツさんは確か、青いジャケットに白いシャツを着ていたと思う。やはり鮮烈な記憶は残る。私の記憶も徐々に甦りつつある気がする……。
誰よりもテンションが上がっていたのはその場にいた出演者達であったことは言うまでもない。そこでダンゴタンゴ松吉はのちに有名になるある発言をする。

「肌が荒れるから!!!」

番組視聴者ならば承知の通り、これは勿論「(どんでんずと共演なんてしたら、ストレスで)肌が荒れるから!!!」という意味である。これを楽屋で聞いたどんでんず石渡は、相方梨田に「行くぞ」と目で合図したという。さらに石渡は、透明人間の楽屋に駆け込み、太口と田口に「お前らも来い!」と声を掛けたのだ。そのときの石渡の形相はあたかも戦場に向かう特攻隊員のようであったとのちに(コンビ名忘れた)岡本が証言している。
そしてついに、どんでんずと透明人間(とあと1組は名前忘れた)がその場に登場する。

キーマン「武井壮」の存在

どんでんずとダンゴタンゴの共演は過去になかったわけではないが、とは言えこの両コンビが相見える機会は滅多にない。そして……、ついにあり得ないことが実現してしまった。
それまで、ダンゴタンゴと透明人間が同じ舞台に、また、同じテレビのフレーム内に立っているのを「観た」者はいなかった。なぜなら、その2組が共演したことがなかったから。そして勿論、透明人間の2人が「透明」だから。
私自身、最初は本当に透明人間が舞台にいるのか半信半疑であった。おそらく全視聴者がそうであったに違いない。しかしここに奇跡が起きる。その場に現レギュラーの武井壮がいたのだ! 透明な動物を倒す事が出来る「百獣の王」、それが武井壮である。彼がしっかりと透明人間の2人を見ているところを私は確かに見た。恐らく全視聴者も。ネットでは「キーマンは武井壮」というワードが踊った。その瞬間、ダンゴタンゴと透明人間の共演が全お茶の間に共有されたのだ。

結局誰が最強だったのか?

その日の事件の全容については以上の通りである。では、結局誰が最強だったのか?
出演者の中に突出した存在はいたのか?と問われれば、答えはノーであった。そしてそう感じたのは私だけではなかったはずだ。彼らは突然の出来事に戸惑いながら手探りで各自ポジションを把握し、空気を読みながら、あくまでもハモリの存在を尊重しつつ隙あらば斬らんとする一触即発の状況を全員で生み出し、それによりその状況自体がとてつもない熱量とある種の「不調和な調和」を生んでいた。その全体の圧力こそが見所だった。

グランドフィナーレにおける「じゃんけん」の力学

この世紀の大競演~お笑いモンスターズ総出演を構造的に分析すると、そこにはある力学が働いていたことがわかる。
それは「じゃんけん」の力学(三すくみの力学)である。
三者が互いに得意な相手と苦手な相手を一者ずつ持ち、それにより三者とも身動きが取れない状態。つまり、グーがチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つという関係である。この関係において絶対勝者は存在しない。同じことがグランドフィナーレでも各所起きていた。一例を挙げよう。
総出演したモンスターズの中で唯一「見えない」存在であった透明人間。彼らはその場で最も自由に場を攪乱できる能力を持っていた。しかし唯一、武井壮だけがその能力を封じることができた。実際あの場においても、彼の足下には数頭の透明な動物が倒れて死んでいた。ではやはり武井壮こそ真の「百獣の王」なのかと言えば、そうではなかった。モンスターズ(透明人間をはじめ、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男、半魚人etc...)の中に、メドゥーサがいたのだ。メドゥーサはその「目動作(めどうさ)」によりあらゆるものを石に変える能力を持つ。「百獣の王」といえど、メドゥーサには敵わない。ならばメドゥーサこそ最強なのかといえば、やはりそうではない。メドゥーサは透明人間を石にすることができないのだ。この関係こそ、三すくみである。

ただし、最期にその均衡は破られる。ハモリの「石にされてもいいかな~!?」という掛け声(なぜいきなりそのような掛け声をしたかは全く不明)とともに、メドゥーサは透明人間の2人以外の全てを石にして番組が終了した。武井壮が石になったことにより、それ以後、透明人間の2人は認識不能となった。また、メドゥーサの影響は視聴者にも及んだ。この放送は平均視聴率28.1%、瞬間最大視聴率33.4%を叩き出したが、その視聴者のほとんどが石になった。私の場合、幸いなことに脳の一部だけが石になった。
その後、テレビでメドゥーサを観たかどうか、覚えていない。

(ハイパーメディアコンサルタント 高城勲)

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