MAKERS #22「歯っぴー株式会社代表 小山昭則」——子どもや高齢者の歯磨きをサポートするスマート歯ブラシ「歯っぴ~」

MAKERS #22「歯っぴー株式会社代表 小山昭則」——子どもや高齢者の歯磨きをサポートするスマート歯ブラシ「歯っぴ~」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2018/02/21
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・境理恵)

歯ブラシの先端にカメラを搭載して目に見えない歯の汚れを可視化し、子どもや高齢者の歯磨きをサポートするスマート歯ブラシ「歯っぴ~」。日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2017」で大賞に輝くなど、大きな注目を集めているスタートアップだ。
歯っぴ~はDMM.make AKIBAが2017年3月に募集したアクセラレータープログラム「Open Challenge 2」で採択した7チームにも入っている。今回は歯っぴー株式会社代表の小山昭則氏にお話を伺った。

(歯っぴー株式会社代表の小山昭則氏)

<プロフィール>
歯っぴー株式会社代表 小山 昭則(おやま あきのり)
大手電機メーカー勤務後、熊本地震発生後に災害ボランティア活動に参加。災害ボランティア活動において、緊急支援物資の物流あり方を変える仕組みを構築し、建設コンサルタンツ協会九州支部や起業支援ネットワークNICeから高く評価され表彰を受ける。
現在、九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻(ビジネススクール)在学中に歯っぴー株式会社を創業、経営言語が分かるエンジニアとして、人生100年時代に必要な口腔ケアシステムという技術シーズを元に、人生50年時代に設計された現状の口腔ケアに対して挑戦をし続ける。

歯っぴー株式会社
https://plaque-detection.jimdo.com/

――歯っぴ~の簡単な紹介をお願いします。いつ頃から開発を始められたのでしょうか?

小山:この製品は、既存の電動歯ブラシに光学系の機能を埋め込んでいます。それにより目には見えない無色透明の歯垢を可視化して、歯磨きをしながらスマートフォンで歯垢の様子を見ながら確実に磨けるようにするものです。いわば、歯ブラシ本来の目的に特化した製品になります。

きっかけは子どもの頃に苦手だった歯磨きの経験

小山:開発のきっかけは幼少期まで遡ります。その当時、私は歯磨きが下手で虫歯に悩んでいました。

右の奥に虫歯ができたらそこだけを集中して磨き、しばらくすると今度は左側に虫歯ができてしまうという悪循環を繰り返していて、歯磨きが上手になるためにはどうすればいいのかをずっと考えていました。

(熊本地震でのボランティア活動が転機だったと語る小山氏)

小山:その後、大学を出て大手電機メーカーに勤務していましたが、会社を辞めてこれを作ることにしたのは、熊本地震がきっかけでした。
地震が起きた時には関東にいたのですが、熊本に戻って災害ボランティア活動に参加するため、いったん退職したのです。

熊本地震後、仕事を辞めてボランティア活動に参加

小山:熊本にある実家の復旧も含めて半年ほどボランティア活動をしていましたが、その中で避難所や病院を訪れたことがあり、そこで高齢者の方や入院患者さんたちに歯磨きをしてあげて、とても喜ばれたことがありました。
自分で歯を磨いているときは、どこを磨けばいいのかわかりますが、他人の歯を磨くとそれが全くわからないんです。この時「どこを磨くのかわからない、歯磨きが上手になりたい」という子どもの頃感じていた思いが蘇ってきました。一度は忘れていた思いなのですが、この体験によってボランティア活動後に再就職という道を選ばず、挑戦しようと思いました。

――熊本地震が2016年4月ですから、Open Challenge 2に応募するまで1年近くあったわけですが、その間はどうされていたのですか?

小山:歯磨きのサポートツールを作ろうという着想はありましたから、最初はファイバーケーブル、内視鏡カメラのようなものを使ってスマートフォンで口の中を見ながら歯磨きをすれば良いのではと考え、主に自宅や地元のラボを利用しながら作っていました。

当時九州大学のビジネススクールに通い始めていたいので、そのメンバーに試しにUSB接続のケーブルカメラを見ながら歯磨きをしてもらうと、「こんな面倒なもの使えるか」と言われてしまって(笑)

(歯ブラシの中にカメラと紫外線LEDを組み込んでいる)

ユーザーの声をヒントにプロトタイプを改良する

小山:そう言われたことをヒントに、歯ブラシにカメラを内蔵することを思い付きました。歯ブラシを一から作るような技術はありませんでしたので、既存の電動歯ブラシを改造して、カメラを埋め込んでみました。ソフトウェアも少しずつ作りながら、構想からプロトタイプまで7~8カ月かかったと思います。

その後もかなりの試行錯誤があり、カメラを入れただけだとまだ機能として十分ではないと感じていました。特に無色透明の歯垢を落とすことができればと思い立ったことから、光学系に工夫を加え、プロトタイプα版ができました。ちょうどその頃にDMM.make AKIBAでのOpen Challengeを知り、歯っぴ~の発表の場として応募いたしました。

そしてOpen Challengeに応募

――Open Challengeを知ったきっかけを教えてください

小山:たまたま家族で秋葉原に遊びにきたとき、偶然見つけました。この建物(注:DMM.com AKIBAが入居する富士ソフト秋葉原ビル)の前を通ったらチラシが目に留まって。
歯っぴ~の基礎になるものが形になってきたところでしたので、ちょっと応募してみて意見を聞いてみようという軽いノリで応募しました。

――採択後、発表展示会・ Demo Dayまでどのようにブラッシュアップしていったのでしょうか?

