MAKERS #21「TITAMAS(東工大メディア研究会)代表 山﨑 健太郎」——全盲の従弟を助けたいという想いから開発したスマート白杖「Walky」

MAKERS #21「TITAMAS(東工大メディア研究会)代表 山﨑 健太郎」——全盲の従弟を助けたいという想いから開発したスマート白杖「Walky」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2018/01/24
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・境理恵)

現在様々なところで身体障がい者に向けた利便性や安全性の向上推進が訴えられているが、まだまだハード面でもソフト面でもバリアフリーが実現できているとは言い難い。そうした中で視覚障がい者が安心して外を歩ける一助となるよう、白杖(はくじょう)をスマート化しようと試みる東京工業大学のサークル「TITAMAS」代表の山﨑 健太郎氏に、お話を伺った。

<プロフィール>
山﨑 健太郎(やまざき けんたろう)
東京工業大学 波多野・小寺研究室4年。東工大メディア研究会TITAMAS代表。東工大生向けイベント「Off The Rails!!!」の主催など、東工大からもっとポップなカルチャーを発信するべく活動している。趣味はハードオフ巡り。

――開発されている「スマート白杖 Walky(ウォーキィ)」について教えてください

山崎:Walkyは目が見えない人が使う白杖にセンサーとカメラを搭載した杖です。既存の杖では足元しかわからなかった障害物をセンサーで検出し、前方に何があるのかを音声によって伝える機能を備えています。

https://www.youtube.com/watch?v=IPwSHgdlTRA&feature=youtu.be

全盲の従弟をサポートしたいという思い

山崎:実は僕の従弟が全盲で、彼のもつ課題を解決できないかと思ったことが開発のきっかけでした。彼は普段通常の白杖を使っていて、杖の石突きでカツンと音を出すことで、その反射音から自分の周囲にあるものの密度のようなものがわかるそうです。ただ、具体的に何があるのか、どれくらいの距離にあるのかまでは、白杖が触れるまではわかりません。

ヒアリングしたところ、過去に歩道の上にエンジンを止めた車が乗り上げていて、それに気づかず接触してしまったことがあったそうです。トラックなどの大型の車体が歩道に乗り上げた状態では、杖が荷台の下に潜り込んでしまい、杖が触れるまえに体がぶつかってしまうということでした。

ちゃんと歩道を歩いているのだからトラックや自転車にぶつかるという状況を減らすことはできないか、歩道の全ての情報をセンサーで認識して音声で伝えるのは難しいけれど、そこを解決することに絞って課題として取り組むことにしました。

(本体前方に超音波センサーとカメラを備えるスマート白杖「Walky」)

――どんな仕組みなのでしょうか?

山崎:この白杖は、障害物の感知に超音波距離センサーとカメラを使っています。処理はRaspberry Piを使い、超音波センサーが対象を検出するとカメラで前方を撮影し、MicrosoftのAzureにある画像認識APIに画像を送って処理します。検出対象の障害物、つまりトラックや自転車などをホワイトリストとして持っていて、Azureから戻ってきた結果とリストに入っている障害物が一致した場合に、それを音声で通知するという仕組みです。

また画像認識するための写真撮影の手ぶれを少なくするべく加速度センサーを搭載し、杖の加速度がゼロになる付近で写真を撮影するようにしています。プロトタイプで試したところ、ちゃんと前方にあるテーブルや自転車があることを検出し、音声で知らせることができたので、この構成で進めることにしました。


――構成のなかでも重要な点はどこですか?

山崎:一番のポイントは通信です。モバイルデータ通信サービスのSORACOM Airを使っていて、NTTドコモの電波が届けばどこでも使えます。この構成で、画像をセンシングしてから音声で通知するまでを1~2秒で実現しています。人の歩く速度は毎分80m程度ですから、2秒で約2.5mです。この超音波センサーのレンジが5mなので、障害物を検知してから身体と接触する前に音声で通知できるようなパフォーマンスを実現しています。

(スマート白杖「Walky」の初期プロトタイプ)

従弟と二人三脚で開発

山崎:この白杖は従弟のために作ったものですが、この杖という形にしたのにも理由があります。彼はOakleyのサングラスが好きで、それが彼のファッションになっているので、眼鏡型のデバイスは使いたくありません。さらに外出時にはリュックを背負っているので、肩にかけるような形状にもできません。多様なニーズに対応するというよりは、従弟が感じている問題を一つひとつ解決していきたいと思い、杖型のデバイスにしました。このプロトタイプについても、今後はエスカレーターが上りなのか下りなのか、判別できるようにしたい、と従弟からヒアリングをしているので、それを元に次の課題に取り組みたいと考えています。

