MAKERS #17「株式会社アバンド代表取締役 青木達夫」―ありそうで無さそうなものを作り、ワクワク出来るものを世の中に広げていくメイカーズ

MAKERS #17「株式会社アバンド代表取締役 青木達夫」―ありそうで無さそうなものを作り、ワクワク出来るものを世の中に広げていくメイカーズ

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2017/09/27
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・境理恵)

さまざまなプロジェクトに携わり、ありそうで無さそうなものを作り続けている青木達夫。Web制作・IoT製品のプロトタイプ受託開発を行う株式会社アバンドを経営し、数多くのプロダクトを世に送り出している。最近の代表的なプロダクトは悪路も走行可能なクローラーを動力とする小型移動装置「Cuboard(キューボード)」。「Cuboard」を開発する株式会社CuboRexの取締役を務める。個人活動としては、「100円ロボット部」などのユーモアを含んだコミュニティを育成する活動を行い、その一言では語りきれない多才な活動の一部をお聞きした。

<プロフィール>
青木達夫
株式会社パナソニックワンダーテイメント、松下電器産業株式会社、パナソニックデジタルネットワークサーブ株式会社などを経て独立。2005年7月、株式会社アバンドを設立し代表取締役に就任。2009年、ブロードバンドテクノロジー・コンサルティング株式会社の取締役に就任。2016年から株式会社CuboRex(キューボレックス) の取締役に就任。100円ロボット部、高尾山IoTなどのイベント運営も行う。
株式会社アバンド:http://www.abund.jp
株式会社CuboRex(キューボレックス):http://cuborex.com/
100円ロボット部:http://www.100robo.net/

クローラーとスケートボードを組み合わせたモビリティ

——まずは最近手掛けられたプロダクト「Cuboard」について教えていただけますか?

青木:Cuboardは、ブルドーザーや戦車に付いている帯状の動力「クローラー」をスケートボードの板に取り付けたものです。雪道や砂浜などの悪路でも走行可能で、農作業を補助する機械にも組み合わせることが可能です。時速7~15kmという、自転車に近い速さで走行します。方向転換はスケボーと同じようにボードを傾けることで制御します。スケボーだけではなくカバンや台車などいろいろな物につけられ、楽しくカスタマイズや改造が可能です。

——動力となる部分はどういった仕組みになっていますか? 

青木:大きく分けると、クローラーユニット、コントローラー制御部分のユニット、電源ボックスに分かれています。人間が乗ることができる他社のクローラーはバイクほどの大きさが大半ですが、Cuboardでは手で持てる大きさにできたことが特徴です。クローラーは接地面積が広いので、雪などに埋まらないこと、重いものを大量に乗せても柔軟に動くこと、慎重にならずに物をドンと上に乗せても倒れることなく動くことも特徴です。

——Cuboardの製作のきっかけを教えていただけますか?

青木:速く走るクローラーを作った学生(現在、株式会社CuboRex代表取締役を務める寺嶋瑞仁氏)との出会いがきっかけです。Maker Faireでも話題になっていて、人を乗せても速く走っていました。それをさらに誰でも直感的に楽しく乗れるようにスケートボードを使用しました。そのわかりやすさも手伝って、プロモーション用の動画は世界中からアクセスがありました。

https://youtu.be/7J8NJQWtMTg?list=PLWq_T-NZ-jr9lzFig7r9QYuE7hRILHYog

——世界におけるモビリディの市場はどのような状況でしょうか?

青木:カリフォルニアでは、いろいろな会社が電動のスケートボードを作っています。カリフォルニアの法律では車道でも走れるので流行っていますね。そして中国でも、街中にセグウェイのようなモビリティがたくさん走っています。でも、クローラータイプはまだこれからなので、電動スケボーとの差別化を図っています。

——どのような市場がターゲットになりますか?

