どうぐばこ#2 「Measurement(測定機器、環境試験機)編」

どうぐばこ#2 「Measurement(測定機器、環境試験機)編」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2016/11/30
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DMM.make AKIBAの『どうぐばこ』。

DMM.make AKIBAの10階にある「Studio」には、ハードウェア開発・試作に必要な最新の機材が揃っています。このコーナーでは、プロトタイピングを加速させる本格的なツールについて紹介をしていきます。(文・杉山周二)

DMM.make AKIBA 10F Studio内にある、Measurementという部屋をご存知ですか?そこには、環境試験機や測定機器類がずらり。デバイスの性能や耐久性を測るための機材が勢揃いしています。
日々世の中にないモノやサービスを生み出しているハードウェアスタートアップの中には、「まだ開発段階だから、性能耐久試験はまだいいや・・・」という人も多いと思います。

しかし侮るなかれ!部品ひとつをとっても、「量産時に採用できるものかどうか」予めテストしておかなければ、量産工程で思わぬ落とし穴に足を取られてしまうこともありますし、試作の初期で試験することで隠れた設計の欠陥を見つけ、早めに手を打つこともできます。
事前に「自分で実際に試験を見て、部品の評価基準を自分の中に持っておくこと」が本気のモノづくりには欠かせません。

また、自分で実際に試験を行うことは、「工場を視る目」を養います。
「何のために、どういった試験が必要で、どういう機材を使うのか」を知っておくと、ゆくゆく関わることになる量産・検品工場の「どこに着目して見学したり、話をしたりすればよいのか」が自ずと見えてくるのです。

ふだん何気なく手にしているデバイス。それも多種多様な試験という難関を突破して、今わたしたちの手へと渡っているものです。普段なかなか目にする機会がなく、とっつきにくい環境試験機や測定機器について、そのいくつかを実際のデモを交えてご紹介します!

法規制と規格について

スタートアップやベンチャーを含め、いかなる製造元・販売元も守らなければいけない法規制があります。日本国内では、電波法(いわゆる技適)やPL法(製造物責任法。事業者が、製造した物に対して責任を負う必要があることを定めた法律)が該当します。

次に、法律にはなっていないものの、法律に引用されて使用されることもある、「規格」があります。国際規格としてはISO規格やIEC規格など。日本の規格としては、JIS(国家規格のため、市場に流通する製品では守られていることが多い)などが挙げられます。

こうした規格の全てを紹介するのは困難ですので、Measurementにある装置のデモを交え、いくつかの試験規格についてご紹介します。

①シールドルーム+スペクトラムアナライザによる放射妨害波測定

【目的と規格】
「自分の作ったデバイスが発する電磁波が、他の機器に電磁的な影響を及ぼさないか?(放射妨害波と呼びます)」ということを測るための規格があります。米国ではFCC、日本国内では自主規制としてVCCIが存在します。工業用(VCCI Class A)と家庭用(VCCI ClassB)とで妨害許容値が違い、VCCI ClassBの方がより厳しい基準となっています。
参考:
FCCについて https://www.telec.or.jp/services/overseas/fcc.html
VCCIについて https://www.telec.or.jp/services/overseas/vcci.html
放射妨害波について http://www2.panasonic.co.jp/aec/emc/emission.html

【使用機材】
・シールドルーム
・スペクトラムアナライザ

【デモ】
ここでは試しに、昔懐かしのゲーム機から発生している放射妨害波(他の機器に影響を及ぼしうる電磁波)を測定してみます。

【デモの結果】
写真の折れ線の赤色が基準値で、緑色がゲーム機から発生している電磁波の値です。デモの様子を見てみると、緑色が赤色の基準を満たしているようです。
このように、シールドルームとスペクトラムアナライザを組み合わせることで、デバイスから放射される妨害波を測定し、規制の基準値を上回っていないかどうかを測ることができます。

(左上)どことなく見慣れたマークが並ぶアダプタ。中にはFCCのマークも記載されており、規格に適合していることを示している。
(右上)シールドルーム内左手に見えるのは広帯域受信アンテナ。同軸ケーブルでスペクトラムアナライザと接続している。右手に見えるのは動作状態の試験対象物。
(左下)スペクトラムアナライザ。画面に測定中の数値がリアルタイムで表示されている。
(右下)左側は分析結果が表示されたディスプレイ。試験対象デバイスの発生電磁波の数値(緑色の線)が、基準値(赤色の線)を下回っていることが確認された。