小山:私は九州に住んでいますので、DMM.make AKIBAの施設は残念ながら利用できませんでした。基本的にSkypeなどをつかってOpen Challengeの担当者と進捗を共有したり、ブラッシュアップの方向性を議論してきました。
遠方なので、他の人がやっていることを見ながら意見交換したり、作業したりということはできていませんが、「Demo Dayでプロトタイプを皆さんに見てもらえるものにしよう」という明確なゴールを目指して取り組んでいました。

(ユーザーの要求を満たすため、試行錯誤を繰り返したという小山氏)

――Open Challengeに参加してみて、いかがでしたか?歯っぴ~が得られたものがあれば教えてください。

小山:Open Challengeに参加する前にすでに歯っぴ~のプロトタイプα版がありましたが、デモデイに向けブラッシュアップを続けるなかで、まだ漠然としていたところがあることに気付かされました。
Open Challengeの3カ月間にDemo Dayの事前確認の場があり、そこで私がこの製品に対して思っていることと、他の人がこの製品から感じることは同じではないということ、もっと製品を効果的にアピールできる伝え方がある、などといった意見を聞きました。Open Challengeプロデューサーの岡島さんからは、明確な資料の作り方など細かく指導いただきました。

プロトタイプを評価するとき、身近な人にお願いすると割と耳触りの良い意見ばかりを聞くことがほとんどです。それが第三者の目に触れることで、厳しい意見をいただき、新しい気付きがあったのは貴重な経験だったと思います。

コミュニケーションを通して気付きが得られる

小山:特にDemo Dayでの展示は良かったです。いろいろな方とコミュニケーションすることで、それまで自分が思ってもいかなった使い方などの意見をいただき、自分が間違っていた部分に気付きがありました。私にとっては、Open Challengeを通してこの製品の狙うべき市場が見えてきた、自分が考えてきたことをどう活かしていくのかが見えてきたのが、大きかったです。

また、Demo Dayの中で、様々な企業さんと話をさせていただき、そこからGUGENを紹介いただきました。Open Challengeをきっかけに知り合った企業とも、今後協業の可能性もあるのかなと思っています。

(特殊な光学処理で歯垢を可視化している歯っぴ~)

――今回拝見したモデルは、Demo Dayのときのモデルから少し形状が変わっているようですが、ご自身でさらに研究されたのですか?

小山:はい、Demo Dayを通していろいろな人に見て触ってフィードバックをいただいたことに影響を受けています。特に、私は「これがあったら便利だろう」というユーザー像を考えていたのですが、他の人の意見を聞くうちに「これがないと困る」というユーザーがいることがわかりました。

歯ブラシを使って自分の歯を磨くのではなく、こどもや老人の歯など他人の歯を磨く必要がある人たちには、強いニーズがあります。歯を磨いているうちに口を閉じてしまい口の中がよく見えない状態で歯を磨かなくてはならず、そうすると歯を磨いていると思っていても実は歯茎を磨いていたということがあるそうです。そういった点も対象となるユーザーと話をすることによって、どんどんそういう実情が見えてきました。

今の形状はそれを突き詰めていく中で固まってきたもので、当初の自分の構想だけで作っていたら、今の形状にはなっていなかったと思います。また、今の形状も最終形ではないのかもしれません。

(量産化という夢の実現に向け、仲間も募集しているという小山氏)

――Open Challenge以降、様々なコンテストで賞を獲得するなど目まぐるしく活動されていますが、今後のビジョンを教えてください。

小山:いまは私が手作りでやっていますので、今は量産パートナーを探しています。いくつか手を挙げていただいている企業もあり、今後提携や業務委託などを進める必要があると思っています。いまNEDO TCP(注:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援プログラム)のファイナリストに選ばれまして、研究機関ではない個人の研究として認めていただけたのは光栄だと思います。

――量産化に向かっているということでしょうか?
小山:少量生産を1年ぐらいのうちにスタートし、2年くらいである程度の量を作れるよう、小さく早くやっていきたいと思っています。私のチームではエンジニアは私一人だけなので、一緒にやってくれる仲間を募集中です(笑)
[採用情報]https://plaque-detection.jimdo.com/採用情報/

AKIBAから一言

小山さんが開発されている「歯っぴ~」はインタビューにもある通り、様々なフィードバックにより機能やアピールの仕方についてピボット(方針転換)してきました。ユーザーフィードバックから試作を改善していく手法は「リーン」として知られていますが、その一方でプロダクトオーナーが自身のビジョンを貫き、フィードバックに反することになろうともピボットをしないという判断も時に重要です。
小山さんが今後何をピボットし、何をピボットせずに製品として世に出すのか。「歯っぴ~」の最終形が楽しみです。(DMM.make AKIBA エヴァンジェリスト 岡島康憲)

[ DMM.make AKIBAについて]
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