MAKERS #12「dotstudio株式会社 ものづくりアーティスト うこ」―人と機械を融合させ、技術の魅力を楽しく伝える作品を生み出し続ける若手メイカー

MAKERS #12「dotstudio株式会社 ものづくりアーティスト うこ」―人と機械を融合させ、技術の魅力を楽しく伝える作品を生み出し続ける若手メイカー

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2017/04/26
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・境理恵)

dotstudioは、IoTプロダクトの開発や販売、プロモーションを行うスタートアップ企業。代表のびすけを中心に、ものづくりに興味のある若手が集い、IoTに関するイベントを開催する。なかでもハードウェアエンジニアリングに長けているのが大学を卒業したばかりの「うこ」。IoTを身近に感じさせる作品を作り続ける若手エンジニアならではのフレッシュなものづくり観に迫った。

ものづくりアーティスト うこ
ハードウェアの試作からバックエンドシステム設計まで幅広く手がけるエンジニア。ヒトとテクノロジーの融和をモノづくりを通して表現することを目指し日々活動する。大学生としてバイオメカニクスを学んだ後に、dotstudio株式会社でさまざまなエンジニアリング業務に携わる。
https://dotstud.io/members/ukkz/
https://twitter.com/harmoniko
http://ukokoras.tumblr.com/

ツイートをLEDに表示してイベントを盛り上げるキャップ

――まずは最近作った作品を教えていただけますか?

昨日、自社サイトのブログで記事が公開された作品です。ギャル電というユニットとコラボして、帽子の上にLEDディスプレイが載った見栄えの良い「IoT派手イケディスプレーキャップ」を作って、渋谷の街に繰り出しました。

LEDの裏面にはArduinoが付いていて、Wi-Fiで繋がっているのでWeb経由で操作できます。新しく投稿された特定のハッシュタグのツイートを流せるので、イベントで使えます。例えば、dotstudioの代表が運営しているIoTのライトニングトークのイベントでは、「#IoTLT」と書き込まれたツイートがイベント中に投稿されるので、イベントに参加した方のツイートが帽子のLEDディスプレイにどんどん流れます。昨日オラクルさんの技術系イベントでお披露目しました。

――ギャル電さんは何を担当しましたか?

帽子にディスプレイをそのまま付けると無骨な感じになるので、ギャル電がキラキラしたデコレーションを付けてくれて、さらにそのことをギャルっぽい口調で記事を書いてくれました。エンジニアが書いていると思えないようなラフな雰囲気で書かれているのがいいんですよね。

コレーションを付けてくれて、さらにそのことをギャルっぽい口調で記事を書いてくれました。エンジニアが書いていると思えないようなラフな雰囲気で書かれているのがいいんですよね。

――ギャル電さんとどういった経緯で知り合いましたか?

ギャル電はメンバーが2人います。うち1人が電気電子工学科の大学生なのですが、その名の通りギャルなんです。その子がハッカソンに参加していた時に、のびすけさんを通じて知り合ったのが始まり。年齢が近いので話はしやすいですね。ただ、根が本当にギャルなので。この記事では「ギャル男にしてあげるから」って言われて、撮影前に一緒に原宿で買い物しました。ギャル男に変身させられましたが、僕はもともとギャル男じゃないので大変だった(笑)。

――作品の制作は大変でしたか?

大変でしたね。このディスプレイは海外製なので、文字を表示させるにあたって英数字しかフォントがありません。日本語のツイートを流すために自分でフォントを書き込んだのが苦労したところですね。ツイートで漢字が使われていたら、サーバーの方でひらがな、カタカナに変換する処理もしました。そのサーバー周りの処理は手伝ってもらったんです。わからないことも調べながら、なんとか作ることはできました。

――作品を見ると、おもしろ系が増えてますよね。

光り物系ですね(笑)。IoTを軸にしていますが、IoTを製品化するには規格統一することが難しいんです。ただ、人を楽しませるエンターテイメント的なIoTなら個人で作れますので、見ていて面白いIoTは成立していると思います。IoT製品を作っている会社は数多くありますが、dotstudioの魅力はギャルを取り入れたりする柔軟な姿勢を持っているところです。ネットを通じて、技術の楽しさをもっと一般層に知ってもらいたいです。

心臓の波形を音に変換して鳴らすウェアラブルデバイス

――では、他の作品も教えて頂けますか?