②恒温恒湿試験

【目的と規格】
新発売の製品が「耐久10年保証!」などと謳われているのを、不思議に思ったことはないですか?まだ使われ続けた実績がないのに、耐久年数を提示できるのは何故でしょう。
タイムリープではありません。その答えはズバリ「恒温恒湿試験」にあります!この試験に関連するのはIEC60068-2-14などの規格です。
長期間使用時における製品寿命や耐久度を短期間で評価するのが、この試験の目的です。この試験で見るべきポイントは、「外観劣化」はもちろん、消費電流や抵抗値が著しく増えてしまう「性能劣化」です。

【使用機材】
・恒温恒湿槽
「対象デバイスが、ある環境で数年間使われた状態」を短時間で再現できるのが、この恒温恒湿槽です。試験条件(温度、湿度、期間)を算出するための式があり、それに当てはめて計算します。この式を使うと、例えば下記のようになります。

≪温度25℃、湿度50%で5年間使用=温度45℃、湿度95%の環境で21.6時間放置≫

20時間強で、5年間と同等の加速劣化試験が行えるわけです。まさに『時をかける試験機』ですね!

【デモ】
上記のシミュレーションがちょうど IECで規定されている試験場所の「一般的な環境」なので、上記の設定で、試しに当施設のワークショップで作製できる「真空管アンプ」を恒温恒湿槽に閉じ込めてみます。果たしてどんな結果が出るのでしょうか・・・(緊張)

【デモの結果】
まずは性能比較です。動作状態の真空管アンプで、デモ前の電流値177mA程度に対し、デモ後も同じ177mA程度でした。全くと言っていいレベルで性能劣化していませんでした!
つぎに外観比較をします。筐体のステンレス、正面部のUV印字したアクリルともに変化はなく、品質の良いメッキが施された「飾りネジ」にも損傷は見られません。また内部を開けてみても、全く損傷は見られませんでした。(ちなみに基板は、コストパフォーマンスと耐熱性のいい材質(CEM-3)を採用しており、耐熱性の高い皮膜を使った電線を採用しているため、というちょっとした自慢を付け加えさせて下さいね)
このように、加速劣化試験を行うことで、その製品が一定の環境下で、きちんと耐久性のある部品を選んで採用していたかどうか、が明らかになってしまうわけです。

(左上)デバイス動作状況での試験前電圧測定。168mAを示している。試験後も全く同じ数値だった。
(右上)恒温恒湿槽の内部。槽内の温度湿度を上げる前段階から、試験対象物を中に入れておく。
(左下)今回の試験では、温度45℃、湿度95%の環境で21.6時間放置した。
(右下)デモの結果、内外共に全く損傷が観られなかった。もし部品選定において粗悪品を選んでしまうと、試験後の結果は散々なものに。たとえば基板では、紙フェノールのような材質だと割れや曲がりが発生することもある。電線も粗悪品だと、電線の被膜が伸縮したり被膜同士が癒着してしまうことがある。そのほかの部品も最悪の場合、抵抗が焦げたり、コンデンサの防爆弁が開いてしまうことも。

③サーモグラフィー試験

【目的と規格】
サーモグラフィー試験は、ISO 18436-7:2008 等で非破壊試験としての規格が存在します。具体的に何のために行うのかというと、温度の分布を確認し、デバイスの放熱が適正に行われる設計になっているかどうかを検証するためです。

【使用機材】
・サーモグラフィー
よくテレビの健康番組などで「運動前後のヒトの体温の変化」が青~黄色~赤の順で表示されているのを見たことがあると思います。これらの色が温度分布を表しており、ヒト同様にデバイスの温度分布を測るのが、このサーモグラフィーの役割です。

【デモ】
ここでも恒温恒湿試験と同様に、『真空管アンプ』を使ってデモを行ってみましょう。本体上部に真空管がとんがり帽子のように突出している所がかわいい『真空管アンプ』。このデザインの深~い理由が、このデモを通して分かります。

