3 Dimentional Surface #3: Maiko Gubler

3 Dimentional Surface #3: Maiko Gubler

MASSAGE
MASSAGE (ID363) 公認maker 2014/10/31
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本連載「3 Dimentional Surface」では、ネットが日常に及ぼす影響にダイレクトに反応し、作品を作り出しているアーティストたちを取り上げてきました。第一回は、ネット上のスカルプチュアで既成の彫刻の概念を再定義しようとするManuel Fernández。二回目には、デジタルな質感や表層の価値への批評をフィジカルな領域で定着させようとするPhil Thompsonというアーティストを紹介しました。

さて、第3回目となる今回は、もう少しマージナルな領域にいるアーティストを取り上げたいと思います。彼女はアーティストであり、アートディレクターであるわけですが、この記事を書くために自身もアーティストであるヌケメ氏に彼女にインタビューして頂きました。インタビュー原文は以下で読むことができます。非常に興味深いインタビューになっていますので、本記事で彼女について興味を持った方はぜひ読んでもらえたらと嬉しいです。

http://themassage.jp/wwp/3-dimentional-surface-3-maiko-gubler/

第二回:Maiko Gubler

Maiko Gublerはスイス人と日本人の父の間に生まれ、スイスで育ったそうです。芸術との関係を工芸を学ぶことから始めた彼女は、その後、デジタル領域へとシフトします。その生い立ちに加え、工芸とデジタルを股がっているという意味でも彼女は2つのバックグラウンドを持っていることになります。後ほど紹介しますが、今回彼女が制作してくれた3Dのオブジェクトはそれが非常に色濃く反映された作品になっています。

はじめて彼女の作品を見たのはTumblrだったと思うのですが、当時は今ほどCGによる作品は多くはありませんでした。そんななか彼女の作品は、古びたものと思われていたカテゴリーで新しさを確立しようとする表現として、非常に際立って見えたことを覚えています。

「このシリーズを作った2009年の終わり頃には、3D作品の一般的な認識はまだかなり一元的なものでした。特殊効果であったり、商業的なイメージにこっそり使われていたりというのがほとんどだったんです。一方で、現実以上のリアリティーを表現する写真家や肉感的・魅惑的な3D作品は、よりリアルな感じを持っていました。」

カメラに類する考え方がCGソフトに取り込まれていることからも分かるように、コンピューターグラフィックスの進化は現実をリアルに再現する方向へ突き進んで来ました。それでもコンピューターグラフィックスに特有の可能性を追及することは、初期CGにおいて行なわれていたように思えます。インターネット以降、ここにきて再びその系統が蘇ろうとしているように見えるのはなぜでしょうか。

3DCGが生じさせる新しいリアリティ

彼女の代表的な作品「Gradient Bangles」は3DCG作品であり、3Dプリンターを用いて実体化された作品でもありますが、CGならではの美が出現した希有な作品だと思います。

「私は数学的というか計算式によって形成される3Gの表層にあらわれる色彩の勾配、傾きに魅了されてきました。ここには色と3次元のトポロジーがベースを形づくっています。物質性を保つためにも、あえて私はZCorp full colour 3D printerを利用していて、それは粗めの質感をわざと作り出すためなんです。」

Maikoは物質性という言葉を使っていますが、一方で彼女がオブジェクトの上に作り出している色彩は極めて非物質的な感じがします。質感という物質的な要素に、非物質的なプロパティを彼女は導入しようとしているかのようです。

CGにおいてはテキスチャーとオブジェクトは異なる技術で作られるので、そこにこの技術の特性が際立つ点があります。非物質性を物質化するというようなことが起き得るわけです。それをテクノロジーの不完全さの結果と言うこともできるでしょう。これが現すのは、不完全に再生されたリアリティにこそ新しいリアルが宿るのだということです。

「彫刻のイメージやヴァーチャルなモデル、具象的なオブジェクトの区切りをぼやけさせる表現については、それら全てを均一化させることでも、互いの表現ジャンルを対抗させようとしているわけでもありません。私が興味を抱いているのは、私たちのリアリティーの連結を明らかにすること、と同時にますます見えにくくなっているテクノロジーのほぐれた縫い目を再び明白なものにすることです。」

彼女が述べたような見通しが現れてきているのは、わたしたちの住む現実そのものが揺らいでいるからとも言えます。固体から液状のものへ、単一のものもから複数のものへ。わたしたちの現実がシフトしつつあるということです。

そのような現実の揺らぎを捕まえようとするアーティストは、インターネットを中心に、思い起こすかぎり多くいます。端的に言うとそれは、ネットにおいてリアリティの浸透現象が生じていることの現れであると感じます。この進路がまだ発展途上であるのか、一時的に生じている可能性なのかは分かりません。しかし、そうした方向性に向かう人々が多くいる事実は、先程述べた現象が多くの人々に共有されつつある今の状況を示唆しているように思えます。

最後に今回Maikoが制作してくれた3Dプリンターのオブジェクトを紹介したいと思います。とても奇妙な形をしたオブジェクトだったので、データが送られてきた時はびっくりしたのですが、彼女のディレクションにより松の葉を一葉差してみれば、不思議とプロダクトとして違和感ないものに仕上がっていることが分かりました。

Between a Rock and a Hard Place

「『Between a Rock and a Hard Place』は、イサム ノグチの3本足の花瓶に対するオマージュです。それは、生物形態に似たシュールレアリズムとアルカイックなセラミックに影響を受けた作品になったと思っています。私は“事物”の中にある国ごとの違い、身ぶりと数学、抽象と具象の衝突に関する原始的な素朴さを、デジタルで制作し表現することに興味を抱いていました。さきほどの“事物”とは絵画と言ってもいいですし、台座と言ってもいい。実用的な器やある集合体の表層と読み取ることもできると思います。」

さまざまなものの集合体であるからこそ、彼女の作る作品はどこか不安定に見えます。そこに機能を与えられたとたんわたしたちが安心感を見出してしまうのは、「それが何か」を無意識に固定しようとしてしているからです。だから中間の領域にあるものは、その相貌を動的に変化させ続けるのです。実際に動いているのはわたしたちの心であるところが面白いのですが、この作品に存在する奇妙さはそうした事態を非常によく現していると言えるのではないでしょうか。

Maiko Gubler http://maikogubler.com

文:庄野祐輔 翻訳:増川草介・藤田夏海・田口典子 3Dプリント撮影:ただ(ゆかい)

MASSAGEとは

様々な場所で個人が作り出しているコミュニティや、DIY文化。その深層を掘り進み、日々起きている出来事をアーカイブする雑誌/オンラインマガジン。世界中に散らばるさまざまな遊びの文化を紹介していきます。オンライン/オフライン、国境などあらゆる境目を超えて、自分独自の領域を見つけた個人が独自に編み出してきた生き残るための方法論や、そこに織り込まれた歴史の片鱗を見つけ出し、紹介していくことを目的としています。
http://themassage.jp/

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