MAKERS #20「Javasparrow株式会社エンジニア國舛等志・デザイナー稲田祐介」 離れた人にも「ただいま」を光で伝えるるIoT照明

MAKERS #20「Javasparrow株式会社エンジニア國舛等志・デザイナー稲田祐介」 離れた人にも「ただいま」を光で伝えるるIoT照明

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2017/12/20
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。

モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・髙岡謙太郎/写真・境理恵)

単身赴任などのさまざまな事情から親しい人と遠距離で過ごす人も多いだろう。そんなときに相手が帰宅したことがわかる照明がある、「wesign」だ。2個セットになった照明がネットワークに接続し、相手側の照明が点灯するとペアの照明も点灯することで、明かりが気配となり伝わる。このプロダクトを製品化したのは、さまざまなIoTプロダクトをリリースするスタートアップCerevoの元社員2人。このプロダクトに対する思いや、会社の成り立ちからコンセプトを伺った。

(画像提供:Javasparrow)

<プロフィール>
Javasparrow株式会社
Web/アプリからハードウェアの設計、製造、販売まで行うエンジニアとデザイナーのユニット。株式会社Cerevoから独立し2017年8月に設立。「てあと」「なじむ」「つながり」をテーマに、自社製品の企画・開発・販売を行う一方でベンチャーやメーカー企業との受託や協業開発を行う。11月15日に初となる製品「wesign」をリリース。
https://www.javasparrow.tokyo/

稲田 祐介(いなだ ゆうすけ)
1984年生まれ。2009年からパナソニックにて国内外のオーディオ機器、テレビのデザインを担当。2013年株式会社Cerevoに入社。ライブ配信、映像機器、IoT機器のアプリ、UI/UX デザイン、プロダクトデザイン、パッケージデザインまでのデザイン業務全般に従事しながらプロダクトマネージャーを兼任。

國舛 等志(くにます ひとし)
1985年生まれ。2009年にWebシステム開発会社から創業間もない株式会社Cerevoに入社。主にライブ配信系商品の企画、立ち上げから関連するWeb/アプリの開発、部品や量産工場の選定、量産立ち会いから出荷まで、製品出荷全般に関係する業務に従事。1年間のフリーランスを経て、稲田氏と共に2017年8月にJavasparrow株式会社を設立。

離れて暮らす人たちを結ぶIoT照明

https://www.youtube.com/watch?v=FMsYPA9OMro&feature=youtu.be

——まずは手がけられたプロダクトwesignについて教えていただけますか?

稲田:wesignは離れて暮らす人同士が、気配や温もりを明かりで伝え合うIoT照明です。例えば単身赴任や遠距離恋愛などで、新潟と京都といった距離のある場所に離れて暮らしていたとして、京都の方が先に帰宅して家のwesignのスイッチを入れると上面の明かりがつき、それに連動して離れて暮らす新潟の方のwesignの下面の明かりがつきます。お互いにスイッチを入れことで常時点灯する仕様です。上面は日常で機能する間接照明として使えるような明るさやあつらえにし、下面は相手の存在感や気配を表現するようなLEDをつけたことで相手の暮らしを感じ取れるようにしています。

このデバイスががコミュニケーションのトリガーになればと思っています。スマホのメッセンジャーソフトとは違って、wesignの明かりは情報量を最小限にしたやり取りです。例えば、明かりがつくことで「おかえり」や「ただいま」という声をかける合図になる、といったようにです。スマートフォンでは送ったメッセージが既読になることを気にしてしまいますが、もう少しゆるいコミュニケーションができればいいのでは、というテーマで製品を開発をしました。

——IoTプロダクトでは、こういった人の想いを感じ取るというなものはなかなかない気がします。なぜこれを思いついたのですか?

