0.1mmプラペーパーはメタルマスクの夢を見るか?
DMM.make AKIBAの新米テックスタッフです。
過去には電子部品の構造設計や自動車の搭載設計を行ってきました。
さらに昔はバイクの整備士や溶接工なんかもやっていたり。
.makeでは02_Designと05_PCBAが主な住処となりそうです。
メタルマスクもどきを作ろう
表面実装部品の半田付けは、基板のランドにはんだペーストを塗布し、その上へ部品を乗せ
リフロー炉などで加熱することで行います。
その半田を塗布する際に必要となるのがメタルマスクと呼ばれる道具。
SUSの薄板にランド形状に合わせた穴を空けたもので、上からスキージ(へら)ではんだペーストを撫で付け基板のランドに転写するためテンプレートのようなものです。
メタルマスクは実装部品や基板にあわせ作製する必要があり、通常専門の業者に発注します。
それなりにお金も時間もかかるため、急いで実装したいような時には結構困ってしまいます。
という訳で、手近なもので代用品を作ることが出来ないかチャレンジしてみました。
まずは材料選定
素材の条件は以下のとおり。
①フラックスやアルコールなどに対してある程度の耐性があること。
②厚み0.1mm程度で、引っ張っても千切れないくらいの強度があること。
③DMM.make AKIBAの機材で加工ができること。
④入手性がよいこと。
特に②の厚みは重要です。
厚みが増すとその分だけ塗布されるはんだ量が多くなるので穴を小さくする必要があるのですが
小さすぎる穴は上手くはんだペーストが抜けず実装トラブルにつながります。
小さい穴は加工も難しいので、出来るだけ本物と同じ0.1mm程度のものを使いたい。
この条件をすべて満足してくれそうなのがコチラ。
http://tamiya.com/japan/products/70208pla_paper/index.htm
模型屋さんならだいたい置いてます。この辺りだとヨドバシの模型コーナーで売っていました。
素材はポリスチレン。強度と耐薬品性がどの程度かは未知数ですが、まずは試してみましょう。
素材は決まった。 加工は何を使おうか
今回の実験で使うのは引き出しの奥に眠ってたDIMMのメモリ。
裏側に未使用のランドがあるのでここにチップを実装することが今回の目標です。
チップの端子ピッチは0.8mm、ランド幅は0.4mm。これにあわせたメタルマスクを起こすには
それなりに微細な加工が行える機材でないといけません。
となればやはりここはレーザーカッターの出番でしょう。実は本物のメタルマスクも金属用の
レーザーカッターで作っているものが多いです。残念ながらStudioのレーザーカッターで金属はカット出来ませんので全く同じとはいきませんが、プラペーパーマスク作製には十分です。
実際に作ってみよう
基板のランド寸法とチップの足のサイズから必要はんだ量を求め、ランドに対してのマスク開口率を計算し、そこからレーザー加工のデータを作成します。
今回はCADで作図しましたが、単純な形状ですのでAdobe Illustratorで作っても良かったかもしれません。
加工条件は厚紙のカット条件でトライ。
素材の問題か穴が小さいせいか、ちゃんと切れてない箇所が発生してしまいました。
レーザーのパワーを上げて対応したところ、設計より少々穴が大きくなってしまったので
カット条件やデータの作成にはもうすこしノウハウの蓄積が必要そうです。
実際に使ってみよう
基板の上にマスクをセット。
穴の向こうにランドが見えるように位置を合わせ、スキージではんだペーストをなでつけます。
ちなみにこのスキージはゴミ箱から拾ったABSの端材です。
そっとマスクを外すと、いい具合にはんだペーストがランドの上に乗っていました。
どうやら成功したみたいですね。
チップを乗せたらリフローでチン♪
しっかりはんだ付けされています。
この後も何度か使ってみましたが、そこそこ耐久性もあり少量の実装であれば問題なさそう。
さすがにSUS製と比べると扱いに気を使う点はありますが、試作レベルであれば十分使えるのではないかと思います。