ウェアラブルなシンセサイザー「Cardiaction」という作品です。実際に着ることができるシンセサイザーで、縫い合わせた鍵盤をタップすると音が鳴る服です。女の子に着てもらいました。電子楽器は誰が弾いても同じ音ですが、ギターなどの生楽器は演奏者の感覚によって細かい調整ができます。そういった表現を電子楽器に応用できないかと思って、生体信号を電子音に取り込んで“人間を楽器にする”というコンセプトで考えた作品です。

楽器の音を録音して鍵盤に割り振って鳴らす、サンプリングシンセサイザーを参考にしています。そのサンプリングの音を実際の楽器ではなく、装着している人の心電図にしたものです。心電図の波形だけでは出音が物足りないので、服の電子回路部分で音を加工する処理をしています。それと、服のボタンがつまみになっていてパラメータ調整ができます。去年の「Maker Faire Tokyo」や、九州の「明星和楽」に出展して、たくさんの人に見ていただけました。

――作る際に何が大変でした?

型紙を描いて、布から縫うのが大変でした。ミシンも家庭用ではパワーが弱いので職業用のミシンを借りて作ったり、専門店に行って生地を選んで、通気性や強度を確認したりと大変でした。慣れない領域でしたが、調べて作るのは楽しかったです。

――女の子が着ていると、お客さんがなかなか鍵盤に触れられないですね。

見た目が光って音も鳴って体の動きと同調するので、鑑賞するには楽しいのですが、いろいろな人に着てもらうのは難しいですね。楽器は自分で演奏したいじゃないですか。でもこれを見てくださった明和電機の土佐社長から「こんなに触らせてくれない楽器はいままでなかった」と言われて、そこはかなり反省しています。僕はもともとギターとかベースを弾いていましたが、他人から触られたことがなかったので、思いつかなかったですね。

振った手の位置でボーカロイドを喋らせる楽器

https://youtu.be/_e8FIJ_puQ0

ボーカロイドをテルミンのように鳴らすプロダクト「Vocaleaper」です。テルミンは楽器本体に触れずに手を動かして音程と音量を調節しますが、これはキーボード上に手をかざすことで、母音と子音を掛け合わせた言葉をボーカロイドが発音します。演奏する仕草がテルミンに似ていますが、仕組みは異なります。

実際はデュアルカメラのLeap Motionが付いていて、カメラで手の位置を把握して三次元空間上で認識します。テルミンは普通に演奏すると、片手は音量、片手は音程で、一次元ずつの情報しか取れません。手は三次元空間上で自由に動かせ、左右両手を合わせると合計六次元あるので、楽器の表現にいろいろ情報を与えられないかと考えたものです。音程は上下、左右で子音母音を変えて、手の開き具合も使っています。シンセ界で有名な藤本健さんに取材されたりもしました。

――画面もご自分でお作りになったんですか?

自分で作りました。CGはJavaを簡単にしたProcessingという言語で全部作っています。Processingは初心者のアーティストが使う言語で、それほど複雑なことはできないんですが、見た目にサイバー感があって複雑なことをしているように見えます。考えずに手を動かすだけで音が鳴るので、音楽系の方より子供に人気があり、みんな楽しそうにしていました。

連続で長時間撮影を続けるタイムラプス(低速度撮影)カメラ

ラズベリーパイで携帯型のラプスカメラを作ったものです。これは旅行する際にどういった経路を辿ったのか知るためのもので、一定間隔で写真を撮って、バッテリーが半日くらい持ちます。これは見た目より実用性しか考えていません。