稲田:実は僕らはポエマーだったりロマンチストなんです(笑)。僕はデザイナー、國舛はサーバーサイドやアプリ、ウェブサービスが作れるバックボーンがあります。それぞれ異なる知識を持ち合わせた2人ですが、話しているうちに実はどちらもポエマーな一面があることがわかってきて、ブレインストーミングを進めた結果「人と人の繋がりはいいよね」となり、この形に落ち着きました。

國舛:この「人と繋がりを伝える」プロダクトは当初は光ではなく、音で伝えようと考えていました。それは壁にかけて使うデバイスで、離れている人同士が音を介して、壁の隣にはあたかもその人がいるような感覚になるプロダクトです。音で伝えようと考えたのは、日本の独特な文化であるふすまや障子といった「その向こうに誰かいる」ことがわかる壁の存在です。人が動いている音や気配が壁越しにでも伝わってくると、無意識だけど安心感を得るものですよね。

——面白いですね。隣の部屋にいる感覚になるIoTプロダクト。

稲田:他の製品で、相手の暮らしている様子が見えるような窓タイプのプロダクトを見かけますが、そういった音を使って様子を伝えるものはありませんでした。私たちは、相手に伝えるコミュニケーションのあり方をイチから考え直し、直接的ではなくゆるく繋がる方法を模索しました。製品化を考えるにあたり、あれもこれもと考えていた機能をどこまでシンプルにできるかというアプローチがひとつ。また、音声データをやり取りするとサーバーコストがかかり提供価格が上がってしまうというコスト面のアプローチから、どうしたら私たちがイメージするゆるい繋がりを表現できるのかを考えて、最終的に光になりました。

國舛:音によって存在を感じられる、ということを先ほど話しましたが、開発を進めるなかで、実は光でもけっこう存在を感じられることに気付いて、そこからブラッシュアップしていきました。ガラスは一般的に量産が難しく、IoT製品でもほとんど使われることはありませんが、僕らは2人だけの会社なのでデザイン面も生産面もチャレンジしたいと考えたんです。またデバイス上面の真ん中に立ってる2つの棒は真鍮棒という金属を使っています。コストダウンをしてよくあるワイヤーやハーネスにすることもできましたが、そうするとコミュニケーションツールとしてもインテリアとしても味気なくなってしまうので、あえて金属の棒を使っています、そこもこだわりですね。

——大量に作って売るというよりも、味のあるものを作りたいコンセプトなんですね。

稲田:どちらかというとそちらが先行していますね。

——照明が2個セットというのも面白いですね。

稲田:この製品化を進めるなかで、周りの意見を聞き、國舛と利用シーンを想定した話をしていて気づいたことですが、2人で使うものでも購入するのはどちらか片方であることが多いんです。プレゼントをする人が買って相手に渡すことになります。そうした気づきもあって私たちはパッケージにもこだわりました。片方のパッケージには「これはあなたのwesignです」、もう片方には「これはあなたの大切な方からの贈り物です」と書いていて、贈る側と贈られる側でパッケージが違う仕様になっています。

(画像提供:Javasparrow)

國舛:最初から贈り物を想定していたわけではなく、製品を作っていくうちに「これってこういうことだよね!」と気づいて、途中で路線変更しましたね。

稲田: Javasparrowは2人だけという最小のメンバー構成で意思決定をしているのでアイデアをお互い出やすいですし、それにあわせて変更があった時に柔軟に動けるのは、会社としての強みだとなと感じました。
 
——アパートを工房にしている記事をいくつか読みましたが、最初は手作業だったんですか?

國舛:最初だけでなく今もですね。このデバイスはもちろん手作業でなくても作ることができます。例えば、基板も量産工場に送れば、1万枚でも作ることはできます。ただ、そうすることは現時点ではあえて避けて、僕たちがひとつひとつ丁寧に作業して検品してという作り方はすごくこだわっています

稲田:ちなみに製品のテストの時はお互いの家に10ペアずつあって、家中が光っていました。今後の展開としては、使い方がとても簡単なのでホテルでも使っていただけるのではないかなとか考えていますね。

國舛:離れているおじいちゃん、おばあちゃんとお孫さんにも使ってもらって、カチカチ遊んでもらうとかしてもらえると嬉しいですね。

(画像提供:Javasparrow)

アイデアから製品として売り出すまで

——お2人の会社、Javasparrowはどういった会社ですか?

