#ニコニコ学会 β、シンガポールへ。Mini Maker Faire Singapore 2014

#ニコニコ学会 β、シンガポールへ。Mini Maker Faire Singapore 2014

7月の23-24にシンガポールMakerFaireで行われた、「ニコニコ学会β 研究してみたマッドネス」で、僕は座長をつとめました。

このために白衣とNecomimiを持ってきました。シンガポール、暑いので白衣は登壇が終わったらすぐ脱いだ..

ニコニコ学会βというのは江渡浩一郎(産総研)が委員長を務める組織で、研究機関・学会の活動をニコニコ生放送で伝え、「研究」ということを学会の外に広めることを目的にしています。僕は実行委員をとして、第1回から運営に関わっています。
昔は専門の研究機関だけで行われていた研究は、どんどんその垣根がなくなる方向に向かっていて、GigazineやEngadgetなどのメディアに、研究者の研究が載ることは多いし、DMM.Makeにも多くの研究者がMakerとして活動しています。MakerFaireに研究者が出展することも多いし、研究者同士でニコニコ技術部の話をしていることもあります。多くの人が参考にしている成果を出しているのだけど、本人はプライベートで何かを作っている、いわば「野生の研究者」も増えています。僕も研究機関に所属しているわけではないので(チームラボは、ラボを名乗ってもいるのですが…)「野生の研究者」という扱いです。

研究してみたマッドネス

「研究してみたマッドネス」というのは、ニコニコ学会βの試みの一つで、
・ふだん学会発表をやらない、野生の研究者が中心
・一人3分
 で研究内容を紹介するという試みです。
3分だと、一番面白いところを凝縮して話すしかないし、デモが中心になるので、すごくエンターテイメントに満ちた発表になり、専門外の人が見ても面白くなります。何より、自分が打ち込んでいることを話す人の姿は、それだけで何か感動的です。
僕は、自分が参加しているシンガポールMakerFaireの実行委員会にこのかたちを提案したところ、MakerFaireのopeningセッションとして、シンガポールで行うことになりました。「ニコニコ学会βのやりかたを海外に輸出した」というのは初めての試みだと思います。

 シンガポールMiniMakerFaireは出展70組ほどの小さいMakerFaierです。2012年大垣、2013年山口のフェアなどと同規模。一般公募だとプレゼン枠が埋まらない可能性があったので、運営委員会で発表者に声掛けを行い、17人のMakerが発表することになりました。どんな発表が並んだのか、ここに記載します。シンガポールでMakerと呼ばれる人たちがどんなことをしてるかのいい事例になると思います。

01. つくることは誰かと交流すること  Elda Maria Webb

Elda Maria Webb
– The Curious Design Network

https://www.youtube.com/watch?v=EDjoGzxdvbQ

Maker City Projectに参加しているEldaは、他人から興味を示してもらえることそのものが、Makerになるための第1歩だと語ります。
何かを作れば、それはそのまま誰かと交流することに繋がる。それぞれの違いを認識して交流することはとても楽しいことだ、さあMakeしましょう!と彼女は語ります。
資料:
http://www.slideshare.net/takasu/01-making-is-caring

02.経済的なことまで含めて持続可能にVeerappan

Veerappan
– Sustainable Living Lab

https://www.youtube.com/watch?v=-0KHpHxul3U

Sustainable Living Lab(以下SL2)は、シンガポールで活動中のグループで、「持続可能」である活動を作ることを研究しています。リサイクルとかエコロジーとかの話だけでなく、その活動でどうやって収入を得て、「ずっと活動していける状態」を作るかという試みです。
たとえば竹を使ってスマートホン用のホーンスピーカーを作ります。デザインのクオリティを上げれば、普通にオシャレなプロダクトとして売れるところまで持っていけます。
消防用のホースをリサイクルしてメモ帳をつくります。消防の博物館のノベルティーとしては売れると思います。
そうやって、経済的なことまで含めたサステイナビリティーを考えているのがSL2です。
 今僕はシンガポールの6つのMakerグループが統合したOneMakerGroup(以下OMG)のオフィスを間借りしてるのですが、SL2もOMGのメンバーです。
資料:
http://www.slideshare.net/takasu/02-sl2-presentationsmmf2014

