MAKERS #8「koike. ファッションデザイナー小池優子」

MAKERS #8「koike. ファッションデザイナー小池優子」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2016/12/28
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・杉山周二)

デジタルファブリケーションによって今までに使われなかった素材をファッション作品に取り入れ、その斬新な見せ方で海外のコンテストやショーで高い評価を得ているデザイナーの小池優子。彼女のブランド「koike.」は、新しいテクノロジーありきではなく、脈々と続くファッションの歴史における技術と照らし合わせながら、表現のために必要となる新規技術を用いて制作する。国内外のファッション愛好家を魅了する彼女に制作意図を伺った。

<プロフィール>
小池優子/デザイナー
和歌山県生まれ。エスモードジャポン東京校卒業後、「koike.」を立ち上げる。2015年1月、国際コンペティション「REMIX2015」のファイナリストに選出。同年7月、国際コンペティション「ITS-International Talent Support 2015」において、「OTB Award」「Modateca Deanna Award」の2部門受賞。16年2月「LVMH Prize for Young Fashion Designers」にノミネート。DIESEL JAPAN 2016秋冬のカプセルコレクション「DIESEL JAPAN 30th by YUKO KOIKE」を販売。
https://koike.strikingly.com
http://yukokuro0901.tumblr.com/

ーー小池さんは、テクノロジーを用いた要素を取り入れたファッション作品を制作されていますが、まずは作品の特徴を教えていただけますか?

DMM.make AKIBAの施設を利用した作品では、レーザーカットしたアクリル板を取り入れたり、UVプリントしたレザーに伝統的な手法やニットの手法を組み合わせた洋服を作りました。以前は他の施設の方に作ってもらっていましたが、ここでは自分の手で加工出来ることがわかって自分で制作するようになりました。

当初はデジタルファブリケーションを取り入れた作品を作った事がなく、私には遠いものだと思っていました。コンテストに向けて、他の施設でレーザーカッターで加工したアクリル板でアクセサリーを作った時に、アクリル板に毛糸を編み込む手法に気付いて、もしかしたらアクセサリーだけでなく洋服にも転換できるのではと思い洋服にもアクリル板を編み込んだのがきっかけです。

例えば、通常のニットは着ると肩からストンと落ちる形状の洋服が多いのですが、袖にアクリル板をいれることによって立体的できらめく洋服を作れたらと思い、そういったところに技術を用いたら新しい見せ方ができるのでは?と考えて制作しました。

「REMIX2015」での写真

「REMIX2015」での写真

ーーこういった作品が評価されているんですね。これはどちらのコンテストに出展されたんですか?

これは2年前のイタリアのファッションコンテストで、ファッション誌『VOGUE』協賛の毛皮のコンテスト「REMIX2015」です。応募する人たちはそれぞれファッションの学校の卒業生や在学生の方です。私は在学中に作った作品を応募してファイナリスト約10人に残り、最終審査に参加しました。モデルさんが実際に着て歩くファッションショーでの審査があり、日本人と外国人のモデルでは身長も手の長さも全部違うので、どういう風に見えるのかを考えながらショーに挑んだ初めての経験でした。

「ITS-International Talent Support 2015」での写真

これもイタリアで、若手のファッションの登竜門コンテスト「ITS-International Talent Support 2015」で発表した洋服になります。今秋にコラボレーションしたディーゼルと出会うきっかけとなるコンテストでした。ディーゼルの親元であるOTBグループの「OTB Award」と、ニット界の権威のモダティカ・ディアーナさんの「Modateca Deanna Award」の2部門をいただいたんです。

これもファッションショー形式でした。この時も英語のプレゼンテーションがあったんですが、『イタリア版 VOGUE』のジャーナリストなど審査員が15人くらいいて、英語が喋れないのでとても緊張しました。

コンテストは3部門あって、ファッションの部門では日本人は私だけ。他のアクセサリーとアートワークの部門にも日本人がいました。ファイナリストに選出された10人は、世界のファッションスクールトップ校出身で、すごく洋服のレベルが高くて気後れしたときもありました。私はこの人たちと戦わなければいけないんだと思って、勝つためにはどうすればいいのかを考えてものづくりをした記憶があります。大舞台でした。

「LVMH Prize for Young Fashion Designers」での写真

ーー他にもコンテストに出展した作品で、特徴的なものはありましたか?