ただ、残念なことに2017年10月から彼がオーストラリアに留学してしまったため、この最終プロトタイプはまだ試してもらっていません。(笑)

将来はオープンソース化し、多くの人に使ってもらいたい

山崎:僕は視覚障がい者について詳しいわけではありません。従弟はいま高校3年生で、デジタルネイティブな世代ですが、散歩にもGoogleマップを持って行きますし、デジタルデバイスも使いこなしています。彼らのようなデジタルネイティブなコミュニティの中から、Walkyを使ってみたいという人が出てきて、自分たちで楽しみながら課題を解決できるようになればと思い、このスマート白杖の設計情報をオープンソース化するような方向性も考えています。

――実際に利用する方々の視点にたったニーズ、どういうところに困っているのかをきちんと拾い上げて、プロダクトに反映されているのですね。

DMM.make AKIBAとの出会い

――DMM.make SCHOLARSHIPを受けられていますが、どのようなきっかけでしたか?

山崎:最初にJP HACKS 2016というハッカソンに参加して、スマート白杖のアイデアができました。その後、東工大でDMM.make AKIBAが協賛していたビジネスコンテストに参加し、DMMの企業賞とスカラシップをいただき、プロトタイピングに取り組みました。

スカラシップで支援をいただきながら、学生向けグローバル IT コンテストImagine Cup 2017に参加して日本予選で優勝、世界大会への参加が決まりました。この白杖を世界に持って行くため、DMM.make AKIBAで打ち合わせや部品の改良を繰り返して、このプロトタイプも今では7代目になりました。

(Imagine Cup 2017出場)

――DMM.make AKIBAの施設はどれくらい利用されていますか?

山崎:ハードウェア開発のため、週に1回くらいチームで集まっています。ロケーションも良いので部品を調達したり、ちょっと穴あけしたりという時に使いやすいです。以前は自宅が工場みたいになっていましたが、家だと集中できずに遊んじゃうんですよね(笑)

特に世界大会の前は、大学の授業が終わると秋葉原で部品を買ってそのままここに来て、ずっと半田付けをしていました。何日かは徹夜して朝までやっていたこともあります(笑)

多くの情報が得られるコミュニケーションが魅力

山崎:一番うれしいのは、入居している方々とコミュニケーションできることです。いろいろな経験を積まれてきた方からアドバイスをいただいたり、相談にのっていただいたり。白杖のボディを3Dプリントするときのコツや、パラメトリックスピーカーの使い方など、いろいろなアイデアやアドバイスをもらい、助けていただきました。

ここには、自分がまだ使ったことがないような機材を使って製品を作っている人もいます。自分のものづくりのレベルが上がれば使いこなせるようになる機材があるので、ここにいると次に自分が作りたいものも見えてくるように思います。

白杖の今後、山崎さんの今後

――今後どのようなことを考えていますか?

山崎:従弟が海外に行ってしまったこともあり、白杖の開発はちょっと止まっていますが、今後誰でもこのWalkyを作ることができる形にして公開したいと思っています。公開したうえでさらに様々な意見を聞いて「こんなことができるといいね」というアイデアがあれば、追加していきたいと思っています。

(次はゲームボーイを楽器にしたいと語る山崎さん)

また実は高校生のころからチップチューンをやっていて、友人と一緒にゲームボーイとかを使って楽器になるものを作っています。できれば、商品になるようなクォリティを目指したいですね。将来はみんなの生活に溶け込めるようなものを作りたくて、そのための基礎となるような開発をしていきたいと思っています。

DMM.make AKIBAから一言
山﨑くんと初めて出会ったのは、JP HACKSという全国6都市で開催される日本最大の学生向けハックイベントでした。そのときは他のチームにDMM.comの企業賞を出したのですが、優勝をかっさらったプロダクトのインパクトと、代表山﨑くんの学生と思えぬ存在感が非常に印象的でした。その時からDMM.makeのScholarshipに応募するようすすめていたのですが、本人たちが多忙でなかなか実現せず。その後、東工大のビジネスコンテストで再会を果たすのですが、ここで会ったが百年目(?)とばかりに企業賞を贈らせていただき、TITAMASがめでたくAKIBAっ子となったのでした。

TITAMASのメンバーは、ひとりひとりの活動も際立っており、今後の活躍がとても楽しみなチームです。そして、山﨑くんの個性的なメガネコレクションにも注目していきたいと思っています。(編集・境 理恵)

(TITAMASのメンバーと。夏の装いは、情熱の赤フレーム)


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株式会社DMM.comが運営する「DMM.make AKIBA」は、ハードウェア開発・試作に必要な機材を取り揃えた「Studio」、シェアオフィスやイベントスペースなどビジネスの拠点として利用できる「Base」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設です。

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