MAKERS #23「株式会社東京CEO 羅 悠鴻(ラ ユウホン)」――広告業界の革新をめざすエレベーターサイネージ「東京エレビ」

MAKERS #23「株式会社東京CEO 羅 悠鴻(ラ ユウホン)」――広告業界の革新をめざすエレベーターサイネージ「東京エレビ」

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2018/03/28
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・金子亜裕美)

毎日の通勤やショッピングセンターでの買い物で、多くの人が1日に何度もエレベーターに乗っているだろう。このエレベーターという密室空間を使ってビジネスを興そうというスタートアップがいる。エレベーターの中に広告を表示するデジタルサイネージ「東京 エレビ」を開発する株式会社東京のCEO羅悠鴻(ラ ユウホン)さんに、お話を伺った。

(東京エレビを紹介する東京CEO羅悠鴻氏)

<プロフィール>
株式会社東京CEO 羅 悠鴻(ら ゆうほん)
1993年、愛知県豊橋市生まれ。米沢、名古屋、神戸など日本各地を転々として育つ。東京大学理学系研究科 地球惑星科学専攻 所属。2014年3月にビジネスプランコンテスト「日刊工業新聞社主催キャンパスベンチャーグランプリ」にて奨励賞受賞、ボストンコンサルティンググループ、J.P.モルガン、モルガン・スタンレー、シティ証券などにてインターンを経験したのち、2017年2月に株式会社東京を創業。会社経営のため、昨年11月から休学中。好きな食べ物は桃。

株式会社東京
https://www.tokyo-inc.com/

――始めに、東京エレビについて教えてください。

羅:東京 エレビは、エレベーターに設置する防犯カメラ機能を備えた広告表示ディスプレイです。ビジネスモデルとしては、エレベーターのオーナーや管理会社にこれを設置していただき、広告収入を得るというものです。

会社名は、創業メンバーの好きな歌のタイトルからとって「東京」としました。設立したのは2017年2月10日で、社員は僕をいれて6名、全員東京大学の学生です。僕が東大のアカペラのサークルに参加するなど音楽をやっていて、今のCOO大塚とCDO新谷ともバンドを組んでいました。CTO熊谷とは大学で同じ語学クラスの友達でしたし、リードエンジニアの松本は熊谷と同じ東大大学院の航空宇宙工学科の修士です。ほぼ全員が4、5年以上の付き合いがある仲間です。

アイデアを描いた紙をもって銀座で飛び込み営業

――どのような流れで起業されたのですか?

羅:最初にエレベーターに広告を出すということを思いついたのは、大学3年のときです。研究室が入る建物にエレベーターがあって、その中の掲示板に英語で書かれた文章が張り出されていました。英語なので、最初はそれほど読もうとも思いませんでしたが、エレベーターに乗っているうちに意外とその掲示に目がいくことに気が付いたんです。エレベーターという密室空間の可能性というか、乗っている間も特にやることがない時間なので、この時間と空間を活用したエレベーター広告というアイデアを思いつきました。

思い立ったらすぐにやってみようということで、休日を利用してすぐに取り付けるのに適しているであろうエレベーターを回ってみました。最初は、まだエレベーターについても広告についても何の知識もありませんでしたから、エレベーターを持っているオーナーさんが多そうなのはやっぱり銀座かな?というイメージでまずは銀座に行きました(笑)

4、5階建てのビルで、上階にオーナーさんが住んでいそうなビルを訪ねて歩きました。その時まだモノがなかったので、エレベーターに広告を出すというアイデアを紙に描いて、「これをあなたのビルのエレベーターに付けてもらうことを約束していただければ開発します。いかがでしょうか?」という感じで、紙を持って朝から晩まで回りました。結局1件も取れませんでしたけど(笑)

――いきなりそれで回るとか、すごいガッツですね(笑)

(東京の他のメンバーと。取材時もメンバーはAKIBAで打ち合わせ中だった。)

大学院を休学、友人2人と起業する

羅:僕は大学院で地球惑星科学を専攻し、小惑星探査機「はやぶさ」に関係する研究に携わっていましたが、当時そのまま大学院を続けるか、別の進路に進むかで迷っていました。ちょうど就職活動の本選考が始まる頃、エレベーター広告のアイデアを話したところ興味をもってもらえ、「新しい会社をやってみよう」となりました。

まずは新谷はデザインができるのでCDOに、また起業するタイミングで熊谷がCTOとして加わりました。最初はディスプレイではなく「エレベーターのリノベーションをやろう」という切り口で、エレベーターの内側の全面にアルプスの写真を貼ってみたり、ドアにダンベルの写真を貼ってフィットネスの広告にすることなどを考えていました。いろいろ考えるうちにやはりデジタル化だということで、エレベーターサイネージに決めました。

起業と同時にDMM.make AKIBAに入居して、拠点にする

――DMM.make AKIBAには、どのようなきっかけで入居されましたか?