サイト:
http://www.sl2square.org/

03.光るシンガポールのミニチュアNg Pan Yew

Ng Pan Yew
– Electronics hobbyist

https://www.youtube.com/watch?v=5eToyOxOxb0

シンガポールの有名な景色、ガーデンバイザベイとかマリーナベイサンズのアクリル模型にLEDを仕込み、音に連動して光るなどの作品を作っているアーティストです。Nangyang Technology Universityのエンジニアをしています。よく、シンガポールの路上で作品を撮影している姿を見ます。
Maker Faireでは起き上がりこぼしの作り方とか、複数のワークショップを行っていました。

本人撮影のMakerFaireレポート映像

https://www.youtube.com/watch?v=sA1Vg4U2zfw

04.オープンソース3Dプリンタ Yeo Shu Fen

Yeo Shu Fen
- Amaker

https://www.youtube.com/watch?v=v98sG8qSFQo

2つのARM CPU を使ったオープンソースの3Dプリンタは世界初、とのこと。箱からとりだしたらすぐ使える製品として販売している一方で、オープンソースハードウェアとしても公開しています。新しい設計だけあって、LCDスクリーンでの表示がわかりやすいのが魅力。

プレゼンで使われた、3DプリンタAmakerの紹介映像

https://www.youtube.com/watch?v=4G1LZhj41dY

05.少年少女のホビーブログ John O’Brien

John O’Brien
– Tinker tailor

https://www.youtube.com/watch?v=BKuUheeza9s

 レゴ・マインドストームのような、子供の学習に使えるロボット・電子回路などを研究している研究者。Tinker tailorという「少年少女のホビーブログ」を運営している。

スライド
http://www.slideshare.net/takasu/john-obrien-tinker-tailor

06.DIYオシャレプロダクトJoyce Lim

Joyce Lim
– Tatting

http://youtu.be/x6BLYthYUbM

Tattingという、編み物のようなものをDIYで作っているMakerです。日本で言うソープバスケットなどの「おかんアート」っぽさがあるのですが、作ってるのが若い人のせいか、かっこいい。他にもオリジナルのカード、文具など、DIYで作ったものを販売しています。日本だとデザフェスにいそうなタイプです。

サイト
http://uniqcreations4u.blogspot.sg/

07.バイオ3D プリンタF an Ming Wei

F an Ming Wei
– Bio 3D technology

http://youtu.be/tXguGTP61BY

シンガポールでは初のバイオ3Dプリンタ、とのこと。バイオ3Dプリンタということで、生物的な何かのチカラ(発酵とか光合成とか)で動くモノを想像してたのですが、実際はスポイトがコンピュータ制御で動く、みたいに見えました。ただ、正確にスポイトが動くとたしかに面白い実験ができそう。

08.超電導をシンガポールでNick Lewty – CQT

http://youtu.be/dn7LVw49F_k

こちらもシンガポール国立大学の研究者 Nick。彼は量子力学の専門家で、超電導、レーザーなどを研究しています。彼のブースでは、お台場の科学未来館でやっているような、液体窒素を使った超電導のショーが行われていました。

資料:
http://www.slideshare.net/takasu/09-nick-lewty

09.オタク研究者、ニコニコ学会βへ Yuichiro Katsumoto

Yuichiro Katsumoto
– NUS Cute Center

https://www.youtube.com/watch?v=MYvvp2hDmJQ


このサイトでも連載で、シンガポールのMaker事情について書いてくれている、勝本さんの発表。新しいオモチャを研究しています。
AMAGATANA,CATAPYといった、日本のメディア芸術祭などでも発表されていた作品はシンガポールのMakerを沸かせていました。
実際、聴衆からの拍手はこの日一番多かったような気がするし、語学力よりもわかりやすい資料を作ることとか、自分にとってイケそうな場所でプレゼンするとか、そういう試みがうまく結実したいいプレゼンだったと思います。

