MAKERS #15「株式会社HARMONIQUA 代表取締役 松山亮佑」―熱意あるものづくりのプロセスを共創

MAKERS #15「株式会社HARMONIQUA 代表取締役 松山亮佑」―熱意あるものづくりのプロセスを共創

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2017/07/26
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・境理恵)

ハードウェアスタートアップ企業には、創出したいプロダクトがある企業だけでなく、創出したいプロダクトをサポートする企業も存在する。株式会社HARMONIQUAでは、プロダクトの発案者に対してプロダクトマネジメントを行い、世に出たあとまでを支援している。その代表取締役である松山亮佑に、その独自の業態に行き着くまでの軌跡を伺った。

株式会社HARMONIQUA 代表取締役 松山亮佑(まつやま りょう)
同志社大学工学部卒、グロービス経営大学院卒。2013年、実家(大阪)のプラスチック工場を退社後、起業。DMM.make 3Dプリント事業および、DMM.make AKIBAの運営に参加。2017年社名を現社名に変更、初の社員・取締役加入。
http://harmoniqua.com/

まだ世に出ていない新しいプロダクトの製造をサポート

――株式会社HARMONIQUAは生産管理を専門とされていますが、どういった業務内容ですか?

プロダクト製造のマネジメントを中心に、プロダクトが世の中に出たあとのユーザー体験までをサポートします。プロダクトのアイディアを持っている人のサポートが多いですね。

現在の消費者は、プロダクトを使って楽しく生活できる「物語」に期待をしながら購入します。そこで、まずはプロダクトにストーリーを持たせられていないメーカーに対して、生産者の思いや社会性を込められるような製造のお手伝いをしたり、また、販売後のコミュニケーションなどを通じたユーザー体験まで気を配り、物語性を持たせます。

それから、設計・製造・管理です。原価計算から始まって、販売価格の決定、仕様書の作成、サプライヤー選定、品質管理、法律適用など多岐に渡ります。そして小売店に出し、ユーザーが幸せに使うまでをサポートします。買った後の経験も含めて世に出たプロダクトの責任を持つことが、これからの製造業がユーザーに対して果たすべき責任だと思うので。

高度なノウハウが必要となる場合は、その專門のプレイヤーと一緒に取り組みます。エンジニアやデザイナーなど、仕事のネットワークを広く構築しているので、そのコミュニケーションの管理も私たちの役割ですね。

――こういう業態はあまり見かけませんが、いままでにありましたか?

品質だけでなく、流通や値付け等まで支援しているプレイヤーは少ないのではないかと思います。なぜこういった仕事ができるようになったかというと、DMM.make AKIBAのような場所ができたからです。それまでの製造業はピラミッド型で自由なプレイヤーが少なく、例えば金型の設計だけ、電気回路の設計だけ外部に出すことは非常に難しかったです。その生態系から抜け出す人が増えて、今では自由に協業して仕事ができるようになりました。例えるならデザイン事務所にデザイン業務だけ外注するような事が、機械や電気回路、生産管理工程においても可能になったわけですね。

――その変化を実感されたのはいつ頃からですか?

僕は以前、実家のプラスチックの工場で働いていて、そこでは限られた人間関係しかありませんでしたが、その時、プロダクトデザイナーの根津孝太さん(znug design)と仕事をする機会がありました。根津さんは当時の自分にとって雲の上の存在でしたが、その時からとてもフランクに接してくださって、自由にものづくりをする人と出会って雷が落ちたような衝撃を受けました。

――では、プロダクトをつくりたいと考えている方とどう出会っていますか?

今のところはまだ知り合いのみです。途中で投げ出したりしない信頼関係のある方や、コミュニティで基盤を持っている方が中心です。何かをつくりたい方は多いのですが、最後までやり通せるかは全く別です。どうしてもやりたいアイディアがあって、持ち出しでもいいからやってみたいというくらいの気持ちがなくては、時間もお金も手間もかかるものづくりを最後までやり遂げる事は出来ません。逆を言うと、それさえあれば、技術的な壁や法律、流通業者、サプライヤー集めなど、必要なことを私たちが全部引き受けるから、あなたにしかできないことをしてくださいという役割分担で進行します。

――アイディアを持っている方は、プロダクト開発のどこまで関わりますか?

