MAKERS #1「exiii CEO 近藤玄大」

MAKERS #1「exiii CEO 近藤玄大」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2016/05/18
0

このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎)

https://www.youtube.com/watch?v=effwi8q7fc4

exiii(イクシー)は、「義手を付けることがかっこいい」という観点から作られた筋電義手を作る。筋電義手とは、手を失われた方が残された腕の筋肉の電気信号を介し直感的に操作できる義手。exiiiによる義手は、モーター数を最小限の6つにし、情報処理を自作の筋電センサーとスマートフォンのアプリで行ない、3Dプリンタでパーツを造形して組み立てるという、現代ならではのテクノロジーのアイデアを持ち込んだ。

また機能性だけでなく、既存の義手を覆すデザイン性の高さに、2013年にはGugen2013の大賞、ダイソンアワード2位、2015年にはグッドデザイン賞の金賞を受賞。そして、次世代モデル「HACKberry」の全デザインファイルとソースコードを、なんとオープンソース化するという冒険的な行動を取った。
https://github.com/exiii/HACKberry

DMM.make AKIBAで制作活動をする彼らのオフィスに伺い、義手によって未来を掴むexiiiの代表、近藤玄大に話を聞いた。

近藤玄大
exiii(イクシー)株式会社代表取締役社長。特定非営利活動法人Mission ARM Japan正会員。3Dプリンタやオープンソースを活用し、手のない人が直感的に操作できる電動義手の開発および普及に取り組む。2011年、東京大学工学系研究科修士課程修了。2009-2010年はカルフォルニア大学バークレー校に留学。2011年、ソニー株式会社に入社。ロボティクス研究および新規事業創出に従事したのち、2014年6月に退職。2014年10月より現職。

DMM.make AKIBA内にあるexiiiのオフィス。反対側にも席がふたつあり、4人が主に作業をしている。

――義手のデータをオープンソースで公開してから、他で作ろうとする方は増えましたか?

「ようやく盛り上がってきました。2015年5月末に公開して一年なんですが、約20カ国でコピーが生まれて、アメリカ、ヨーロッパはもちろんのこと東南アジアの方も興味を持っていますね。初めは単純にコピーしてプリントアウトするだけでしたが、オープンソースのコミュニティが出来上がって、少しアレンジするような例も出てきて、大人用のサイズのものを子供用に小さくした例も出ました。基本的には3Dプリンタで作っているんですけど、レーザーカッターで一枚板から切り出して作れないかとか」

――このデザインは3Dでないと作れない形なのですか?

「そうですね。3Dプリンタの良さを取り込めるようにしています。今まで製品を作るための金型では、構造に制約が出てくるので、3Dプリンタでは割と自由にデザインできました。今まではデザインに注力する義手がなく、肌色で手がないことを補うための義手だったんです。それとは違い、手がある/ないに関係なく、”ウェアラブルアイテムとして、ファッションとして楽しみたい”という方向性でデザインしたものなので、このコンセプト含めて新しかったのかなと思います

今は義手を作ろうとすると、都心の限られた病院でしか作れない。オープンソースにして日常生活で使えるようになったら、どんな田舎に住んでいても3Dプリンタとデータがあればその場で作れてしまうのは今ならではですね。義手に限らずハードウェア製品の開発/普及のプロセスを変えていきたい。

身体障害に限らずLGBTなどのマイノリティに対する理解というのがグローバル社会になってきて、いろんな観点から差別をなくしていこうというときに、障害者の人に福祉で生活を支えていこうとするだけでなく、いきいきと社会参加できる舞台が増えてきているのが世相だと思います」

――データを無料で配布していますが、ビジネスモデルの予定はありますか?

「あります。オープンソースの世界では、これまでにいろいろなビジネスがあったと思います。ひとつはオープンソースとして開発を加速させて、会社である程度整理してパッケージとして売ることです。義手を作りたい人は全部を自分で作るのは難しいので、プラモデルのようにキットとして販売を開始したんです。3Dプリンタは内蔵されている基盤まで作れないので、こっちで用意してあげて売るということです。義手として売ろうとすると手のない人しか対象にならないけれど、開発キットやロボットハンドとして見ると義手とは違う形で、裾野が広い商売ができると考えています」

――夢が広がる話ですね。

「そうですね。このモデルが成功すると面白い商品も出しやすいかなあと。作る側の心理としては面白いアイデアがあっても売れるのかという不安があって、なかなか商売に結びつかない。趣味で作ってメイカーフェアで満足するところ止まりだったのが、オープンソースにしてビジネスモデルが成り立てばこれからどんどん我々を真似して、エンジニアの人たちが義手以外でも面白いロボットだったり家電製品を出してくるかな、と期待しています。

SNSの助けも受けていて、義手の動画がバズったんですよね。新しい活動をしていたら世界に配信できるんです。SNSがない時代だと、テレビに報道されるのを待つしかなかったんですけれど、今は価値観に対して裁きを受けやすくなりましたね。こっちとしても判断しやすいですね」

オフィスの片隅には義手の試作品が大量に置かれる。今までに作った数はこれ以上あるそうだ。

――自分の想像していないアイデアが付加されるなど、オープンソースにしたことが要点なんですか?

