MAKERS #2「浅草ギ研 代表取締役 石井孝佳」

MAKERS #2「浅草ギ研 代表取締役 石井孝佳」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2016/06/15
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎)

浅草ギ研は2003年に創業した、ハードウェアの受託開発を行いながらホビー・ロボット用部品と特殊メイク用材料を販売する会社。浅草ギ研の「ギ」には、技術の「技」、義体の「義」という二重の意味が込められ、仕事以外ではSFなどに登場する人造人間のアンドロイドを作ろうと個人で奮闘している。代表取締役である石井孝佳さんに創業までの経緯から、最近制作して話題となったテレプレゼンス用のアンドロイド「Teleporter」の話を訊いた。

https://www.youtube.com/watch?v=6atFJDQTUB4&feature=youtu.be

発表会でのテレプレゼンス用アンドロイドのブース。ゴーグルをかぶっているユーザーの首の振りに、人形も同期するのがわかる

浅草ギ研 代表取締役 石井孝佳

1968年9月23日生まれ。どうしてもアンドロイドが作りたくて2003年にロボットと特殊メイクの会社「浅草ギ研」を設立。その後、初心を忘れて単なる受託ロボット開発会社に成り下がる。2014年にDMM.make AKIBAに入会。若いエンジニアの影響を受け、また、出会いもあり、2015年からアンドロイド作成を開始。現在、テレプレゼンスアンドロイド「Teleporter」の開発を行っている。

――まずは浅草ギ研のなりたちを聞かせてもらえますか?

ここに来るまでの経緯をお話しすると、会社勤めしながら個人の趣味でロボットを作っていたんです。2003年にアンドロイドの顔を作る本『自作ロボット入門―アニマトロニクス編』(九天社)を出して。その本の印税をきっかけに会社を作り、浅草ギ研は特殊メイクとアンドロイドの会社としてスタートしました。

アンドロイドを昔から作りたくて活動を始めたんです。最初は海外からパーツや特殊メイク材料を輸入して販売していたのですが、売上の比率が9対1でロボットの方が多くなったんです。その後、ロボットブームが来て、自社でロボットのパーツを開発して。それがけっこう売れたんです。

ただ、2008年のリーマン・ショックで物販が厳しくなって、受託開発を始めるようになりました。作業用ロボットからホビー用ロボットのキットなどいろいろ作っていて、最近はスマートフォン関連の連携装置も試作依頼があると受託で開発しています。ですから、ロボティクスからスマートフォン関連機器まで、なんでもワンストップで開発できます。特殊メイクの技術も持っていますので、アニマトロニクスといって生物に見えるロボットも作れます。

以前に作業をしていた千葉の事務所がかなり田舎で、鳥の鳴き声が聞こえてサーファーか漁師しかいない地域。長年そういうところで作業をしているとモチベーションが保てないんです。たまたまシェアオフィスを探していたところにDMM.make AKIBAの噂を聞いて、開設した2014年12月にすぐ入居しました。なので、初期の頃から在籍しているメンバーですね。

最初はガラガラで誰も居なかったのですが、今は見違えるようになりましたね。ひとりでやっていると、アンドロイドが作りたかったのに日々の業務に流されてしまって、夢を諦めていたというか、なんとなく何もやっていなかった。でもそんなところに、スタートアップの若い人たちが入ってきて、自分の作りたいものを作って発表しているを見て影響されました。それもあって、自分は昼間に通常業務をして夜はアンドロイドを作っています。ここでやっていると徐々に協力者も現れて、今では何人かの協力を得て開発しています。

――作られているアンドロイドを紹介していただけますか?

これは瞬間移動装置で、名前は「テレポーター」。本人をスキャンしたデータで本人と同じロボットを作り、インターネットで本人とつなぐテレプレゼンスロボットです。目にはカメラがあり、相手の目を見て会話ができるところがスカイプなどとは違います。基本的にはヘッドマウントディスプレイで接続するのですが、現在はPCやタブレットでも接続できるなど、バリエーションを増やして用途を模索しています。

操縦者とロボットが1対1でつながるだけではなく、人間1対ロボット多数、も可能で、たとえば、一人の教授が授業をすると、10クラスに配置した10体のロボットが一斉に授業をする、などができます。遠くにロボットを置くことにより、忙しい人にとっては文字通り瞬間に移動したような体験ができます。


ロボット頭部は、人の顔を3Dスキャンしてプリントしています。昔は型を作らなければいけなかったけれど、今はハンディのスキャナで簡単に3Dデータが取れて、造形師がいらずに簡単に出力できます。ヘッドマウントディスプレイのジャイロセンサーに合わせて首が動くので、喋っている相手と目線が合います。


――DMM.make AKIBAにいる方だとどういった方が協力されていますか?