はい。ルイヴィトンが主催する、世界の1,000ブランド以上が応募する40歳以下のブランドが対象のコンテスト「LVMH Prize for Young Fashion Designers」に応募しました。注目若手ブランド23組のひとつとして、ノミネートいただきました。
以前は外注していましたが、この施設(DMM.make AKIBA)でUVプリンターを使えることがわかって、このコンテストではUVプリンターで花柄を出力したコートを制作しました。

LVMHのコンテストで印象深かったことでは、憧れのシャネルのデザイナーのカール・ラガーフェルドさんや、VOGUEの編集長のアナ・ウィンターさんに会えたことです。すごく貴重な体験で震えましたね。ファッションデザイナーの私には憧れの人たちなので。ミーハーですみません(笑)。

ーー難関にも関わらず23組に選出されたんですね。その秘訣はありますか?

制作中は夢中になってしまうんですが、出来る限り客観的に自分の作品を見ています。その中でも「今の空気感」をつかむことがファッションでは重要な要素で、自分なりの空気感と新しい発明をきちんと提案できているのかを考えています。あとは色々な素材の組み合わせですね。冷たい雰囲気のアクリル素材と暖かい素材の組み合わせなど、昔からある古い物だけでなく新しい物を取り入れることは自分の洋服ならではの作り方だと思います。

ーー約1年間に3回海外で活躍されましたが、どういった流れだったのでしょうか?

もともとエスモードジャポンというファッションの学校に通っていて、学校で紹介された国内の毛皮連盟主催のコンテストで上位の賞を貰って、海外のコンテストに出ることができたのがきっかけです。そもそも世界で戦いたかったこともあり、イタリアのコンテストとLVMHのコンテストは自分で応募しました。学校を卒業してからの1年間はコンテスト出品に注力していましたが、この3つのコンテストの成果は大きなものでした。

ーーでは、ディーゼルのコレクションについてお伺いしたいと思います。コンテスト用と一般に販売する洋服は違いますか?

まず価格が全然違いますね。コンテスト用は手の込んだ物になっていて、量産でなく一点物の洋服になります。だから価格が高くなってしまって、お問い合わせもいただいていますが、値段を言ったら引かれる状態で(笑)。

ーー今回制作を依頼されたディーゼルの作品が、初めて量産した作品という位置付けですか?

そうですね。量産して多くの点数を販売したものです。イタリアのディーゼルはファッションが大好きな芯の強い女性像がブランドイメージですが、私の作品はこれまで繊細さや可愛らしさを表現した女性像が評価されてきました。今回初めてコラボレーションして、ディーゼルと私のイメージの違いをどうすり合わせるかが難しい部分でしたね。ディーゼルの過去のコレクション、店舗で販売商品をたくさん見て、私らしくもありディーゼルに寄り添った商品を作れるように考えて進めました。

ーー作品全体で花柄を多用していますね。

元々、花をコンセプトに洋服を作る事が多くて。海外の方からは日本的ですごく鮮やかな色と言われています。今回は自分の好きな色だけではなく、ディーゼルに寄り添ったイメージの花柄を作り、黒をベースとした花柄を描きました。ちょうど私も落ち着いた色を使いたかったのでその時の気分的にピッタリで楽しかったです。

またブランド全体のイメージの中で、私が花を書く理由があります。私は和歌山に産まれて、母が実家の庭に美しい花を育てていました。また、大きな花を持って写真に写っていた祖母を見て、女性は花と共存したい感情があると感じました。そして花束は毎日持ち歩けないけれど、花束と一緒にいるような洋服を手がけたい。世代を超えた女性にそういった洋服を提案できたらと思います。

肩から肘にかけて、数個の金属ロゴが縫い合わされたジャケット

ーーディーゼルの作品ではテクノロジー的な要素はあるのですか?

