MAKERS #10「Dmet Products株式会社 代表取締役 楠太吾」―自分で作って自分で踊る、”こんなんあったら面白いな”を実現するメイカー

MAKERS #10「Dmet Products株式会社 代表取締役 楠太吾」―自分で作って自分で踊る、”こんなんあったら面白いな”を実現するメイカー

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2017/02/22
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・杉山周二)

手首に付けるガジェットを振ることでスマートフォンから音を鳴らすことができる、モーションセンシングデバイス「BeatMoovz(ビートムーヴズ)」。手掛けたのは、IoTのプロダクトメーカーとして画期的な製品を開発する「Dmet Products(ディーメット・プロダクツ)」。代表の楠太吾が学生時代にダンサーとして活躍した経験から着想を得たこのプロダクトは、約一年で製品化して海外展開にまで至った。今までにない製品の概要、そして軽快な活動の背景を伺った。

Dmet Products株式会社 代表取締役 楠太吾
立命館大学理工学研究科卒業。学生時代はダンスグループを組み、ダンスコンテスト「BIG BANG大阪」などで優勝。大手メーカーから転職し、Dmet Holdings株式会社(株式会社阪神メタリックス)に入社。同社内にてIoT系スタートアップ部門を立ち上げ、Dmet Products株式会社として分社化。モーションセンシングデバイスBeatMoovzを開発し、普及に専念する。
http://dmetproducts.co.jp/

https://www.youtube.com/watch?v=4GZTRHyVpn0

BeatMoovzの魅力がわかる動画を。シンプルで遊びの幅を広げる可能性を秘めています。「BeatMoovz short film vol.1」

ダンスとIoTが融合した製品

――まずはBeatMoovzがどういった製品なのか教えていただけますか?

左右の手首に装着して振ることで、スマホから音が鳴るガジェットです。コンセプトとしては、ダンサーがダンスを踊ることによって音楽を奏でるというもの。仕組みは、ガジェットのなかに加速度センサーが入っていて、Bluetoothの信号が飛んで音が鳴ります。2個セットで販売する予定で、初めて使う際はスマートフォンアプリとBluetoothでペアリングして同期させるだけです。

手首を振った際に鳴る音は、アプリ側で選べます。現在プロトタイプなので音の種類が50音しか選べないんですが、発売時には400音まで増やす予定です。今後はアプリを更新して機能も増やしていきたいです。

ちなみに初期の製品名は「BeatMoov」でしたが「z」が付いて、BeatMoovzになりました。商品自体が2個セットになっているのと、海外で商談した時に外国人は「ムーヴズ」の方が発音しやすいとアドバイスをもらって変更しました。

――制作面での苦労をお聞かせいただけますか?

こういった製品は、動かしてから音が鳴るまでのレイテンシー(音の反応の速さ)が重要なんです。あとは小型化で、コイン電池で動くようになったので筐体自体はかなり小さくなりました。電池は1日2時間使って2週間以上持ちますね。

――制作のきっかけをお聞かせいただけいただけますか?
 
もともと僕は大手企業で働いていましたが、自分で何か作りたいなと思い、自分の提案を通してくれるアクティブな会社に転職しました。そこでBeatMoovzの案を出したんです。ほんまに始めは「こんなんあったら面白いな」という思いつきだけで、世の中にまだないから作ったら面白そうってだけでスタートしたんです(笑)。ちなみに今の会社で制作しているのは、現状BeatMoovzだけです。

――現在、どういったイベントで使われていますか?

BeatMoovzはまだ販売前なので、イベントでの出展やディストリビューターを介して海外で記事が紹介されている状況です。最初に、筑波大学のテクノロジーと音楽がテーマの展示会「INNOVATION WORLD FESTA 2016 - J-wave」、去年はサンフランシスコの「Maker Faire」に出展しました。今よりもっと大きいプロトタイプの状態でしたが。それから海外のディストリビューターと組んで、ロンドンとドイツに出展しました。それもあって、今後はアメリカ、カナダ、イギリスなど主要国14カ国で販売することが決まっています。

そんな訳で、海外展開を加速させるために人材(英語喋れる方)を大募集です(笑)!!
興味のある方、こちらにお問い合わせください!→ http://dmetproducts.co.jp/#contact

https://www.youtube.com/watch?v=ppf6Q_oCthE

「BeatMoov スタートアップ系新商品 動作で音を鳴らすガジェット dance rap cypher SHOWCASE / 社会人舞句武闘会 × BRT 社会人ラップバトル MCバトル」

ディストリビューターを通して世界に

――反応がいいですね。BeatMoovzは同時に何人までの使用ができますか?