「そうですね。”ものづくりの民主化”ってメイカームーブメントの文脈で言われるんですけれど、趣味で終わるはもったいないなと。やはり一人で作れることは限界があるんですよ。義手の制作は相互技なので、指の技術を持っているエンジニアなど、部分によって技術が違うんです。そこでオープンソース化することで、部分部分で改良していって常に進化していくことが可能になるんです。

これまでは大企業などの数万人規模の組織でないと複雑なものは作れなかったけれど、オープンソースとして公開することで、個人が参加しやすくなり、エンジニアとしても技術と名前が紐づくので報われますよね。僕は元々ソニーにいて、個人レベルでは優秀なエンジ二アさんはたくさんいたんですが、今の社会システムだとなかなかエンジニアの能力を最大限に発揮する場がなくて。どこかの大きな組織に所属しないとものが作れなかったところを、オープンソースコミュニティというゆるいコミュニティを作ることによって、個人のエンジニアが心から作りたいものを作れるような仕組みを作りたいなと」

――オープンソースなどで新しいムーヴメントなどで注目しているもはありますか?

「オープンソースは今年熱いですね。去年は3Dプリンタで義手を作ったということで注目されたんですが、一年過ぎるとそれが当たり前になって、世界中で似たことをする人が増えている。そういう意味では“オープンソースハードウェア”というのがひとつのキーワードとなっていますね。オープンソースも深い議論に入ってきていて、データを公開してハッピーなのはわかるけれど『本当にビジネスになるの?』『本当に技術的に大丈夫なの?』など厳しい疑問を投げ掛けられますし、僕たちの会社としてもお金を稼がなければいけない。そういう局面に来ています」

――オープンソースハードウェアで注目されている方はいますか?

「これまでの成功例として、ArduinoやlittleBitsなどの外身のない電子工作キットのプラットフォームがあります。電子工作がこれまで大変だったものを、モジュール化してオープンにして、そこからいろいろな亜種を作ったことは成功した例だと思うんです。

それから“ローカルモータス”というオープンソースで車を作るプロジェクトがアメリカであったり、潜水艦や望遠鏡などを作ったり、けっこうあるんです。”ウィボルバー”というイギリスベースの会社がオープンソースのプロジェクトのデータを集めて発信しています。”プレン”という会社も、卓上のヒューマノイドを作って全部データを公開していて。それぞれオープンソースに何かあると期待してチャレンジしていて、戦略はバラバラでどこが正解かはわかっていないので、ここ一年はその議論がホットですね」

――事務所となるDMM.make AKIBAではどういったことをされていますか?

「僕は代表として全体をまとめています。取材の対応や投資家さんに会ったり、いろいろな講演に呼んでもらいプレゼンテーションをしたり。他のメンバーはとにかく開発を進めてくれています。自分とエンジニア、デザイナー、プロモーション担当の4名と、たまにインターンが手伝いに来てくれます」

――会社は順調に回っている感じですか?

「いや、どうですかね。幸いに助成金を貰って助けられて、ここ一年やってこれましたけれど、今は正念場。オープンソースで描いている理想をどう実現していくかというフェーズですね」

――シェアオフィスであるDMM.make AKIBAの内部の方との交流はありますか?

「ありますよ。今日もOrphe(オルフェ)っていうスマートシューズのチームのシャツを着ていますけれど、大学のような環境ですね。一緒に昼飯を食べに行ったりして、他の会社が違う部室みたいな。オフィスで行われる月一回のミーティングイベントで、オープンソースの可能性と課題についてを喋りました。他のチームでオープンソースにチャレンジしているところは少ないんですが、共有すると参考になるかも知れないし、僕としても糸口が見いだせるかもしれない。

現在Orpheは量産に向けて動いていて、僕たちは量産できていないので近くで見ているといずれ自分たちが量産するときにハードルが下げられるかなとか、シェアオフィスで一緒に始められることは精神的に孤独じゃないっていうのもありますね。あと社長の立場でいうと、社長の悩みは社長しかわからないんですよね。そういう時に社長同士で飲みに行って傷を舐めあったり(笑)。他の会社は、同じ学校のバスケ部で大会があったら応援したりする感覚に近いですね」

DMM.make AKIBAから一言
我々がDMM.make AKIBAの立ち上げ準備をしていたすぐ隣で、まさに同じ空間で事業をスタートさせたexiiiのメンバー。0地点よりも前からAKIBAとともに歩んできたチームと言えます。AKIBAという場所、そしてそこに集うスタートアップのことをいつも真剣に大切に考えてくれる近藤さんのご活躍と、exiiiの限りない可能性に期待しています。(編集・境 理恵)

参考にしてくれた記事

記事が登録されていません。
この記事を参考にして、新しく記事を投稿しよう!

違反について