FAB TALK(1)「組木スツール」

FAB TALK(1)「組木スツール」

FabLab Kamakura
FabLab Kamakura (ID239) 公認maker 2014/04/24
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ファブラボ鎌倉でつくられた作品やプロジェクトを通じて、FabLabの面白さや可能性をお伝えする「FAB TALK」(ファブトーク)。

KUMIKI STOOL

制作者: Misato Komano / Mio Kato
Maker Fair Tokyo 2013で開催されたコンテスト『展開図武道会』出展作品 : 小林茂賞 受賞
(写真提供:FabLab Kamakura)

はじめまして、FAB TALKのナビゲーターをつとめる渡辺ゆうかです。本連載の最初にご紹介する作品は、なんとも愛らしいスツールです。ある日、鎌倉に送りつけられた挑戦状によって、この作品が生まれました。送り主は、Maker Fair Tokyo 2013で開催された「展開図武道会~この椅子いいっすね!」の主催者。某漫画を彷彿とさせる駄洒落のような名前のコンテストに出展するためには、様々な規定がありました。まず、レーザーカッターや3Dプリンタなどのデジタル工作機械を使用し制作すること。そして素材も2.5mm厚のMDFサブロク板2枚以内と限定され、さらに加工法まで規定されていました。こうした制約は、出展者の制作意欲を想像以上にかき立ててくれるから不思議です。

ファブラボ鎌倉に送りつけられた挑戦状
(写真提供:FabLab Kamakura)

「展開図武道会~この椅子いいっすね!」 スツール作成条件

1.スツール作成の条件 【2013年度版】 (1)材料は2.5mm厚MDFサブロク板2枚以内、3Dプリントされた出力物 (2)接着剤やネジ等、その他の材料は使用禁止 (3)加工機材はレーザー加工機、CNCルーター、CNCミリングマシンおよび3Dプリンタに限る (4)塗装・やすりがけ仕上げは不可 (5)大人が座れるサイズ、強度であること (6)同等の機材と材料を揃えれば再現可能である (7)作成データを公開する — 展開図武道会開催概要より

出典- https://www.facebook.com/TenkaizuBudokai

組木解析図スタディー:渡辺ゆうか
(写真提供:FabLab Kamakura)

ファブラボ鎌倉メンバーである駒野美智さんは、「木材をやすること」に快感を覚えるうら若き乙女。そんな彼女が挑戦を受けて立つ事になりました。彼女の特技であるヤスリ掛けも、「塗装・やすりがけ仕上げは不可」という禁じ手になってしまっている。得意技を封じながらも、コンテスト出場を決意した彼女は、ファブラボ鎌倉のエンジニアである加藤未央さんの協力を得て、作品を完成させました。それが、日本の伝統的な木材加工の工法のひとつである組木技術を応用したKUMIKI STOOL(組木スツール)です。

下記のリンクから組木スツールデータをダウンロードすることができます
http://www.instructables.com/id/Wood-joinery-stoolkumiki-stool/

KUMIKI STOOL
(写真提供:FabLab Kamakura)

組木スツールには、大きな特徴が2点あります。1つは、立体パズルになっていること。椅子と玩具の機能を持ち合わせています。Maker Fair Tokyo 2013の審査会場で、たくさんの来場者に実際に作品を解体、再構築してもらいました。もうひとつのポイントは、接着剤の代わりに3Dプリンタで出力した留め具を制作し、2.5mmの薄い板材(MDF)をつなぎ合わせている点です。こうした、パッと見た目だけでは伝わりにくい通好みのこだわりポイントが評価され、小林茂賞を受賞することができました。

Maker Fair Tokyo 2013での審査会場での様子:
大人から子供まで多くの人が組木スツールを解体。バラバラにして再構築する小さな審査員

ファブラボ鎌倉が入居している「結の蔵」

この椅子を制作した背景には、ファブラボ鎌倉が入居している「結の蔵」という建物と深い関わりがあります。結の蔵は、もともと秋田県湯沢市で酒蔵として使用されていました。時代の変化によって、その役目を終えた酒蔵は取り壊される予定でした。しかしながら保存状態もよく、匠の木工技術が集積している建物を活用したいと、現在の蔵のオーナーが一念発起し蔵を譲り受けました。2004年、秋田から、柱などの構造体以外にも敷石や土壁もそのまま鎌倉へ移築し、再生した肝いりのリノベーション物件でもあります。蔵は継手、仕口などの技術がふんだんに使用されている木造建築。さらに漆喰の白壁や大扉、内部は土壁、漆塗りの建具など、現代では入手困難な素材ばかりです。私たちの普段の生活ではあまり接しない多くの素材で構成されている空間とも言えます。こうした強いメッセージを発する蔵と、日本で最初のファブラボをつくるため日本的な文化背景を持った物件を探しまわっていた私たちとが出会いました。2011年5月、東アジア初のファブラボ鎌倉をこの結の蔵に設立することができました。

2011年からファブラボ鎌倉が入居している「結の蔵」壱号室:外観
(写真提供:FabLab Kamakura)

2004年に鎌倉での工事がはじまり、2年かけて完成した : 組み立て途中の「結の蔵」
構造部分には釘を使用しない木工技術が多用されており、蔵全体が大きな組木パズルでもある
(写真提供:結の蔵オーナー)

>>『結の蔵、民家移築再生はこうしておこなわれた』(O設計室 / 結の蔵 弐号室
http://www.o-sekkei.com/works/photos/04_yuinokura/yuinokura.html)

ファブラボ鎌倉は慶応大学で教鞭をとる田中浩也さんと、現在ディレクターを務める渡辺ゆうからによって設立しています。田中さんも大学時代、京都で建築を学んでいました。そして、私も大学時代、建築を学び、朽ち果てた建物をリノベーションしている物件やプロジェクトをリサーチしていました。「建築」の中には、建物の設計やデザインのみならず、最新の技術から伝統技術、外装や内装、構造力学や風土に根付いた素材活用、場所の用途や人の流れなど地域活性やまちづくりを考えることが自然と含まれています。この蔵を拠点に活動することにより、蔵に来てくださる方々には、ファブラボ鎌倉が何を大切にし、何を描いているか、空間を通じて体感してもらえている気がします。

ファブラボって新しいけれど、でもどこか懐かしい。そんな「懐かしい未来」観をFAB TALKを通じてご紹介していければと思いますので、どうぞお楽しみ!!

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