FAB AND CRAFT(5) ”ちょうどいい”を作りたい ワークショップの作り方

FAB AND CRAFT(5) ”ちょうどいい”を作りたい ワークショップの作り方

11月の末、「ローカルな素材を活かしたものづくりワークショップを開催してほしい」という、何とも素敵なお誘いをいただき、長崎の五島列島・新上五島町へと旅をしてきました。というわけで、偶然にも2回連続、ローカルな素材のお話です。
実はこの島へ行くのは生まれて初めて。長崎に行くのだって、そもそも修学旅行以来15年振り。東京からの移動は、飛行機、バス、最後は船。片道約6時間の道のりです。

島から海を臨む。曇っていても、美しい景色。

五島列島は、椿油を名産品とする土地で、島中、椿畑であろうとなかろうと、急な斜面のいたるところに立派な椿の木が生えています。手入れをするときに大小さまざまな椿の木材が出るのですが、今、新上五島町ではその椿材を材料とした新しい名産品づくりの取り組みが始まっています。今回私が島でのワークショップ開催のお誘いをいただけたのも、その活動の一環でした。

人よりずっと大きい椿の木。こんな木が島のあちこちに生えています。

畑でもなくても、椿、椿、椿。写真手前、立派な椿が並ぶ林です。(ツタがかぶっていて、人の手が入る畑ではないことが一目瞭然)

今回の旅のはじまりは、ちょうど1年ほど前、去年の冬に遡ります。カホンプロジェクトやTOKYO WOOD PICKなどで、国産間伐材活用に取り組む八崎篤さんとFabCafeで知り合い、「畑の手入れで出る椿の木材で、何か作ってみませんか?」と言っていただいたのがきっかけでした。
このお誘いをいただく以前から、私自身、レーザーカッターとクラフト的手作業を組み合わせ、市販の木材でジュエリーを作っていました。そしてちょうど「産地や素性の分かる材料を使ってみたいな…」と思いはじめていたタイミングでもありました。まさに渡りに舟。
嬉しくてさっそく作ったジュエリーを見た町の方が、今度は「島でアクセサリーワークショップしませんか?」と誘ってくださり、あっという間に今回の旅が決まりました。

椿の木で作ったジュエリー。椿の花をモチーフにしました。

ワークショップには、1年前から町で始まった名産品開発に向け木工技術を磨く活動に参加されているという方から、「工作なんて久しぶり」という方まで、約30名の地元のみなさんが来てくれました。こちらと参加者の皆さんが初対面なだけでなく、参加者も必ずしも知り合い同士ではないとのこと。「どうやって町の方に声をかけたんですか?」と伺うと、町の方は「回覧板です。町内放送してもよかったんですけど、そうすると100人くらい集まっちゃうので。」と笑っておられました。地域のつながりがあまり機能していない町で暮らしている身としては、まず率直に意外で、何だか新鮮な答えでした。

町の方々にご協力いただき、会場準備。何やらずいぶんと立派な場所を使わせていただけて恐縮…

目指せ! 予定不調和!

ワークショップ、いよいよスタート! たくさんの地元の方に参加していただきました。

当日。ワークショップは、八崎さんと私がそれぞれ担当する2部構成。
前半は八崎さんのパートで、「名産品を作るにあたり、上五島町のどんな良いところを発信していきたいか」を意識するための第一歩として、島での生活を「食べる」「働く」「楽しむ」をキーワードに改めてグループごとにざっくばらんに話し合い、書き出してもらいました。

