3. たにぐち部長の美術部3D「第二話 部長、彫刻を作る(前編)」

3. たにぐち部長の美術部3D「第二話 部長、彫刻を作る(前編)」

谷口暁彦
谷口暁彦 (ID149) 公認maker 2014/12/11
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ここは埼玉のとある高校。そこに部員がたった2名の美術部がありました。
部長のたにぐちと、部員のひろしがなんとなく美術の勉強をしていきます。

第一話 部長、キャンバスを貼る 前編
第一話 部長、キャンバスを貼る 後編

登場人物

たにぐち部長
高校3年生。美術に興味が無かったのに急に美大進学を目指す。ちょっと理屈っぽい。

ひろし
高校2年生。チャラい。

第二話 部長、彫刻を作る(前編)

部長〜何読んでるんすか?

モホリ=ナジのニュー・ヴィジョンって本だよ

へー変わった名前の人ですねーどんな人なんですか?

モホリ=ナジは、バウハウスっていうモダンデザインの学校の先生だった人なんだ。
そこで彼が教えていた造形理論をまとめたのがこの本なんだ。

さっすが部長、ガリ勉っすねー。でもなんでそんな本読んでるんですか?

前回、先生が彫刻を作れって言っただろ。それで彫刻について調べているんだ。

なるほどー。でも彫刻勉強するならもっと別の本あるんじゃないすか?

そうなんだけど、意外とこの本面白いんだ。科学技術の発展と新しい技法との関係性について書いていて、今読むとけっこう予言的でびっくりするんだ。今で言うプロジェクション・マッピングについても言及されてたりもするんだよね。

へー。つかなんでプロジェクション・マッピングなんかについて書いてあるんですか?

この本では三章のヴォリューム(彫刻)ってところで彫刻について書いているんだけど、そこで彫刻の技法を段階的に説明してるんだ。第一段階は単に石などをブロック状に積むだけ。第二段階はそれを削り取って凹型の形態を作り出す段階。第三段階はさらに削り取って凹型が深くなり、向こう側まで貫通した形態の段階。第四段階はそれ自身の内でバランスのとれた均衡彫刻の段階、第五段階では物質の存在が希薄になり、運動による純粋で「実質的なヴォリューム」になるって書いているんだ。

最後の方何言ってるか分かんないんで、もう少し分かりやすく話してもらえます?

つまり、彫刻はどんどん非物質的になって、最終的には光の運動による純粋なヴォリュームになるだろうって言っているんだ。それって物質感が希薄になった彫刻が映像表現に近接していく感じだよね。そこでの例としてプロジェクション・マッピングのようなものも予言的に言及されてるんだ。

あーなるほどー、石を彫り進めたら物質が無くなって純粋な視覚とか光だけになっちゃったって感じですね。つか彫刻から映像って接続ヤバいっすね。

実感わきにくいし、この彫刻から映像へっていう接続の妥当性は怪しいところもあるけど、あえて、この流れから考えてみるっていうのも面白いと思うんだ。

なるほど〜プロジェクション・マッピングって最近流行ってますもんね!

いや、今日はプロジェクション・マッピングの話はしないよ、●●●●を●●●●●●のは●●●●●●だからね。

ちょっ... 何に対して怒っているんですか...

彫刻と映像

プロジェクション・マッピングとは違った方向で、映像を彫刻的に使っているアーティストがいるから、それらの作品をiPadで見ながら、彫刻/映像の可能性を考えてみよう。まずは、nate boyceっていうアーティストの作品だ。

うわ。アンソニー・カロの作品にモニター付いただけじゃないすか!

うん、まったくそうなんだ(笑)まさにカロのように金属のパーツを組み合わせて出来た構造に、液晶モニターがくっついてる。単純にモニターのスタンドのようになっている作品もあるし、純粋にモニターを構成要素として使っている作品もある。モニターの中に映し出された形態の不穏な感じとか、外の形との関係性とか面白いんだよね。画面の中に没入する感じと、画面の外側のリアルさの間でギクシャクする感じも面白い。

なるほど〜

次は、mark beasleyっていうアーティストの「WATERTABLE」って作品を見てみよう。

大きなタッチスクリーンに葉っぱが乗っていて、そこに扇風機の風があたっているシンプルな作品だ。タッチスクリーンではタッチされた部分で波紋が広がるよようなプログラムが動作していて、扇風機の風で葉っぱが揺れるとタッチスクリーンが反応して波紋が広がっていくんだ。

へ〜一見すごいチープだけど、ディスプレイの中の世界と、外の世界が葉っぱ1枚で繋がっているところが面白いっすね。

そうなんだ。さっきのnate boyceだとモニターの中の映像と、外側の彫刻っていう関係がやや唐突な印象があるけど、この作品では葉っぱがインターフェースになって接続されている感じがある。この感じをさらに展開した例で谷口暁彦っていうアーティストの作品を見せるよ。「思い過ごすものたち」っていう作品だ。

え、それって顧問の先生じゃ..

そうなんだ、先生の作品、すごい地味だけど、こうしてみると案外面白いと思うんだ。iPadにミネラルウォーターの水が落ちてきて文字をタイプしたり、吊るされたiPadが扇風機の風で揺れてて、写っているティッシュペーパーの映像も揺れている感じとか、画面の中と外の世界が何かのインターフェースで接続されている(ように見える)感じとか面白いよね。

なるほど、なんかモホリ・ナジが示唆していたような、映像的な光や運動による彫刻っていう問題とはちょっと違う感じですよね。映像っていっけん純粋な視覚だけのお化けみたいな感じだけど、実際にそれが目に見えるようになるために、モニターとかプロジェクターとかの装置が必ずあって、めっちゃ身体的なんすよね。その身体性を彫刻として愚直に使っている感じっすね。

そうなんだ。一方で、顧問の先生の作品で地磁気センサー(コンパス)が使われていたり、FaceTime(テレビ電話アプリ)が使われていて、センサーの入出力とか、ネットワークによる接続っていう目に見えない関係性が使われてる。モホリ・ナジが示唆した彫刻の非物質化の先に、そうした情報とかネットワークのような、もっと抽象的な素材が利用可能だとした上で、「彫刻」を考えてみるとけっこう面白いと思うんだ!

(うわーなんか大丈夫かな...)で、部長は今度どんな作品作るんですか?

それはね...

数日後...

ということでこんな彫刻作品を作ってみたんだ!

うわー(なんだこれ...)っていうかめっちゃでかいですね。

次回へ続く!

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