動作状態にして十数分放置した状態の対象物を、サーモグラフィーで捕らえます。部位ごとの温度が計測され、色や数値がディスプレイに表示されます。異常な熱溜まりや温度上昇がないかを確認することが出来ます。

【デモの結果】
一目瞭然ですが、筐体自体は青~黄色に分布している一方、真空管そのものは真っ赤になっています。もし、真空管が筐体の中に入っていたら、熱がこもって何らかの問題が起きそうですよね。放熱処理のためのデザイン、これが真空管が筐体上部に表出されている理由です。

(左)サーモグラフィーを適切な位置にセッティングして、試験対象物を捕捉する。
(右)赤く映った真空管本体が55.9℃、黄緑色に映ったアルミの筐体が37.3℃と温度に大きな差があることが判明。このことから真空管が表に突出しているのは、放熱処理のためであることが分かる。

④静電試験

【目的と規格】
今年も寒い冬がやってまいりました。そう、『静電気』の季節ですね。この時期ドアノブに触ると、「パチッ」と火花が飛んでびっくりなんてことも。これは、着衣が擦れて静電気が起き、ドアノブに触れた際放電する現象です。
もし、ドアノブでなく、電子機器(スマホやテレビ等でも)に静電気を帯びたユーザーが触れば、静電気が機器に放電し火花が出ます。一般に、冬場の着衣に帯電する電圧は1万ボルト程度以上と言われ、この時大きな電気エネルギーが放出されるため、電子機器が誤動作したり、最悪の場合は破損します。

試験規格には、通常使用されるケースを想定したものと、通常人が引き起こさないであろう万が一のケースを探るためのものがあり、前者のひとつにIEC61000-4-2があります。
参考: http://www.noiseken.co.jp/uploads/photos2/13.pdf

【使用機器】
・静電試験機
上記のような誤動作や破壊が起きないよう対策するには、対策の前後でデバイスの耐久力(以下、実力)を把握する必要があります。それを実現するのが、この「静電試験器」です。この機器では、各種規格(IEC等)で規定された試験条件で静電試験を行うことができます。この静電気に対するデバイスの耐性を含め、一般に「電磁感受性」と呼ばれます。
参考:http://www2.panasonic.co.jp/aec/emc/immunity.html

【デモ】
LEDを点滅させるソフトを書き込んだマイコンボードを用意しました。リセットすると、LEDの点滅は停止してしまいます。こちらに静電気発生ガンで静電気を当てるデモをしてみましょう。静電気の電圧設定を徐々に上げながら静電気ショックを与え続けると、ある時点からリセットがかかってしまいますが、はたして・・・?

(左上)静電ガンから静電気ショックを与えている様子
(右上)こちらはデモとは条件が異なるが、10000Vの静電ショックを1秒間に10回与える、という表示内容。
(左下)Lチカ基板に対し、5000Vの静電気ショックを与えるところから始め、誤動作が起きるまで1000Vずつ電圧を高めて試験していく。
(右下)10000Vに至る前に誤動作が起き、LEDが消灯した。

工場視察のポイント

最後に、「工場の検査部門を視る目」について少し触れておきます。工場を見学して評価する際は、以下のことに着目すると良いでしょう。
・こうした機材を何台持っているか?
・しっかりとした組織的な運用がなされているか?
 (会社 または 事業部ごとに品質管理体制がきちんと作られているか?)
・校正済の試験機を利用しているか?校正期限、年間の校正計画表も要チェック。

さいごに

さて、いかがでしたでしょうか?取り上げた機材や試験はほんの一例にすぎませんが、世の中に製品を出すにあたり、様々な法令順守や規格適合を行う必要があり、そのために様々な環境試験機や測定機器があります。そして試験の過程で、評価基準を満たしているものかの判断や、寿命などが導き出されるのです。

転ばぬ先の杖!量産時だけでなく、開発フェーズでも環境試験について意識しておくことが、ゆくゆく時間的なメリットを生み出します。
少しでも興味を持って頂いたら、ぜひDMM.make AKIBA Studio内のMeasurementについてテックスタッフにお尋ねください。お待ちしてます!

Measurementはもちろん、他にどんな機材があるのか実際に見てみたい!という方は、DMM.make AKIBAの見学ツアーにぜひご参加ください。お待ちしております。
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(編集・境 理恵)

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