「食べる」のキーワードでは、「マンボウを食べる」という話題が飛び出したり、「楽しむ」ではきれいな青い海や美しい教会の話になったり。

私が担当した後半のものづくりパートは、比較的自由度の高いプログラムで進めていきました。かたちが不揃いな椿の端材と紙やすり、そしてカラーペンやニス、椿油などの材料だけを予めこちらが用意して、あとは参加者自身で自由に椿材のパーツを選んだ上で、各自紙やすりで整えて仕上げ、組み合わせてブローチを制作してもらう、という内容です。
木工未経験の参加者も多いものの、今回は「新しい名産品を、島の方自身でデザインするために大切なこと」を伝える第一歩のワークショップ。参加者全員により主体性を持ってもらうために、私の指示通りに全て進めさせてしまうスタイルにはしたくなかった、というのが、このプログラムを組んだ一番の理由です。

細い端材や樹皮のついたままの板など、個性的な素材を町からご提供いただきました。それを加工して、大小いろいろなかたちの椿の木材を用意して持参。

特に考えたのは、
「参加してくれる方を信じて大きく余白をつくる」
「私から教えすぎずに、町に頼れる先輩をつくる」
この2つのポイントでした。

ひとつ目の「参加してくれる方を信じて大きく余白をつくる」は、プログラムの自由度を下げすぎないために意識した事柄でした。
主体性を求めるプログラムにした代わりに、ワークショップのはじめには、「まず、自分がどんなものを作りたいか意識的に考えてほしい」「意匠・安全性などあらゆる意味で、どんな人がどんな時に身に着けるかイメージしてほしい」、そして「試行錯誤をたくさんして、素敵なものを目指してあれこれ検討してほしい」この3点を伝えました。

ふたつ目の「私から教えすぎずに、町に頼れる先輩をつくる」は、私がずっと町に住んで工作やデザインのことを教え続けられる訳ではない状況で、木工を介して町の人同士が繋がるきっかけを作りたくて考えたポイントです。
「すでに木工の習得を目指して経験を積んでいる人たちが町にいる。」 この素敵な財産をより輝かせるために、ぜひ今回のワークショップでは、この方たちに先輩役になってもらいたい。そこでワークショップをはじめる前に、普段木工やってる方と木工なんて図工以来という方、それぞれに手を挙げてもらいました。そして、参加者がお互いに習熟度を把握し合えたところで、「分からないこと、やりたいことをお互いに伝え合い、アイディアを出し合ったり助け合ったりしてみてください」とお話しました。

今回のワークショップは、予定不調和が起こりやすい状況を意識的にデザインしていった、とも言えます。

いざ、試行錯誤をシェア。

「じゃあ、結局どんな作品が出来上がったの?」
ワークショップの最後には、32個のこんなに個性的な作品がずらりと並びました。

参加者各々の、創造性の賜物。丸っこくてかわいいものもあれば、シャープでありながら素朴なものもあり、表現力がとても豊かでした。

一番印象的だったことは、こちらが期待していた以上に、木工初心者も含めた参加者全員が手を動かすことを楽しみ、お互いに協力し合いながら「作りたいものを作る」ことで盛り上がってくれたことです。例えば、赤い丸の5つと黄色い丸1つで椿を表現した作品ですが、実はこちらでは丸いパーツを一切用意していきませんでした。ワークショップの中で木工初心者の方が「枝を輪切りにできたら、花が作れるのに…」と発想したのに対して、木工が得意な人がその場で「じゃあ工房で切ってきてあげるよ」と応じたことで完成しました。こうして各々の得意分野で互いの不得意を補い合い、次々と作品が生まれていて、充実した制作時間が流れていました。

今回完成した作品はもちろん習作であって、必ずしも今すぐ売れるものではないと思います。しかしながら、こういった木工を介した繋がりやコミュニケーションが小さくとも生まれる活動を続けることで、今後、木工製品作りの活動に参加する人が増えたり、活動自体の活性化につながっていくと思いますし、私自身もそのお手伝いをしていきたいと思っています。

ちなみに、このワークショップで使った椿のかけら、実はまだまだ手元に残っています。私自身でいろいろと習作&試作するのも楽しいのですが、もしこのワークショップの話を読んで「やってみたい!」と思われた方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。単純なように見えて、結構、楽しめると思いますよ。

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