基本的には本人の主導で動いてもらい、最初から最後まで関わってもらいます。提示されたビジョンに従ってディレクションしてもらい、僕らが足りない部分を埋めます。その際、熱意は重要で、頭だけで考えていても何も生まれないしプロセスも進まなくなります。

ですので、信頼ベースの関係を作っていますね。本人がいるからこそ成り立つ信頼関係があると余計なコミュニケーションが省けます。それがお金だけの関係になると、みんな梯子を外されないようにふるまうことに必死で話が進まなくなります。熱量と志のある人がいると不義理しない信頼関係が生まれてリスクが取りやすいんです。そのような人を支援するのが楽しくて、結局僕も惚れちゃうんですね。

共同作業によって生まれた前例のないプロダクトたち

――では、手掛けた事例についてお聞かせください。まず新しいスタイルの漬物瓶「Picklestone(ピクルストーン)」についてですが。

Picklestoneの新しい点はデザインで、冷蔵庫に入れることができる、重石で漬けるタイプのこれまでにない漬物容器です。審美性と機能性が高度に融合していて、現在は特許を出願しています。今までの漬物容器はバネで押さえる仕組みですが、このプロダクトは石の重みだけで漬けることができ、蓋を締め直す必要はありません。

最初は趣味程度に、クラウドファンディングで30本くらい売れればいいと考えていましたが、ネットで話題になり蓋を開けてみれば1329%の達成率になって、最終的に400万円近く集まりました。このプロダクトを起点にビジネスを拡大させていく予定ですので、ご支援いただいた方もまだの方も、今後のPicklestoneの体験に期待していただければと思います。

――Picklestoneではどういった部分を担当されましたか?

このプロダクトは製造面を弊社内でほぼ完結させています。発案者かつディレクターのもと、どういったマテリアルの組み合わせがキッチン映えして冷蔵庫に収まるかをテーマに、パートナーデザイナーにも声をかけて質感を大事にするデザインを考えてもらいました。ほか、生産管理や認証関係などの役割を担って進めました。発案者の紹介で石職人の方も協力してくださって、それこそ組織の体にかかわらず、真にユーザーにフォーカスしたプロダクトができたと思っています。

――技術的に苦労された点はありますか?

石やガラス、麻は普段使わないマテリアルなので、品質管理や生産管理が難しかったです。木と石では削る工程が全然違って、石は全自動で削れないので職人が手で削っています。丸型が得意な職人にたどり着くまでが結構大変でしたね。そんなこと、プラスチックなどでは聞いたことがなかったので。また、木はどうしても水分を吸収して膨張するので、そのバラつき範囲を割り出すのが大変でした。

――「レンズマークチェッカー Premium(プレミアム)」について聞かせてただけますか?

これはメガネのデータベースを作る企業から問い合わせがあり、つくったものです。高級ブランドのメガネにはほとんど、レンズの中に小さな文字で製造番号が刻印されています。それが細かくて読みにくいので、このプロダクトを使って自動でメガネの商品名を導き出します。それによって、メガネの小売店の方が目が悪くても簡単に調べられ、お客さんが使っているメガネのタイプから新しい商品を提案しやすくなるなど、業務が効率化されます。

このプロダクトの仕組みは、メガネを中に入れて光を投影し、投影された文字をカメラが読み取ります。その画像を画像認識して、データベースから製造番号を検索するという仕組みです。このプロダクトは部品点数が少し多いので生産管理の仕事が生きてくるところです。使いやすい仕上がりで、原価は安く、品質管理やメンテナンスがしやすいようにしました。まだプロトタイプですが現場で先行して使ってもらっていて、今後も品質を向上させていく予定です。

――「小型アンドロイド端末のシリコンケース」についてお聞かせください。

これはインターネットサービスプロバイダのBIGLOBEさんがつくったポケベルのような情報端末「BL-01」のケースです。もともと既存の腕時計型のケースがありましたが、お客さんからの要望で違った形のシリコン外装をつくりました。ストラップ型なので、いろいろな場所に端末をつけられるようになりました。

この端末は、一般的なスマホのようにGPSやBluetoothや小型液晶があるので、バーコードリーダーと接続して利用したり、子どもの行動監視や在庫管理にも使われています。HARMONIQUAではケース外装のデザイン設計と量産を担当し、中国の工場で約300個作りました。普通、量産は数千個からですが、うちはそのような小ロットでも対応します。

――他にも手掛けたプロダクトはありますか?