稲田:「てあと」「なじむ」「つながり」というブランドコンセプトをベースにプロダクトを生み出していきたいと思っています。ただ今後、作るものを家電だけに限定していないようにしています。社員は2人だけですし、柔軟に決められることが利点だと思っているので、今は細かく決めずに進めていて、受託の仕事も行なってます。

——どうやって知り合いましたか?

稲田:私たちは以前ハードウェア・スタートアップの株式会社Cerevoで働いていて、たまたま席が隣だったんです。初めて一緒に開発した製品はタブレットアプリから簡単に操作できるビデオスイッチャー「LiveWedge」という商品で、私はアプリのデザインを担当していました。

國舛:僕はそのデバイスを操作するアプリのプログラミングを担当だったんです。その他に僕はライブ配信用カメラ「CEREVO CAM」からずっと、サービスの管理画面や機能、ライブ配信のためのサーバーを設定したりと、ライブ配信周りのサービスを担当していました。

稲田:私はアクションカメラ「REC-1」のプロダクトマネージャーをしていました。Cerevoに入って、プロダクトデザインとマネージメントのどちらにもコミットした製品なので思い入れがありますね。

LiveWedgeの開発と席が隣というきっかけで話すことが増えました。2人ともモノを作るのが好きだったので、会社の帰りやランチのときに意見を出し合っていました。思い返すと、この製品のアイデアの元はその当時から出てましたね。

——偶然話の合う人が隣にいたんですね。wesignをローンチするのにはどれくらいかかったんですか?

稲田:会社を設立したのは2017年8月ですが、この今の製品の形状になってからは約1年ですね。設立前はお互いサラリーマンだったので、少しずつ進めていました。

——他に形にしたプロダクトはあるんですか?

國舛:ボタン1個だけのシンプルな赤外線学習リモコンを作りました。例えば、テレビのリモコンの電源ボタンを押した時に出る赤外線を1回学習させて、学習させたらボタンがリモコンになる、といったものですね。

——そのリモコンは販売していますか?

稲田:していません、趣味でお金をかけて開発したものです(笑)。3年前ですが、基板もおこして実際に動くところまで作りました。当時はまだ全然電気のことがわからなくて、國舛が逗子の電気設計業者を見つけて作り方を相談していました。これを販売しなかったのは、たくさん作って売る勇気が持てなかったからです。私たちもコストを抑えようと頑張りましたが、原価が結構高くなるんですよ。

——リモコンの他に作ったものはありますか?

稲田:スムージー作ることができるタンブラーを作りました。ボトル自体はシリコン製でやわらかく、中はギザギザになっていて、果物と牛乳入れて揉んで混ぜるとスムージーができる、といったものです。

——これはアナログなプロダクトなんですね。プログラミングの要素がないので國舛さんが担当する部分がなさそうですが……。

國舛:僕は基本的にユーザーテスト、実験台を担当しました(笑)。

稲田:私はそれが重要だと思っています。ひとりで作っていると私の価値観でしかアイデアが出ません。彼にユーザー目線で試してもらって、その上で彼のこだわりたい部分を聞いて、何回も作り直ししました。

國舛:他にもたくさん作ってはいますが、失敗作ばっかりですね(笑)。形にならないままの口頭レベルのアイデアなら100個ぐらいあります。

——DMM.make AKIBAは以前から利用されているんですか?

稲田:私たち2人ともDMM.make AKIBAのフロアに何もない状態の時から出入りしています(笑)。 所属していたCerevoはこの施設の立ち上げ時から入居していたんですが、当時人員拡大時期だったこともあり、引っ越し手前のタイミングに旧オフィスで作業するスペースがなかったんです。それで、まだ床の施工も終わってない段階でパソコンを開いて座り込んで作業していました。

ここに壁などの施工が入って完成していくプロセスを見ることができたので、施設を一緒に作った感覚がありますね。Cerevo代表の岩佐さんが10階の機材を選定してたので、搬入などのお手伝いをしました。

——DMM.make AKIBAと自宅の作業の違いはありますか?

