「インタラクティブアートを始める人へ」OPEN A&T(1)

「インタラクティブアートを始める人へ」OPEN A&T(1)

中垣拳
中垣拳 (ID133) 公認maker 2014/04/24
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こんにちは。中垣拳と申します。慶應SFCでインタラクションデザインの研究をしています。本連載「OPEN A&T!」では、慶應SFCにおけるA&Tという活動を例にあげながらインタラクティブアート作品をつくるためのノウハウを解説していきます。初回の今回は、まずA&Tの活動と連載の主旨について簡単に説明します!

A&Tとは?

A&T( http://at.sfc.keio.ac.jp )は、慶應SFCにおいて新入生を対象にインタラクティブ作品の企画・制作・展示を行う短期集中型のワークショップで、2年生以上の学生のみで運営されている活動です。

この間まで高校生だった学生に対して、3ヶ月の実践的な作品制作を通じて、企画におけるアイデアを出す方法、制作におけるプログラミングや電子工作を用いたアイデアの実現方法、展示における魅力的に作品を見せる方法などを教えています。毎年、4月から始まり、濃密なアイデア出しのフィードバックや、プログラミング・電子工作の技術講習会も経て、6月末には「アート&テクノロジー東北」という展示会に出展しています。

この活動は、ものづくりを志す新入生にとって4年間の大学生活のスタートダッシュとし、優秀なアーティスト/デザイナ/研究者/エンジニアを生むことを目的としており、SFC内でも高い評価を受けています。

私自身もA&Tの初年度の参加者で、現在はSFCの修士課程の学生なのですが、この経験のおかげで、コンピュータヒューマンインタフェース系の研究者としてこれまで制作してきた作品やシステムなどで、国内外の学会(ACM SIGGRAPH、 ACM UIST等)での発表や、コンテスト(IVRCやメディア芸術祭等)での受賞の経歴があります。幸運なことに今年の9月には海外の大学院への進学も決まりました。私のこれまでの研究・作品はこちら( http://ken-nakagaki.com )ご覧いただけます。

この連載の主旨

2009年から始まったA&Tは、2014年で6年目の実施を迎えようとしています。この活動では、参加者専用のWebサイトで作品制作のプロセスやノウハウを蓄積しているのですが、これらを記事という形でオープンにできる部分はオープンにして、これからテクノロジーを用いた作品制作をはじめようとしている人に向けて、参考になれば、と思っています。

アイデア出しから制作、展示まで、作品づくりの一連のプロセスにおけるノウハウ集としていくので、IVRCなどのコンペに挑戦するような人はもちろん、インタラクションデザインを教える立場の皆さんとも、共有・議論できる内容になればとも考えています。

中には「そんなの当たり前でしょ!」「ちょっと違うんじゃない?」というような内容もあるかと思いますが、私自身の研究や作品制作とA&Tにおけるディレクションの経験に基づいてまとめていくつもりです。

新たな表現を作ろうとする広い範囲の方に応用可能なノウハウ集としていきたいです。A&Tのような活動が、慶應SFC以外の場所で開かれる期待を込めています。


というわけで、早速第1回目の作品とTIPSの紹介をします!

DoodleBox - A&T2009

こちらは、A&T2009の作品、DoodleBoxです。この作品はA&Tの初年度で、私が学部1年生のときにチームで制作した作品です。

https://vimeo.com/91264434

この作品は、“画面に写っている人の顔にイタズラ描きをしてください。” と言って、体験者を騙す作品です。体験者はPC上の誰かの顔への落書きを楽しんだあと、落書きをしていたはずの人の顔が自分の顔にすり替わっていることに気づき、驚きます。

しかけとしては、PCに内蔵されたインカメラによって落書き中に体験者の顔を認識し、落書きが終わったらその落書きが体験者の顔の上に描かれるようになっています。開発はProcessingを用いており、OpenCVの顔認識ライブラリを使用することで実現しています。

「落書きをする」という優位な立場にあったユーザに対して、最後に立場を逆転させ、驚きを生む作品です。実際の展示でも恥ずかしがる体験者が多く、たくさんの方に少々恥をかいて楽しんでもらえたようでした。



次にTIPSの紹介として、作品におけるアイデア出しの大切さについて説明します!

作品づくりはアイデアこそ命

作品づくりの一番最初のステップであるアイデア出しは、最も重要なプロセスです。アイデアは作品の土台であり、これをとことんこだわることで、作品自体の質を大きく向上させるでしょう。

最近だと「新しい技術を使って何か作ろう」というのをよく見かけます。もちろん技術を使ってどうやって作るか(How)も大切ですが、一番本質として考えられるべきなのは何を作るか(What)ということではないでしょうか? プログラミングや電子工作など、技術のハードルが下がってきた今こそ、Technology Drivenが陥りがちな「ありがちの壁」を如何にして越えるかが課題であり、技術に縛られないIdea Drivenこそが新たな視野を生み、作品の可能性を広げてくれるでしょう。

なにより、苦労の末ひらめいた渾身のアイデアは、自ずと自分のモチベーションを上げ、制作や展示がどれだけ大変であろうとも、そのままの勢いで駆け抜けられるエネルギーにもなります。 DoodleBoxも、技術を知らない状態で苦しみながら考えた結果生まれたアイデアでした。

アイデア出しをするうえで、特に新規性と説得力の2点に重点を置きます。

新規性

他の人と同じものを作ってもつまらないので、新しいことをしましょう! 新規性を見つけるには、その領域で何が新しいか・何が古いかを知っておかないといけません。最初は難しいかもしれませんが、普段からコンペや学会などをウォッチし、日々アンテナを張っておくなど、時間をかける必要があります。そういう意味でも、先行事例を知っているような人からフィードバックをもらうことは大切です

また、何かひらめいたら、まず検索するなどして、同じようなことをやっている人がいないかを調べましょう。似たようなものが先にあったとしても、そのアイデアを軸に自分ならどこにオリジナリティを出せるか、ということを考えるようにしてみるといいかもしれません。

説得力

ただ新しいからといって、良い作品にはなりません。何がおもしろいのか、なぜそのインタラクションが必要なのか、説得力のあるコンセプトやストーリーを持たせることが、鑑賞者の体験をデザインする上でとても重要です。誰もが共感できるポイントを突いて、コンセプトとして付与できるようになると、同じ作品も全く違って見えるでしょう。これを身につけることも最初は難しいかもしれませんが、これらは例えば幼少期の夢・遊び・経験や、日常生活の中にヒントが隠れているかもしれません。

もちろん説得力やコンセプトなどが無くても、純粋に圧巻させるような素晴らしい作品も多くありますが、説得力のあるコンセプトを深く考えることは、作品だけでなく作者自身の思考をも磨いてくれるはずです。

というわけで、今回はアイデアがどれだけ重要か、核となる部分を解説しました。A&Tのワークショップの中でもアイデア出しには2、3週間かけて、新入生に対して濃密にフィードバックを与えています。

次回はアイデア出しにおける、より細かなテクニックに焦点を当てていければと考えています。

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