DMM.make AKIBAに来たばかりの2014年に、3Dプリンターで出力された自由な形状の弁当箱「XBen(エックスベン)」を開発しました。ユーザー同士の位置情報を利用したマッチング機能を持ち、おかず交換を検知して楽しく光ります。また、可愛いキャラクター弁当箱の形状を3Dプリンターで実現します。僕は途中参加ですが、もともとは、現在HARMONIQUAメンバーとなったプランナーが発案したプロダクトです。さまざまなメディアに取材いただいたり、経産省フロンティアイノベーター事業に選ばれ、アメリカテキサスで開催されたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)にも出展させていただきました。IoTプロダクトはビジネスモデルをつくるのが大変でしたが、作っていて非常に楽しかったです。

――XBenではどういった点で苦労されましたか?

以前より試作開発が容易になったり、エンジニアが増えたとは言え、コストがかかって既存の弁当箱より劇的に高くなりました。一般的な弁当箱は1,000円程度ですが、これは10,000円以上するので、そのハードルの高さを埋めるビジネスモデルを考えるのが大変でした。

この時は、ものづくりの経験が少なかったのでビジネスモデルを広げることができませんでした。単体で売るだけでは利幅は限られていて儲からないので、どう連動させていくかが重要です。例えば、スマートフォンは端末を配った後にアプリの販売や月額課金がありますし、バルミューダの炊飯器はカレーも売りはじめました。その経験をふまえて、漬物瓶のPicklestoneでも色々な展開を考えています。

現在のHARMONIQUAに至るまでのなりたち

――株式会社HARMONIQUAでは、どういった方が働かれていますか?

今は、自分と正社員と取締役の3人体制で、生産管理、すなわち「モノを作って流通する」すべての工程を管理出来るメンバーで構成しています。外部にも個人や企業を問わず、エンジニアやディレクターや事務方まで幅広いネットワークがあって、案件次第でチームを組んでいます。知り合った方とは企業としてだけでなく、一対一の人間関係を築いています。例えば、Picklestoneを発案してディレクションしてもらっている田中さんは広告代理店のクリエイティブディレクターですが、元々は仕事を通じて仲良くなりました。

また4月から、さくらインターネットさんと業務提携して、IoT関連のプロダクトを開発する際のプロトタイピングからお客さんに届けるまでの生産管理のお手伝いをさせていただいています。

――松山さんは、もともとご実家である大阪の町工場で働かれていたそうですが、当時から現在までのお話を聞かせていただけますか?

実家のプラスチック工場に4年勤めていました。小さい会社なので、社長である父の下でなんでもやっていました。自分で生産管理データベースを作ったり、トラックを運転して倉庫に納品したり。製造ラインを手伝っていた時は、ダンボールを作って一日が終わることもよくありました。毎日必死に納期と品質と価格のバランスを考えて、それらをギリギリで釣り合わせる仕事は大変でしたが、その頃製造業に対する尊敬とそれを支える自負が芽生えました。

なんとか現場を切り盛りしていましたが、ある日、根津さんがデザインする弁当箱を実家の工場でつくる機会がありました。そこから、もっと深い信頼関係の中でスムーズに仕事を進められないかという考えを持ち始めたんです。自分はそのプロダクト開発の末端にいたのですが、根津さんから自分に指示が降りてくるまで非常に多くの伝達ロスがありました。CCで送られてくるメールは何人もの担当者さんが間に挟まっていて、やりとりが混乱していました。でも、根津さんが我々と直接やり取りしたらすぐに話がまとまって、こういうものづくりをした方がユーザーは幸せなんじゃないかと思うようになりました。根津さんは僕の中で、人生のキーマンですね。

――それから東京に引っ越されたんですよね。

その出来事までは実家を継ぐ気持ちでいましたが、ユーザーと直接触れ合いたい気持ちが芽生え、もう一人のキーマンである小笠原治さんに誘われてDMM.makeの3Dプリントセンターで働くことになりました。その時は急な話でお金も無かったので、都内に住んでいた姉の家や友達の家に寝袋を担いで転がり込みました。

まだDMM.makeが無名の時期で、僕も当時は3Dプリントについてよくわかっていませんでしたが、現場の人間と触れ合ったら信頼できる人たちでした。「3Dプリンターで世の中を変えてやるぞ!」という熱量があったからかもしれません。

――そこからDMM.make AKIBAの施設ができて、運営を手伝われたんですよね。

DMM.make AKIBAの立ち上げに関わっていた3Dプリンター事業部のメンバーに、「松山くんどうせ暇やろ、来週から来てや」と半ば強引に誘われて手伝い始めました。東京に来た当初から、「自分にできることはなんだろう?」と悶々と何年間も考えていて、生産について責任を持って最後まで届ける役割だとこの頃から思うようになりました。

――DMM.make AKIBAでは、当初どういったことをされていましたか?