稲田:基本的にDMM.make AKIBAでの1番多い作業は、試作・検討ですね。試行錯誤を重ねて、方向性を決めて効率化してから自宅で作業します。試作・検討は場所を使うし、部屋ではうっかり塗装ミスしたら大変なことになります。プロトタイプの検討はここでやったほうが絶対いいですね。道具も豊富にそろっていますし。近くにヨドバシもあるので、家より便利ですね。

2人だからこそ生み出せるもの

——お2人それぞれが得意なことの相性がいいんですね

稲田:そうですね。僕はもともとプロダクトデザイナーで、企画提案することが好きです。ただ、実際に商品化するまでを勉強したかったので開発スピードのあるCerevoに入りました。そこからプロダクトを具体化するための技術や想いが加速していったと思います。

國舛:僕の場合はプログラミングとひとくちにいっても、実は業務内容がどんどん変わっていっているんです。最初はサーバーサイドエンジニア、iPhoneが出たタイミングではアプリを作ることもあり、またプロダクトマネージャーとして全体を統括する立場になったこともあります。なので、ステップアップしていくうちに今度は会社自体やってみたくなったんです、僕は興味の範囲が広いので(笑)。そこが稲田と住み分けできているのかもしれません。

——今後Javasparrow自体やwesignをどうしていきたいか、どういう展開を考えているか教えてください。

稲田:ひとつは、ブランドコンセプトを大切にしながら2個3個と続けて製品を作っていきたいと考えています。

もうひとつは、wesignのカスタマイズです。例えば、アーティストの方とコラボして白い基板の上をデコレーションすることを検討しています。

國舛:基板の上をジオラマにして、木を生やしたり草を生やしたり、ストーンを使ってきらびやかにデコレーションするのもいいかもしれません。もともとこの製品ははガジェットに詳しい人向けではなく、もっと広い層をターゲットにしています。普段インターネットでニュースを見ない人でも、可愛いデコレーションをしたものが店頭にあることで興味をもってもらえるかもしれません。遠距離恋愛や単身赴任をしている、この製品が必要な方に、届いて欲しいユーザーに向けてさらに展開をしていきたいです。

——次回作の想定はありますか?

稲田:まだ形になっていませんが、さらに「人の繋がりを変えていきたい」というテーマにお互い案を出し合っている段階です。

——wesignはどこで購入できるのでしょうか?

稲田: Javasparrowの公式サイトからオンラインで購入いただけるほか、東京都世田谷区の「二子玉川 蔦屋家電」、品川にあるインテリアショップ「Mid-Century MODERN」でお買い求めいただけます。
また、この記事が出る頃には、神保町にあるデザインセレクトショップ「AssistOn」でお取り扱いを予定しています。

やっと今製品をローンチしたところで、手分けして営業活動をしています。特にクラウドファンディングもしてませんし、大きなPRをうっているわけではありません。地道にインテリアショップにアプローチしたり、知人の紹介などで購入いただける場所を広げていっています。

DMM.make AKIBAから一言
会社設立以前からずっと仲が良い様子をみかけることが多かった國舛さんと稲田さん。そこまで仲良くいられる共通点はなんなのだろうと、はたから見ていて気になっていました。しかし今回のお話を聞いて、お二人のやりたいことがそれぞれちょっとずつ違う領域で、でも同じベクトルを向いているから気があうのだな、相性が本当にいいからこそプロダクトをリリースできるところまで力を注いでやってこられたのだな、と感じました。

離れた人とも気負わずにコミュニケーションがとれる、IoT照明「wesign」はちょうどこれからクリスマスプレゼントとして、また春先の新拠点で活動し始めるタイミングの記念の品として大活躍しそうな、先の展開が楽しみなプロダクトです。
またお二人が、これまで培ってきた技術やセンスとあわせて一体どんなものが今後生み出されていくのかもDMM.make AKIBAとして注目していきたいです。

(編集・田中 佑佳)

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