青木:法人では、農業系のモビリティを研究している施設などで少しずつ売れ始めています。そういった研究施設で、どうやって荒地を移動するのかを実験しています。また、当初は注文生産で販売予定でしたが、現在は個人販売用の量産試作を開始しています。ただ難問にぶつかっていて、いかにして低価格で作れるか、さまざまなメーカーさんに協力してもらいつつ研究中です。

2017.10.3
一般財団法人 ジェームズダイソン財団が主催する国際エンジニアリングアワード、ジェームズ ダイソン アワード 2017において、世界23ヶ国、1,000を超える作品の中から、各国にて国内審査を通過した約115作品より、Cuboardが国際TOP20に選出されたことが発表されました。
[詳細]http://www.jamesdysonfoundation.jp/news/jda2017top20/

請け負うのはハードウェアだけでなくソフトウェアも

——他にもお仕事をいろいろされていますが、所属されている会社の紹介をお願いできますか?

青木:現在所属している会社は3社です。まずメインの会社「株式会社アバンド」はIT系の会社で、IoT製品の受託開発も始めました。複数の会員サイトの運営やWebサービス周りの受託開発の売り上げが大きいです。他には某家電メーカーさんのWeb制作支援や社内用コンサルティングも請け負っています。

株式会社CuboRex(キューボレックス)」はCuboardを作っている会社です。「全てのものをコンパクトに移動させたい」という目的で作りました。最終的には地上のドローンのような存在を目指していて、自動運転でさまざまな場所へ行って作業をしたり、ものを届けたりします。動力はクローラーだけでなくタイヤも含めていく予定です。

もうひとつの「ブロードバンドテクノロジー・コンサルティング」は派遣会社です。いろいろな企業様にSEやプログラマーを派遣していて、僕の役目はトラブル対応などのサポート役です。

——他に最近手がけられているお仕事はありますか?

青木:わかりやすいところでは、IoT系のセンサーデータを蓄積するプロダクトの開発も始めています。企業様から企画をいただいて、要件をまとめて、サンプルを作って、市場調査をしています。はっきりとした内容が決まってない仕事が多いですね。

——では、青木さんの得意な仕事の分野はありますか?

青木:得意なもの……なんだろう? 正直に言うと、いろいろやりすぎていて何に興味があるのかがわからなくなっていて……。敢えて言うなら、ワクワク感が重要かも。

先日はパンフレットや名刺作りをお願いされたり、アパレル系のIT系のコンサルをやらせていただいたり、幅広く手掛けていますね。ワクワクできる仕事、またはワクワクさせることができる仕事を受けています。

——その知識をハードウェアに応用しているのですか?

青木:実は、ユーザーの行動などをWeb系のサービスで蓄積しているものが「100円ロボット部」などに応用されています。大人の事情があり具体的に言えませんが、役に立っています。

——ではどういった技術を仕事で多く使っていますか?

青木:センサーなどを使ったプロダクトを手掛けていますが、守秘義務の関係で紹介は難しいですね(笑)。その中でも紹介できるセンサーを用いたおもちゃが、植物の見張り番玩具「おしゃべり なちゅどん」です。このおもちゃの機能は、植物に挿すと日光と水のセンサーが入っているので「水が足りない」「日光の明るさが欲しい」と喋ることです。このおもちゃは10年前に発売されたものです。

——センサーを使ったおもちゃのさきがけですよね?

青木:この当時は早かったですね。植物に付ける本格的なおもちゃは初です。僕は企画の原案を担当しました。僕の原案のストーリーと違いますが、アニメ化もされました(笑)。

——そういった仕事での気苦労はどういったものがありますか?

青木:「この製品知ってる?」と聞かれた時に「僕がやっている」と言いたくても言えないことですね。他のプロダクトに関しても受託として請け負っていると守秘義務が必ず発生します。なぜなら制作している個人が特定されると、商品の内容が想定されてしまうので言えないんです。だから、スタートアップ界隈で作る前からプロダクトの内容を公表できる人は羨ましいと思いますね。

——そこが大企業とスタートアップの違いですか?