今のところ、スマホ1台にガジェットが7台まで繋がるのでチームプレイ可能です。この動画は、僕らが作ったビートにラッパーのラップが入ってくる使い方です。動画の途中で鳴る音が変わりますが、いくつかプリセットを設定していて、スマホを持っている人がアプリ上で音を変えてます。これはRakimというラッパーの有名な曲の音を割り当てて演奏してるんです。

――製品のリリースはいつ頃になりますか?

2017年の6月から7月に出荷の予定で進めています。ほぼ完成していて、あとは量産に対応したチップに変えたりする作業が残っています。いま海外のディストリビューターにめっちゃ急かされてるんですよ。僕らが期日に間に合わないと、シーズンのローンチに間に合わないそうで「はよくれ、はよくれ」ってやばいですよ(笑)。まず、おもちゃガジェットとしてトイ業界に展開してから、トイとエレクトロニックを網羅できるように流通させる予定です。

――ディストリビューターはどういったことをしてくれるんですか?

基本的にマーケティングとプロモーションです。僕らは製品とパッケージを作って、ディストリビューターに宣伝方法を決めてもらって、調整してブランディングの統括をしています。その分、宣伝費が高いのですが、巨大な流通網があるので、まぁごもっともかなと。ディストリビューター経由ならマスを狙えて数が出るんです。自分で宣伝するのは大変なのもあって。

――パッケージが英語ですが、日本での販売はいつですか?

まずは海外で流行ってから国内で販売するのが順番だと思ってます。日本は新しいものを受け入れることが難しい印象があって。新しいものに飛びつく人が少ない印象だったんですが、実際に海外に持っていくと新しいものに対する反応が日本とは全然違って本当に驚きました。

――ダンスを踊るダンサーと、踊るための音を鳴らすDJは役割が違いますよね。それを一緒にしたのは面白いと思いましたが、これはダンサー向けで作られたのですか?

メインのターゲットはダンサーですが、普通の楽器として、あるいはホビー商品として楽しんで広まってくれればと思っていて、まずはトイ業界にアプローチをしています。ダンサーに絞るとどうしても敷居が高くなってしまうので、広く受け入れられる枠組みにしました。ゆくゆくはプロ仕様にして、楽器が好きな人にも演奏に取り入れて楽しんでもらえる新しいインターフェイスを作りたいなと。

――プロバージョンは技術的にどういった面が変わりますか?

ソフト面がめっちゃ変わりますね。現状は単純にアプリで音を鳴らしているだけですが、MIDIで動かしたり、センサーの動きを細かくしたり。あと、映像も動かせるソフトを作っても面白いですね。

――いろいろな可能性がありそうですね。どういった店舗に置かれるのを想像されてますか?

パッケージは2パターンに分けて、子供向けの可愛いデザインと、電器屋さんに並ぶデザインを考えてますね。小学校の高学年から中学生までと20代、ふたつのエイジグループに分けることをディストリビューターと話してます。

――他にも新製品を考えていますか?

これに関連した製品を考えています。全然着手できてないけど構想だけいくつかあって、まだ秘密ですね(笑)。僕にとってBeatMoovzはスタートなんですよ。新しいジャンルの製品第一弾で、これにまつわるアイデアを今後間髪いれずに展開していけたら。そのためにまずはBeatMoovzを普及させたいと思っています。

https://youtu.be/f8sltmLPrIA

「BeatMoovz short film vol.0 prototype」

きっかけとなるダンスとの出会い

――では、遡って原点をお聞かせいただけますか。どういったきっかけでダンスを始めたのですか?

兄がダンスをやっていて、「お前もやれよ」と言われて。大学から始めたんですけど、やってみたら、なんかわからんけど面白いなと思って。兄と二人で一緒にコンテストに出ていました。今でも僕は学生時代に組んだチームでショーに出ています。

――どういったジャンルのダンスですか?

ロボットダンスの一種ですね。音楽のジャンルでいうと、オールドスクールという70〜80年代のヒップホップを流して踊ります。昔、学生の全国大会で2回優勝してます。各地で予選があって、200組くらい出場していました。その時に慣れ親しんだダンスを活かして、BeatMoovzを作ったという流れです。

――全国で優勝したんですね。そこまでハマった理由はなぜでしょう?