先端テクノロジーはないですね。ただ、伝統技術の藍染めを使ったり京都の友禅作家さんとコラボレーションをしています。それとブランドロゴの金属パーツは、データを渡して日本の職人さんにいちから作ってもらったり。ディーゼルの既存のロゴパーツは、サイズが小さくて私のイメージと違ったので大きめの金属のロゴを洋服に取り込みました。

1年間コンテストをやってきて、たくさん課題がありました。これまでのコンテストで作った服は、アクリル板が重くて硬いんです。硬い素材をどう取り込むかは、直さなければと思ったところでした。同じことを繰り返さないように、量産品に金属を取り入れる際、痛くならないパーツを作りました。

ーーコンテストではブランドイメージを大きく打ち出すために豪華な作品を作って、そのエッセンスを大勢に届ける洋服に取りこむのですね。これだけインパクトがあればブランド名が覚えられますね。もともと海外に進出していく考えがありましたか?

そうですね。この一年間で海外の方々に名前を知ってもらえたことが大きいですね。私は元々海外のファッションウィークに来るような、ファッションを全身で楽しんでいる人たちを見るのが好きでした。そういう人たちに届く服を作りたいと思ったのがきっかけですので、海外は視野に入れています。

ーーどういった方に着てもらいたいというターゲットはありますか?

外見でなく内面のことですが、自分を持った凛とした女性に着て頂きたいと思っています。

ーー「koike.」ブランドを立ち上げて1年目ですが、全体のコンセプトをお聞かせいただけますか?

現在ブランドとして考えていることは、歴史を深く知って物や事など文化が衰退した理由を理解して、過去に発展する可能性のあった技術を見つめたものづくりがしたいということです。伝統的な技術を回復してリフレッシュさせたり、身近なものにしたいです。例えば19世紀から20世紀にかけて発展した、服飾に付随した文化としてのお茶や陶器など、発展したものと衰退したものについて考えています。

ーー歴史の衰退を見極めながら新しいテクノロジーを用いた服を作るということですか?

そうですね。そこにヒントがあると今感じています。今はなくなってしまったけれど、その当時必要とされていたものについて、なにかしらその理由がわかると新しいものに変換できたりします。例えば、ヴィンテージの洋服の中に今は使われていない技術があるんです。今の発展した社会で選ばれていない技術があって、そこに大事なことがあるはずです。そういった技術をしっかり見て、ものづくりに活かしていきたいと考えています。

ーーいつ頃からデジタルファブリケーションに興味を持たれたのですか?

デジタルファブリケーションを取り入れたきっかけは、エスモード在学時、コンテストに応募するための洋服にアクセサリーとして取り入れる素材を作ったことです。元を辿ると、骨董品屋さんで縁の周りに穴の開いたハート型の鉄のイヤリングをみつけて、穴が開いてるから編めるなと思って縁を編んでみたことでした。それがアクセサリーになり、洋服にも組み合わせるように発展していったかたちです。この時は今までに見たことのないものを作ってみたい意欲が強かったです。

それまで一切機械は使った事がなかったのですが、徐々に興味を持つようになりました。それ以前は例えば、二次加工のデータを作って入稿して生地に印刷するなど、伝統的な生地のファブリケーションをしていました。生地への印刷はUVプリンターを使う前から関心がありましたね。

ーーもともとファッションにおける技術に興味があって勉強していくうちに、新しいテクノロジーも取り入れていこうという流れなのですね。昔からの技術を勉強されたのは学生時代からですか?