青木:お金の掛け方も全然違いますね。もちろん資本を注入されているスタートアップもありますが、普通はそんなにお金を掛けられません。ユーザーの共感を得られなかったらスタートアップとしてやっていけないので、そこは共感のスピードを上げるために公表していくことは戦略的に是かなと思います。ファンを増やして悩んでいるプロセスも含めて見せていくことによって、共感を得てユーザーの購買欲を高めていく。それと都市伝説かもしれませんが、スタートアップの開発スピードが早くて大手が真似できないという話もあります。

——現在のお仕事について他に何かありますか?

青木:「100円ロボット部」にもつながりますが、子供たちがサーボモーターやセンサーを簡単に使えるように海外の方とプロジェクトを始めました。子供たちから大人まで低価格でロボットが作れるプロジェクトです。そのための技術開発をやっています。

——個人でさまざまなコミュニティづくりをされていますが、そのことについて教えていただけますか?

青木:100円ロボット部は、100円ショップで販売されているグッズを使えば誰もがロボットを作れると思い、2015年11月から始めた部活動です。100円ショップだけでは部品が足りないので他の低価格のパーツも含めていますが、そのコミュニティを始めて何が起こったかというと、安い部品で作るので失敗が許されるようになったのです。多くのロボットのパーツは高価なので失敗が許されない。ただ100円ショップで買ったものなら失敗しても財布が大きく痛まないので、トライ&エラーができるようになり、ここ1年くらいで急に参加者が進化し始めましたね。定例会の参加者は大人が多いのですが、フジテレビキッズさんとコラボしたイベントでは子供でも問題なく作ることができました。

フジテレビキッズさんとコラボ:https://p-kies.net/home/club/ws_170822

コミュニティを運営してものづくりを活性化

——100円ロボット部を始めたきっかけは?

青木:元をたどると、ふたつのイベントがありました。ハードウェアを何か2つ買ってきてひとつに組み合わせるイベント「フォークハード」と、100円ショップのグッズで物を作るハッカソン「ヒャッカソン」です。僕は両方の運営委員だったのですが、これらをベースに100円ロボット部が発足し、ハッカソンとは違う方向で運営することになりました。毎回テーマを決めていて「ストロー縛り」「帽子縛り」など大きな枠組みにしています。現在2~3ヶ月に1回定例会を行なっていて10~20人が集まります。特に女子向けのテーマは人が集まりますね。

——アメリカのMaker Faireなど海外でも出展されていますね。

青木:アメリカの「Maker Faire Bay Area」や、中国の西安市からご招待いただいた「International Makers Festival 2016」に出展しました。中国にも「一元ショップ」がありますが、人件費が高騰して内陸部では閉店しているようです。各国に似たような店があって、ヨーロッパの「1ユーロショップ」もだいたい売っているものは同じなので、徐々に世界的な取り組みにしていこうと考えています。

[Maker Faire Bay Area]100円ロボット部について紹介されたページ
https://makezine.com/2017/05/16/kids-guide-maker-faire-bay-area-25-awesome-things-see/

——他に参加運営されているコミュニティは?

青木:「高尾山IoT」は、基板メーカーさんや大手の通信会社さんなどと一緒に山登りして、日常と異なる環境でデータを用いた楽しみを作りたくて運営しています。都会とは違った、標高に基づいた生データを採取したりして楽しんでいます。最後に下山して高尾山の蕎麦を食べて温泉に入るのも楽しい。そうするとメーカーさんともざっくばらんに繋がることができますし、新しい環境で作るので新たなアイデアも浮かびます。

高尾山IoT:http://takaosaniot.net/

——そういう遊びも含めた堅苦しくならないコミュニティづくりの場を作られていますが、他にも取り組みは何かありますか?