楽しかったからですね。当時はダンスしかしてなくて、全然勉強してなかった(笑)。BeatMoovzを作る時にいちから勉強し直して、ほんま死ぬかと思いましたね。毎晩泣きそうになってました(笑)。

アクティブな本社の姿勢

――では、Dmet Productsの母体となる会社のお話を聞かせて頂けますか。

本社は神戸にある阪神メタリックスという鉄鋼の商社で、鉄を仕入れて製造メーカー向けに小ロット販売していて、60年くらい続いています。

本社の河合社長が「未来永劫続いていく企業にするためには現在だけの事業だけではダメだ」というアクティブな考えの持ち主で。「若手が前に出て自分たちで何かを興していく社風や仕組みを作りたい」ということで、いろいろな事業を始めました。そのなかのひとつがDmet Productsです。他にはスペインのジュエリーブランドの部門もあり、日本に輸入して銀座に旗艦店を構えています。このような社風、環境はどこ探してもないと思います。本当に感謝しています。
[DmetHoldings]http://dmet.co.jp/

――新規事業の部署がいくつかあるんですね。他にもありますか?

他には、インドネシアで牧場を経営しています。鉄の仕事で行ったインドネシアで「牧場はめっちゃ需要あるで」という話になって。それから牧場で牛が着々と育って売れて、現地で鉄の仕事もしながら牧場も運営しています。このグループ会社の上藤社長も超絶アクティブでバイタリティの塊みたいな人です。行動力が本当にすごいです。あとは日本国内で農業だとか、何でもやってますね。

――それから楠さんはDMM.make AKIBAに入居したんですね。

そうですね。当初プロダクトを開発するために新規事業部として立ち上げて分社化して、2014年10月頃にDMM.make AKIBAがあるのを知って、社長に相談しました。ここは新しいものを作るには最適な場所ですね。相談に乗ってくれるし、横の繋がりができてありがたいです。新しいことに挑戦するのは、例えると闇のようじゃないですか。先が見えずに迷いますが、AKIBAではみなさんが話を聞いてくれるのでラッキーですよ(笑)。

――DMM.make AKIBAで、一緒に仕事をされる方はいますか?

DMM.make AKIBAにいるニノ・サイバーパル(NCP)という会社の皆さんと一緒にお仕事させて頂いています。NCPさんは自社製品開発もしながら、海外マーケティングにも非常に強いので、海外のディストリビューターと繋げていただき、海外で販売することになりました。1年前に始まったばかりのプロジェクトでディストリビューターと繋がりがない状態だったのに、そこから世界中とコネクションのあるエージェンシーと契約して、今世界中に広げようとしている状態です。そういう意味ですごい人たちが集まってる場所ですよね。

ドイツ、ロンドン、ニューヨークでの展示の様子

――DMM.make AKIBAではどういった作業をされていますか?

始めの一年弱は製品開発をしていて、チームルームや10階で作業をしてました。今は販売のフェーズに入ってきたので、どう売るか戦略を立てたり、量産の工場とやりとりをすることが増えましたね。

――現在チームには何人いらっしゃいますか?

今は4人です。僕が代表で、他はエンジニア2名とデザイナー。僕はプロジェクト全体を取りまとめていて、当初はプログラミングなどもしていましたが、現在はエンジニアさんにお任せしています。

――では、今後1年の展望はありますか?

とにかく数を出して売ることですね。今は4人しか居ないので、まずは体制を整えて、きちんと安定供給できる会社にして、新製品の開発も同時に行えるようにすることがここ1年の課題かな。ほんまにバタバタなので、今年の夏くらいから新しい製品の開発に着手するイメージです。

――サイクルが速いですね。

そうでないと経営が継続していかないですね。製品はいつか飽きられるので、どんどん産み出し続ける体制を作ることが大事だと思っていて。安定供給を可能にしつつ、次を産み出す舞台をちゃんと用意するのが今年の目標です。

DMM.make AKIBAから一言

関西の硬そうな名前の企業からTeamRoomに入居したいとお問い合わせがあり、社内ベンチャーでハードウェアスタートアップを立ち上げるというお話で、関西弁の明るい愉快なお兄さんがやってきました。それが太吾さんでした。最初の半年くらいは何を作っているのかさっぱり分からなかったのですが、ある日のイベントで太吾さんの切れ味鋭いダンスとともに披露されたのが、「BeatMoovz」のプロトタイプでした。
こんなプロダクトを開発してたんだ!そして太吾さん踊れるんだ!ということで2倍驚かされたのですが、今回のインタビューではさらに、プロトタイプの進化と戦略的に海外展開しているスピード感に驚かされました。関西弁の明るい愉快なお兄さんは、自分で作って自分で踊り、世界を相手にビジネスを仕掛ける凄い人だったようです・・・。ライトセーバーを構えながらTeamRoomから出てきたりすることは内緒にしておきますね。
取材当日はヨーロッパから戻ったばかりで時差ぼけだった太吾さん。お疲れのところ、素敵な笑顔をありがとうございました。(編集・境 理恵)

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