プレゼンに使った動画

http://youtu.be/rx4SETO28nE?list=UUqoL-nuTMsC61QUJxYYxQUA

10.スマートセイル Koh Sueda - SmartSail

https://www.youtube.com/watch?v=6TqeEksnsJA

勝本さんと同じくシンガポール国立大学で研究をしている末田さんの発表。ボートのセイルの状態をセンサーで可視化し、アシストする仕組みです。目に見えない風の状態を、セイルに取り付けたLEDの発光で見ることができます。

11. リサイクルとグッドデザイン Agatha Lee – Fabric hacker

http://youtu.be/eHIg08v3lf0

Agathaはファブリック、服や布に関心があるMakerです。Fabric hackerと紹介されています。彼女が取り組んでいるのはUpcycle、つまり続けていてもっと良いモノにしていく、改良です。古いTシャツを木ってオシャレなノースリーブに加工したり、材料として綱をつくることでコースターやサンダルを作ることなどを例に挙げています。
日本の「ファッションは更新できるのか?会議」
https://www.facebook.com/fashion.koushin
の人たちなどと同じ方向性なのではないかと思いますが、光に反応するネックレスをArduino Lilypadを使って作るなど、もう少しテクノロジーよりかも。
こないだ、マイクロソフトの公式ブログに、Surfaceを使っていることで取材されたりしていました。
http://blogs.technet.com/b/microsoft_citizenship_asia_pacific/archive/2014/09/30/fashion-hacker-creates-wearable-electronics-from-unwanted-materials.aspx

http://www.slideshare.net/takasu/12-agatha-smmf
http://www.fb.com/greenissuesbyagy

12. Tay Di-hong - Juggler

https://www.youtube.com/watch?v=XAyK7-wM1J8

 ジャグラーです。プレゼン時の説明がうまく聞き取れなかったのですが、たぶん自作の道具も使ってジャグリングをしてる?

13. テスラコイル!Gao Guang Yan – LoneOceans

 こちらもシンガポール国立大学の研究者で、ニコラ・テスラが送電用に開発し、現在はいろいろなMakerFaireで「電撃を飛ばす道具」として活用されているテスラコイルを多く作っています。

 シンガポールの科学未来館には、彼が作った巨大なテスラコイルが、数時間に一度電撃を行うショーを行っています。

スライド
http://www.slideshare.net/takasu/13-gao-guangyan3slides

14. 新しいポインティングデバイス、ZenGlove

ZenGlove Abishek Agarwal
- Zenglove

https://www.youtube.com/watch?v=W0Tx-btVFRw

僕は紹介時に思いっきり間違って「Robot Hand!」って書いてしまったのですが、任天堂のパワーグローブやLeap motionのような、ポインティングデバイスを作成しようとしているNanyang Technology Univercityの研究者です。
 このデモ動画を見ると、センサが満載された手袋で画面内のオブジェクトを操作している様子が窺えます。

https://www.youtube.com/watch?v=UXrlqe3NMNU

15. 酒造ハックJames Grieve - Homebrewer

https://www.youtube.com/watch?v=mklYGMQa7XU

シンガポールは個人規模での酒造は合法で、税関のサイトにルール(1回30L以下、とか)が書いてあります。
http://www.customs.gov.sg/insync/issue03/tips/tips.html
とはいえ、飲めるレベルのお酒を造るのはけっこう大変で、僕の友達も挑戦しては失敗したりしています。Jamesはどぶろく造りのクラブを作っていて、コンピュータで温度や攪拌をコントロールしておいしいお酒を造る活動をしています。彼もシンガポール国立大学の研究者です。

