なかのひと #1 「テック技術顧問 阿部潔」

なかのひと #1 「テック技術顧問 阿部潔」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2016/05/25
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DMM.make AKIBAの『なかのひと』。

このコーナーでは、昼夜AKIBAでモノづくりする人々を陰から支えるスタッフの存在にスポットをあて、隠れたエピソードを交えご紹介!(文・杉山周二)

DMM.make AKIBA Studio(以下Studio)のテック技術顧問、阿部潔(あべ きよし)。65歳。

大手メーカー(ソニー)を33年間勤め上げ、現在Studioの技術顧問として、現場の若手に自らの経験に基づく技術と知見を惜しみなく伝承する日々を過ごす。Studioの守護神的存在である。

また、Studioで定期開催されているワークショップ『FRISK風ヘッドホンアンプを作ろう!』『真空管ヘッドフォンアンプをつくろう』を監修し、毎月ほぼ満席になるほどの盛況ぶりだ。

彼は一体、どんな人物なのか。
それを知るための手掛かりとなる、いくつかの項目――周囲の声、本人へのインタビューを通して分かった仕事へのこだわり、道具へのこだわり、少年時代までさかのぼる来歴など――をご紹介する。

周りの声

テックスタッフS
「はんだ付けが超絶速くて巧いですね。半世紀以上やっているとか」

テックスタッフY
「監修しているワークショップに相当思い入れがあるようです。道具にこだわりがありますね」

テックスタッフN
「ソニーに就職したきっかけが、電車の席で向かい合せた美女が広げていた新聞広告だったとか。その時の美女がいなかったら、いまの阿部さんは存在していなかったとか」

運営スタッフH
「FRISKの空ケースをいつもせびられています。でも、たまにお菓子を奢ってくれたり……」

プロデューサーS
「AKIBAで一番かわいい生き物です」

これら噂の真相を、紐解いていきたいと思う。

仕事へのこだわり

彼は『FRISK風ヘッドフォンアンプをつくろう』『真空管ヘッドフォンアンプをつくろう』など、人気ワークショップを手掛けている。例えば『FRISK風ヘッドフォンアンプ』は身の回りにあるものを使い、はんだ付けを学びながら、スマホからでも”いい音を聴ける”音響機器を作るワークショップだ。
別のイベントで作った『プリングルススピーカー』は、空になったポテトチップスの紙筒を使ったスピーカー。チープなようでいて、これがけっこういい音が鳴る。

その根本にあるのは、『別に大金をかけなくても、身近なモノを使った発想で、今の音楽生活を少しずついいものに変えることができる』という考え。
そう考えるようになったきっかけは、少年時代にさかのぼる。

少年時代

阿部は、いわゆる”ラジオ少年”。はんだ付けは10歳のころから。その道55年のベテラン中のベテランだ。小学4年生頃、ゲルマニウムダイオードを使ってラジオを自作するところから、トランジスタラジオの制作に目覚める。『こどもの科学』を読み漁って、色々な電子工作を学んだ。
阿部少年は中学に上がると、パタッと電子工作をやめてしまうか、アマチュア無線を始めるか、オーディオマニアになるかの三択に悩んだ。アマチュア無線は、設備を揃えるのに数十万円かかる高額な趣味。そこで阿部少年は必然的にオーディオマニアへの道を歩み始めた。

『大金をかけなくても、音楽環境を少しずついいものに変えられる』という考えは、こうした少年時代に培われたものであるようだ。

来歴

大人となった阿部青年は、大学教授の紹介で地方の小さな家電設計製造の会社に新卒で就職する。その後、ソニーへ転職(電車の席で向かい合せた美女が広げていた新聞広告がきっかけというのは事実)。オーディオコンボ設計3年を経て、8ビット時代のパソコン設計に携わる。

以後、IT業界に身を置いて、電気回路設計全般、環境監査、中国の工場指導などに従事。
組立てがうまく行かない製品の現場調整のため、米国のサプライヤーを駆け回ったり、問題の原因となるセンサーの製造元を訪ね、中国をはじめアジア各所に飛び回ったりなど、数多くの修羅場をくぐって半世紀以上を生き抜いてきた。

そんな阿部が、長年の経験で培われたカンから語ること。
「うまくいく仕事は図面や部品ひとつとっても、”いい気”が流れている」らしい。
逆に「よくない気」が流れている仕事――企業間の競争で、他社シェアを取るために、無理やり上げてきた二番煎じの企画(阿部いわく、でっち上げの企画)――は、結果うまく行かないことが多かったそうだ。

自分たちで「やってやろうぜ!」という気概に満ちた企画や製品は、いいものが出来上がる、と言う。まさに「自由闊達にして愉快なる理想工場」を地で行く含蓄に満ちた言葉といえるだろう。

たくさんの成功の陰には、色々な失敗談もある。話は尽きないが、それらの経験から得られた若手エンジニアへのアドバイスは、また別の機会に語るとしよう。

職人の道具

最後に、Studioテック技術顧問の阿部が長年愛用している仕事道具たちを紹介したい。

①「ホーザン精密ニッパ― N-55」(使用年数30年)
公差1/100mmの精度。切れ味が凄く良いため愛用している。
プリント基板へのはんだ付け後、細い銅線カットに用いる道具。

②「DER EE ポケットタイプデジタルテスタ MODEL DE-11」(使用年数8年)
秋月電子で、安い割に性能が良く、多機能のため選んだ一品(電流を測る機能はない)。
主に導通チェックに用いている。携帯するのに便利なのもポイントが高い。

③「富士通コンポーネント(株) カード式ノギス」
財布に入れられるノギス。ちょっとしたアイデア商品。
仕事の関係先から譲り受けたノベルティだが、いまや愛用している。

④「はんだごて ANTEX PRECISION MADE IN ENGLAND」 (使用年数40年)
当時の松下電器中央研究所の同僚に薦められて、当時の常盤商行秋葉原店で購入した逸品。
コテ先は太め。温度制御がついていない、シンプルな構造で故障の原因が少ない。
メーカーの長年のノウハウが光る、温度係数の設定が絶妙なヒーターだ。

モノづくりへの愛情は、道具を大切に使う姿勢にも顕れている。
これからも愛情をもって、AKIBAに集うエンジニアを導いてくれることだろう。

DMM.make AKIBAより一言
DMM.make AKIBAのグランドオープンと前後して、「こんな素晴らしい、エンジニアのための場所が出来るのなら、何でもしたい。自分の経験をすべて捧げる」と面接にやって来た阿部氏。子供のように目を輝かせながら、モノづくりへの果てしない愛情と電子回路がつまった小さなフリスクを見せてくれたことを思い出します。
今ではAKIBAになくてはならない存在として、会員さんやスタッフから頼りにされ、「AKIBAで一番かわいい生き物」として愛されています。
そんな阿部氏に会ってみたい方は、是非Studioのワークショップにご参加ください!
(編集・境 理恵)

DMM.make AKIBA Workshop
https://akiba.dmm-make.com/about/eventDetail/6

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