学生時代、そういった企業に個人的に訪問していました。京都の染めのろうけつ染めなど、伝統的な手法に興味があって。自分の洋服には取り入れられないかもしれないけれど、体験すればそこから何か広がるものがあると思って、さまざまな所に行きました。

ーーまずは実際に体験されたんですね。デジタルファブリケーションでの上手くいかなかったつまずきの事例はありますか?

つまずいたというほどでもないですけど、焦がしてしまったり、プリントが上手くできなかったことはしょっちゅうで(笑)。ここのテックスタッフのみなさんにいつも助けてもらっているんです。

あとはデジタルではないんですが……今日着てるスカートの刺繍は、私の手描きの絵を刺繍にしたのですがなかなか上手く再現されない。刺繍工場に「色が多すぎる」「細かくできない」と言われて。自分たちで作れない場合や、依頼しても技術的に無理と言われる事があって、つまずくことはしょっちゅうです。でもあきらめません。

ーーそこで出来る範囲を摺り合わせていくのですね。DMM.make AKIBAはハードウェアスタートアップの方々が中心でファッションは異色な立ち位置ですが、出会いを聞かせて頂けますか?

znug designのデザイナー根津孝太さんと、exiiiのデザイナー小西哲哉さんのトークイベントに行ったのがきっかけです。「丁寧に細部までこだわり作られたモノには熱量が見える」という発言に感銘を受けて。全然違う分野だけれど、心を込めてものづくりをしている方々の言葉に共感する部分がありました。それから世界で一番を目指す方々のコミュニティに入りたいと思って「DMM.make SCHOLARSHIP」に応募しました。

ーーものづくりのコミュニティとしてのDMM.make AKIBAに入りたいと思われたのですね。ここに来られてどれくらい経って、どういった作業をされていますか?

約1年くらいです。ここでは10階のStudioの機材をよく利用して、夜通し作業した日もありました。12階のBaseではメディアの対応ですね。一緒にものづくりしている職人さんたちを呼んで打ち合わせをすることもあります。それだけで話が弾む(笑)。空間の広い所なので開けた状態で打ち合わせでき、色々な利用の仕方があるのでありがたいと思っています。

ーーでは最後に、今後チャレンジしたいことはありますか?

私自身のブランドで洋服を作ることだけでなく、今後展示会やファッションショーなどの空間作りもしていく予定です。そういった所でテクノロジーを駆使する方とご一緒できたらという思いは強いです。例えば、DMM.PLANETSはとても素敵でした。圧倒的に美しくて人が感動してしまう演出です。

現在は次のシーズンに向けて制作に入っている期間です。今月、チームを株式会社にしました。来年は洋服を量産して発表する予定です。作っている物は歴史や伝統を回復するような新鮮な作品になります。ライフスタイルやトレンドを提案するだけでなく、技術の結晶である洋服の可能性を追求して、世界を驚かせたいです。

DMM.make AKIBAから一言

DMM.make SCHOLARSHIPでは異色とも言える、「ファッションデザイナー」という肩書きの小池優子さん。この制度は基本的に、IoTを中心としたハードウェア開発などに取り組む若手を対象にしていますので、当然ながら、ファッションにデジタルファブリケーションを取り入れているというだけでは採択されません。
自分が戦うべき場所として最初から「世界」を見据えている視点と、圧倒的な個性を放ちながらも他者の感性に寄り添う美しさを秘めた作品群に光るものを感じた、というのが採択の主たる理由ですが、何より、創作に懸けるまっすぐな情熱と素朴な人柄に惹かれました。そんな彼女から生み出される美しいものたちは世界を魅了し、我々の期待を遥かに超えるスケールとスピードで飛躍を遂げ、やはりと思いながらも驚かされるばかりです。DMM.make AKIBAはこれからも、小池さんの活動に期待と注目を寄せていきたいと思います。(編集・境 理恵)

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