バッテリーはエネループ4本で、長持ちするように工夫しています。消費電力の低いタイプのラズベリーパイにして、OSの余計なサービスを止めてカスタムしました。たくさんのソフトが動くと電気を消費するので最小限のインストールにする工夫をし、稼働時間が12時間まで伸びました。撮っている時間よりも待機時間の方が長いので、待機電力を下げることが大事でした。

――そこまで理解されているんですね。

パソコンが好きで、OSも自分で作ろうと思ったことがありました。昔、趣味で組み込みをやっていた時に、リアルタイムOSの簡単なものは作れました。さすがに普通のパソコンに載せられるようなOSは作れなかったのですが、そのおかげである程度知識が付いて、いかに最小限でOSを動かすか、ということを考えられるようになりました。

――他にも作品をブログに公開していますよね。

ブログを始めたのが約4年前、大学1年のときです。情報を記録するために始めたんです。インターネットで情報を得て勉強しながら作っているので、自分も新たな知見を得たらインターネットに投稿して、それを探している人に知識を還元できたらと思っています。

――それを素直にできるのが、若い世代の感覚でいいですね。

いまは発表する機会が山ほどあるので、作り続ければそれなりに知名度は上がっていきますが、僕の場合、普段から設計図とか書かずにやってきたので、名前を全面に出すよりはネットで探して一人で困っている人を助けられた方がいいと素直に思っています。例えば、作りたいと思ったものが見た目重視なら設計図を書きますが、それがなければそのまま部品を買いに行って作り始めますね。とりあえず機能から先に作っているのが、全部共通しているものだと思っています。

――過去の作品は音楽系が多いですね。

音楽が好きなので。ギターで弾くアコースティックなやつとか、ロックでもジャカジャカドライヴかけるものからハードコアまで幅広く聴きますね。中学でギター、高校でベース、大学ではバンドでドラムをやっていました。

マイナーなミュージシャンが好きですが、メジャーではONE OK ROCK。海外ではGreen Day、SUM 41などメジャーなロックアーティストが好きです。国内は、中学の時に聴いてギターを始めるきっかけになった押尾コータローですね。アコースティックギター一本で、数人で奏でているかのように聴こえる、すごい技術なんですよ。

――今まで紹介したものは個人的な作品ですが、所属しているdotstudioではどういった活動をしていますか?

dotstudioの主軸はIoTです。IoTは技術が幅広くて難しそうですが、生活に浸透する技術と言われています。一般人に向けて、IoTと関連した電子技術やハードウェアに興味を持ってもらうためのサポートや、面白いことを仕掛けたりする会社ですね。また、一般の人や、ものづくりするメーカーさんに使ってもらいやすいIoT関連のプロダクトを作って販売しています。僕は主にものづくりを担当しています。dotstudioにいるメンバーの中で一番ハードウェアを触っているので、ハードウェアに関する問い合わせのサポートもしています。

――dotstudioで働くようになったきっかけは?

きっかけは、一年半前に開催された「HAPPY OUTSIDE BEAMS」という、アパレルメーカーのBEAMSの商材を使って面白いプロダクトを作るハッカソンに出たことです。初めての出たのに優勝してしまって。その時に作ったのが、パーカーの紐を上下させたり、チャックを開け閉めしたりすることで、接続しているアプリから流れる音楽にエフェクトを掛けることができるウェアラブルな音楽エフェクター「HAPPY OUTSIDE EFFECTOR」です。そのイベントの主催者側にdotstudio代表ののびすけさんがいて、「面白そうだから働いてみない」と声を掛けられました。

所属するdot studio代表のびすけさんとのツーショット。IoTに関するイベント「IoTLT」を主催

エンジニアの父親の英才教育によって育まれた感性

――初出場で優勝はすごいですね。もっと遡って、ものづくりを始めたきっかけは?