オープンから半年はテックスタッフとして働いて、機材や技術に関する対応をしていました。施設の仕組みが整って運営が回り出してからは、そのまま会員として入居しました。東京に縁を感じて、完全に住まいを移したのもこの頃です。

入居した頃は、テックスタッフをしていた流れでプロダクトの試作品をつくっていました。今のHARMONIQUAの社員もDMM.make AKIBAで出会った人たちです。最初は業務委託やバイトでお願いしていたのですが、今後も一緒にやっていきたいので正式に入社してもらいました。こうやって大きな花火でも打ち上がらないと絶対東京まで出てこなかったと思うので、DMM.makeが出来た事は大きな転機になりました。

――デジタルファブリケーションやメイカームーブメントの盛り上がりの影響が大きいんですね。

面白いと思うことは、DMM.make AKIBAにいた人たちが事業拡大してこの施設を卒業しても、横のつながりが残るんです。だから新たなものづくりの生態系が出来つつありますね。みんなと知り合うことによって刺激されて、僕も自分自身の価値を上げたいという励みにもなります。また、年齢の近い27〜34歳が多いので話が合いやすかった。とりあえず飲んでるだけでも楽しいし。

――DMM.make AKIBA以外に大阪のコワーキングスペースにも参加していますが、比較していかがですか?

現在のコワーキングスペースのほとんどは、IT系の人たちによってノマドの文脈でつくられたものなんですね。PCでの作業ができて電源さえあればいい。新しい働き方に合わせた営業拠点にはなりえるんですけど、やっぱり設計・製造の拠点にはなかなかなりえなかったです。

――ものづくりに関して、東京と大阪での違いはありますか?

東京に来て思うのは、大阪では新しいハードウェアベンチャーがなかなか育たないですね。DMM.make AKIBAのような場所ができて、東京はフリーランスのものづくりのエンジニアが増えましたが、大阪ではものをつくっているフリーランスはほとんどいないんです。つくりたい人もいないので仕事もない。趣味程度でつくられたものはありますが、仕事に繋がるものはまれですね。そこで気づいたのですが、ものをつくるためには機材だけでなく「あそこに行ったら何かあるかも?」という熱量ある場所への期待だと思うんです。その場に機材がなくても、つくる人はつくるので。

――今後の展開や目標などはありますか?

僕はものをつくること自体より、製造業のプロセスを変えたいですね。時代の変化に合ったものがどんどん生まれる柔軟な仕組みの会社をつくりたい。生産工程をスムーズにしたり、ユーザーと良いコミュニケーションをしたら、もっといいものが産まれるんじゃないかという仮説を証明して、新しい生産工程をつくっていきたいですね。なので、プロダクトは漬物瓶に限らず、ウォーターサーバーやコーヒーメーカーでもなんでもいいんです。

「どんどん働き方を変えていけば、もっと違う価値や経験が生まれるはず」という仮説をもっています。ものづくりはこうあるべきだという固定概念を壊していきたい思いがあって。例えば、今度オフィスを新しい場所に構えますが、そこではできるだけリラックスしてコミュニケーションがとりやすい空間を作ります。不必要にルールで縛ることで考え方も固まってしまうので、ゼロベースで自分で考えてやっていきたい。そして熱量を形にするサポートをするために、どんどん自由闊達なネットワークをつくっていきたいと思っています。

DMM.make AKIBAから一言

DMM.make AKIBAオープン後のドタバタを支えてくれた、初期メンバーの松山さん。思い返せば、いろんな苦楽を共にしました。施設の運営が落ち着いた頃を見計らってスタッフとしての勤務を完了したのち、会員として入居してくださった経緯もあり、明るく屈託のない本人のキャラクターも相まって、AKIBAの会員さんやスタッフにいじられ放題・・・否、人を和ませる笑顔でみんなに愛されています。

モノづくりする人への大いなるリスペクトと、モノづくりに対する熱い思いを胸に秘めている松山さん。ハードウェアスタートアップの躍進を支える縁の下の力持ちとして、そしてモノづくりする当事者としてのこれからのご活躍を楽しみにしています!
(編集・境 理恵)

テックスタッフのリーダーともなかよし。

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