青木:昔、巣作りを含めてデータ管理する養蜂に挑戦したかったのですが、結局参加者が忙しくなって頓挫しました。IoTとは関係ないのですが、現在そのメンバーが本当にいちから村を作ろうとしていますね。僕は性格のせいか、いちから何かを始めたり、誰が考えても無理なことをやりたい衝動に駆られます。今は雑誌の企画で、人工筋肉をストローやおもちゃで作れるか試しています。みんなに「できないよ」と言われそうだけど、できてしまうことが楽しいですね。もう手一杯なのであまり手を広げないようにしていますが。

——雑誌にも連載されていますよね?

青木:日本最古のPC雑誌『月刊I/O』に100円ロボット部の連載をしています。いまだに進化し続けている雑誌なので面白いですよね。公称1万部が刷られていて図書館にもあるので、世間への影響力は大きいです。連載をまとめて書籍化することも含めて頑張ります。

——では、青木さんの個人的な話をお聞かせください。過去を振り返って、幼少期のものづくりの思い出はありますか?

青木:他のものづくりの方もきっと同じ体験があると思いますが、レゴなどの既存のおもちゃを改造して1人遊びをするのが好きで。あまり友達と遊んでいなかったですね。また、親父がオーディオ機器メーカーでプロ用のスタジオ機器を作るオタリテックの役員でした。その親父がカセットデッキの試作機を家に持ち帰ってきていたおかげで、機械の構造の原理が直感的にわかるようになりました。そこでなんとなく「機械ってこういうものなんだなぁ」というのを自然と学んだのだと思います。

——サラリーマンを辞めて起業したきっかけはありますか?

青木:所属していた会社のキャリアが積み上げ式でないことに気付いて辞めました。自由にやりたかったので起業しました。

——仕事以外では普段何をしていますか?

青木:ストローで遊んでいます(笑)。プライベートの時間はないですよね。趣味は海外ドラマや映画観賞で、先日ハッカーを題材にしたアメリカのドラマ『ミスターロボット』を観ましたが、ほぼほぼ夢オチで。作中にかなりリアルな技術が使われていて、僕らが使っているツールと同じでクスッとなる瞬間が多かったですね。

——DMM.make AKIBAを知ったきっかけはなんでしょう?

青木:シェアオフィスをいろいろ見学したのですが、コミュニティが一番活発だったことと、テック技術顧問の阿部さんがいたことです。阿部さんはご指導・ご鞭撻がうまく親切で、お父さんみたいな先輩ですね。層の厚いスタッフが、いろいろと柔軟に対応してくれて、居心地は良いですよ。

[DMM.make AKIBA]なかのひと #1 「テック技術顧問 阿部潔」
https://media.dmm-make.com/item/3769/

——最後に今後の活動の予定を聞かせていただけますか?

青木:100円ロボット部としては、長野県上田市での「上モノフェス」での出展と、子供向けのロボットの導入教育をグローバルに進めていく作業をしています。また、CuboRexでは法人向けの新デバイスの用意もしています。ご期待ください。
最近は自分のところに来た仕事を面白がってどんどんやっていて振り返る時間がなかったので、このインタビューで僕の脳が整理されました(笑)。

DMM.make AKIBAから一言

DMM.make AKIBAでは「たっちゃん」と呼ばれている青木さん。
AKIBAに「青木さん」が2人いるので識別するため、という目的もありますが、明るく親しみやすいお人柄がそうさせるのだと思います。おやつやお土産をくださったり、Baseのカウンターで「打ち合わせ」と称したゆるい飲み会をゆるく開催したり、コミュニティ活性の中心人物として、会員さんやスタッフに親しまれています。そういう訳で、AKIBAから青木さんにお伝えしたいことは「いつもAKIBAにワクワクをありがとうございます」という一言に尽きるのでした。ワクワクをたくさん産み出して、世の中に広げていく青木さんの今後のご活躍を、楽しみにしています。(編集・境 理恵)

取材の一コマ。青木さんは、AKIBAのアイドル犬あかね君とも仲良し。

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