かなり遡るんですけど、ソフトウェアエンジニアの父親が趣味で電子工作をやっていて。小学校2年生の時、「自分もやりたい」と言ったら半田ごてを渡されました。それと、ゲームボーイが流行っていたときに親にねだったら「うちはゲームを買わない方針だけど、自分で作るなら認める」と言われたんです。まだ小学校低学年だったのですが、古いパソコンをもらって、C言語でマルバツゲームを最初に作った覚えがあります。そういう家庭環境でした。

――それ以降、大きな転機はありましたか?

大学に入って半年後から、dotstudioとは別の民間研究所に技術系のアシスタントとして所属していました。それまでは自分で地道に制作していましたが、研究用で使う機材を作るようになって技術が上がった感覚があります。実際に人に使ってもらうようなものを作り始めると、やはり違いますね。学生アシスタントだったので、先月大学を卒業したタイミングで辞めました。現在は、別の会社でその研究所のプロジェクトを続けています。dotstudioとそれぞれ、自分のやりたいことをやらせてもらえる環境があって、どちらも楽しいんです。

――DMM.make AKIBAに入るようになったきっかけは?

dotstudioのメンバーとして会員になりました。ものづくりができる場所なので、工具を借りて半田付けなどをしています。せっかく使わせてもらっているので、3Dプリンターは今後使いたいなと思っています。あと、ここで良かったことは、知り合いが増えていくこと。情報が行き交うところですので、AKIBAにいる人に顔を覚えてもらうと嬉しくなります。僕は大学時代、ほとんど研究所に通っていたので同世代の友達が少ないんです。その代わりエンジニアとかデベロッパーの方と大勢知り合えて、すごく優しくしてくれる方もいて楽しいです。

――今後の活動や目標はありますか?

僕は将来、エンジニアよりも人工知能の研究者になりたいと思っています。自分でものを作る研究者は少ないんですよね。僕は、エンジニア技術を持ち合わせた上で研究ができる人間を目指しています。誰にも作れないものを作りたいですね。

――今までの作品を見ると作風が多様ですが、これからの方向性はありますか?

今まで誰も作らなかったものですね。(前出の)「Vocaleaper」や「Cardiaction」などの作品には若干共通点がありますが、人と機械を融合させるものを作りたいと考えています。機械の冷たさと人の暖かさをあわせもった作品、人と機械が対話することで活きてくる作品。そういうものを作っていきたいです。技術で人をもっと良くする、機械を人に適用させてアートにする、最新の技術と機械を使って、誰も考えないようなことを、人に一番近いところでやりたいですね。

――では最後の質問ですが、今後活動はありますか?

今年の8月に行われる「Maker Faire Tokyo」に、自作楽器でライヴをおこなう「DIYミュージック」というコーナーが数年ぶりに復活します。間に合うかわかりませんが、自分で楽器を作って参加したいモチベーションが高まっています。個人で「DIYミュージック」に参加できなかったら、dotstudioとして出展しているブースにいると思いますので、ぜひお越しください!

DMM.make AKIBAから一言

DMM.make AKIBAのメディアパートナーであるdotstudioの代表のびすけさんにインタビューを申し込んだところ、それならば若手エンジニアの”うこ”でお願いします!とのことで、うこさんにお話をお伺いすることになりました。なるほど、のびすけさんイチオシも納得の人物像。ものづくりへの真っ直ぐな、それでいて既存の枠に囚われない自由な発想を持ち合わせた感性に、取材した大人たちはすっかり心洗われてしまいました・・・。

なお、のびすけさんにうこさんへのメッセージをお願いしたところ
「うこさんはdotstudioにおいてのものづくりの要です。周りの人がわくわくするようなものを作り続けて行って欲しいです。」
という大変落ち着いた感じのコメントを頂戴しましたので、「(自分のコメントが)つまらなすぎるかな...」という、のびすけさんの心の声とともに掲載します。いえ、うこさんへの愛に溢れたメッセージ、しかと受け止めましたよ!dotstudioですくすく育まれる、うこさんの今後のご活躍がとても楽しみです。(編集・境 理恵)

おまけ:未来に思いを馳せている(ように見える)うこさん。かわいいです。

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