16. DIYレザークラフト-Xiaomi – Leathercraft

https://www.youtube.com/watch?v=6NLgULWFm98

中国の携帯メーカーと同じ綴りの小米(シャオミー)なのですが、まったく関係はなくて、DIYで革製品をつくっているMakerです。彼女の娘さんと一緒に登壇。

DIYがまさに立ち上がろうとしてる、シンガポールの出展者達

 もう大きいイベントになってしまった東京でのMakerFaireに比べて、イベントが毎回ムクムク大きくなっていくとき特有の熱気と、まだまだ牧歌的な雰囲気が同居する、すごく居心地のいいフェアでした。プールなども併設されている市民体育館での開催だったのも、いい意味でのリラックス感と、パブリックな感じを受けました。
出展物はさまざまで、ジャンルはアメリカのフェアな並みです。アメリカのMakerFaireは広義のDIYのイベントなので、椎茸の栽培やハチミツ作りなども対象になっています。
一方で、僕が見た中でもっとも手を動かさない国民達なので、サステイナブルリビングラボは「単にノコギリで切るだけ」というワークショップをやって、はじめてノコギリに触る大人達がおっかなびっくり木を切ったりしてました。

ノコギリワークショップ

シンガポールでのニコニコ学会β

海外で本格的なイベントディレクター業務やったのははじめてだったのですが、なかなか大変でした。前日のリハーサルからほぼ会場にいたのですが、
・どういうケーブルが何で必要だか、話が全然通っていない。
よくトラブルになる、
-PC音声とマイクをミックスできるか
-マイク複数本あるか
-出演者の集合時間、場所が告知されてるか
などが全然話が通じておらず、会場来てからずっと音声さんに張り付く必要があった

・当日は前日と音声さんが違う。

・リハーサル時間を何度か告知したのだけど、リハーサル時間に人が来ない。

・ステージ前に何人か発表者が集まりはじめても、集まりが遅いと、先にいた人たちが自己判断で帰ってしまう

・土壇場で発表者の入れ替え、削りなどを行ったのでスライドをじっくり見てる暇が無く、紹介を間違えた

・その中でのPPTでの資料直しやスライドめくりテストを行う必要がある

・だれも時間の3分を守らない。「何となく短く」ぐらいしか考えてなさそう

・登壇者が基本的に「自分のスライドチェック」しか関心がない

などなど、ふだんプレゼンやってない人も多く、トラブルは多く発生しました。
結局時間通りにセッションをはじめられて終えられて、聴衆もそれなりに多く参加していただき、発表もすごく面白かったので、トータルはいいセッションになったとおもいます。
同時に、「フォーマットをうまく守ってフォーマットの中で遊ぶ」みたいな、ニコニコ学会βでの「研究してみたマッドネス」が、案外「日本だからうまく行く」という側面もあったのだな、と思いました。日本だと、過去のニコニコ学会βを見た人が「研究してみたマッドネス」に応募してくるけど、シンガポールではもちろんそんなことはなく、ディレクションで一番汗をかいた第1回のニコニコ学会βを思い出したりもしました。
 ちょうどこの時間シンガポールのヴィヴィアン大臣も会場を見学していて、ステージを見ながら何度か足を止めたりしていました。

中央の白いシャツがギーク大臣ヴィヴィアン氏。自分の興味で来てるから、彼が止まるブースはどこも面白い


 ともあれ、「短い時間で多くの発表者を見ることができ、全体のいいイントロデュースになる」というセッションの目的は果たせたし、運営や聴衆からの反応もよかったので、来年も機会が与えられればぜひやりたいと思っています。
 来年もシンガポールMakerFaireの実行委員をやると思います。日本からの見学者、出展者、お手伝いしますのでぜひご連絡ください。

スケルトニクスのシンガポール出展の話がココに載ってますが、僕はこういうことをやるのが好きです。
https://media.dmm-make.com/item/2181/

マレーシアのMaker(ハードウェアスタートアップ)が作ったセグウェイもどき。

とにかく、MakerFaireとニコニコ学会βはたのしいのです!

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