ソフトウェアは、AKIBA会員のVR関連ベンチャー企業、ADAWARPに作ってもらっています。P2Pで画像が転送できてサーバがいらない、しかもほとんど切れないという、スカイプと同じようなソフトを独自で開発してもらいました。さらに操縦者の首のフリの具合を伝えて、その制御信号をロボットに伝えることができるソフトです。



ケースは3Dプリンタで作っていて、ここの10階にあるStudioで作っています。3Dプリンタの造形範囲が狭いので、分割したものをパテで塗りあわせて接着して。細かいところはテックスタッフ(※Studioの技術スタッフ)の方に協力してもらっているのですが、前職が試作屋さんなどの方が多いので、繋ぎ目が全く見えない仕上がりになります。塗装以外は全部、ここで作っていますね。


売るつもりはなかったんですが、色々な
展示会に出していたところ、注文が現在4体入りまして。そのうち一体は移動できるようにして欲しいという要望がありましたので、AKIBA会員の100円ロボット部の方が作っているキャタピラと組み合わせようと考えています。身振り手振りも必要だろうということになり、手はexiiiのオープンソースの義手を付ける予定です。

――DMM.make AKIBAにいて、他ではできない体験をしたなどありますか?

そうですね。他のFab施設やインキュベーションオフィスにも居たことがあるのですが、DMM.make AKIBAの場合は国外の方との交流も盛んにあるというところでしょうか。たとえば、共有スペースでロボットの調整をしていたら、それを見たDMMの海外担当の方が「UAEの展示会にそれ出してみない?」という話になり、実際に展示会に出展しました。実際にやってみるとコスト的にもそんなに負担にならないことがわかったし、カタコト英語でも伝わった。さらにロボットも売れて、意外と海外展開は敷居が低いのではと考えるようになりました。また、仲良くなった会員の方のご紹介で、7月にアメリカで行われる「J-Pop Summit」という展示会にも出ることに。

この施設には国内外のVIPが実はよく来ていて、普通の生活では会えない方とのコネクションができたりすることもありますね。10Fに無料で飲めるコーヒーがあるのですが、その前に外国人の方がいて入居希望者かなあと思い、この施設いいですよ、という話になって、入居費が3万円だけどコーヒーを300杯飲んだら元が取れるとか冗談を言ってたら某国の大使館の人だった、とか。先日は『MAKERS』著者のクリス・アンダーソンさんが来てましたね。

――テレプレゼンスロボットは個人のプライベートワークで、メインのお仕事はパーツの販売と受託だそうですが、受託ではどういったことをされていますか?

受託では、世間で発表されているロボットの孫請けをやったりしています。JIBOというKickstarterで3億円集めた有名なロボットに似たものを作りました。機能としては、音声認識機能が付いていて、「ビーフシチューのレシピを教えて」と言うと教えてくれるコミュニケーションロボットの括りです。AI機能もあって本人の好みを学習して、言われる前に言う機能などもあります。これには某大手携帯電話キャリアの音声認識エンジンが入っていて、ソフトウェアはクライアントが作り、ハードウェアをウチで開発しました。



他には、スマートフォンに刺して香水が出るというデバイス。このプロトタイプを僕が作ったんです。「iPhoneから香りを出したいんだけれど」というフワッとした依頼が来て、匂いの出し方の原理の考案から電子回路まで作りました。

――ここにいる時間が長いとお聞きしましたが、どういった生活ですか?

自宅が千葉で、通勤に2時間掛かるので通えないんですよね。秋葉原の近くにテレビも何もない寝るだけの部屋を借りて、週末に千葉に帰るパターンにしています。寝る以外はここで仕事をするしかないという態勢をとっていて、平日は朝8時に来て、夜の3時に帰ります。ここにいる人は、そういうスタイルの人が多いですね。他の人はスタートアップなので、いかに早くものを作って世の中に出すかということに取り組んでいて、ここ一年二年は寝ないで働いていち早くプロダクトを出したい、という人が多いです。やはり、いろんな人が居て情報がたくさん入ってくるのが一番のメリットですね。開発に必要な機材が揃っていて、テックスタッフさんに夜中でも質問出来ることも魅力です。

――アンドロイドを作りたくなったきっかけはなんですか?

いろいろありますけれど、漫画が大きいですね。手塚治虫の『鉄腕アトム』に始まって、『攻殻機動隊』。僕らが子供の頃はテレビで毎週アニメがやっていましたから。士郎正宗の作品はアニメじゃなくて漫画の方が好きですね。それとSFです。映画「ブレードランナー」の原作小説の「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」も好きですね。作者のフィリップ・K・ディックの作品はけっこう読みました。それとハヤカワ文庫は片っ端から(笑)。最近の小説では、J・P・ホーキンスの作品は宇宙系の話ですがスゴいですよ。漫画だと弐瓶勉の『バイオメガ』。アンドロイドが作中に出てきて、世界観を含めて面白いですね。

テレプレゼンスロボットのチラシ。世界的な展開を見据えたデザインとなっていて、海外からも反響が!

DMM.make AKIBAから一言
今回のインタビューを通して初めて、石井さんのアンドロイドに対する大きな情熱に触れ、ますます今後の展開から目が離せなくなりました。これからも想像の斜め上を駆け抜けて、我々をあっと言わせてください。ここにいる誰よりも長い時間をAKIBAで過ごしていると思われる石井さん。誰にでも気さくに声を掛けてくださるので、いつも石井さんを中心にコミュニケーションの輪が広がります。常に笑い声が絶えないAKIBAですが、その一端は石井さんの存在ではないでしょうか。そして「AKIBAのキューピッド(※自称)」の異名を持つ石井さんに独身であることが知られた女子は、事あるごとにお婿さん候補を探されてしまうというオソロシイ言い伝えがあるのでした…。(編集・境 理恵)

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