羅:まずオフィスが必要だったので、起業と同時にDMM.make AKIBAへ入りました。自宅をオフィスにする人もいますが、僕は自宅で仕事をしていると気が滅入りそうな感じがしたので(笑)
AKIBAは環境も良いですし、他のシェアオフィスとも比較したのですが、値段も安い。今ではメンバー全員が会員で、毎日のように来ています。僕も昨日は朝の4時までいました。

Eleviが今の形状になるまで、何度も試行錯誤を繰り返しました。最初のプロトタイプは木製の枠を使ったり、左右に開く障子型のものも作りました。

(何度もプロトタイピングを繰り返し、エレベーターへの設置と画面の視認性を検討したという。)

レーザーカッターやボール盤を使ってプロトタイピング

羅:初期のプロトタイプはAKIBAでMDFを購入し、10Fにあるレーザーカッターで切って、ボンドで接着して、を繰り返していました。今の外装は金属製ですが、金属パネルは加工業者に作ってもらい、カメラの位置を変えるなどの微調整は、10Fのボール盤を使ってやりました。

このモデルはエレベーターの中に設置するタイプですが、他にもエレベーターの外に置くディスプレイも検討しています。そのプロトタイプ制作には、10Fの3Dプリンターを使ってやってみたいです。

AKIBAでは、他の会員さんにプラスチック素材について教えてもらったり、量産製造について例えば深センで頼むと費用はどれくらいなのかという相談ができたりと、とても助かっています。それに他の方々の仕事をみていると参考にもなりますし、自分たちの励みにもなります。

エレベーター広告からスマホシェアリングへ

―将来はどのような未来を描いていますか?

羅:僕たちの描く未来ではエレベーターからもっと対象を広げて、中国の自転車シェアリングサービスのmobike(モバイク)のスマホ版をやってみたいと思っています。これで実現したいのは、街中のいろいろなところに誰でも使えるシェア端末を配置しておき、それを手に取って顔認証すると自分の端末として使えるようになる。将来的にはスマートフォンのシェアリングサービスのような、世界中の人に使ってもらえるサービスの提供が目標です。

(東京エレビの双方向メディアとしての強みを生かしたいと語る羅氏。)

会社のミッションは、全員が手ぶらでくらす「星作り」

羅:僕たちの会社のミッションは、全員が手ぶらでくらす「星作り」です。これは一見エレベーター広告と関係なさそうですが、将来的に目指しているのはインターネットを街中に、ばら撒くこと。何も持っていなくても、誰でもスマホを使えて、誰でもインターネットに接続できる世界を実現したいと思っています。僕たちは、東京エレビもエレベーターという空間にばら撒かれたインターネットデバイスのひとつだと考えています。

――エレベーターの中の広告から始めて、もっと大きく世の中を変革したいということでしょうか。

羅:今の広告業界の仕組みには課題があると思っていて、僕はまずこの広告のあり方を変えたい。現状のやり方では、テレビやネットの広告を不要とか邪魔に感じている人も多いと感じています。

――そうですね。確かに動画に入る広告をスキップしたり、ブラウザにポップアップされる広告をブロックしたりという人も多いです。

羅:この現状は、広告主にとってもユーザーにとっても、WIN-WINではなくLOSE-LOSEだと言えます。僕はこの原因は、コンテンツの視聴率が低いためだと思っていて、視聴率が1%だとすると、残りの99%の人にとってはその情報・コンテンツは不要で邪魔なものだと言えます。

この状況を何とかしたい、何とか変えたいと思っていて、僕らは「粋な広告」と呼んでいるのですが、目の前に立った人が自発的に見てしまうようなコンテンツを流して、見終わったらつい「ニヤリ」としてしまう、そんな広告を展開したいと考えています。

東京エレビの高い視聴率を生かしたモデルケースをつくる

羅:僕は、これを変える力があるのは、広告代理店よりもメディアサイド、つまり視聴率の高いメディアをもっている会社にあると思っています。東京エレビの視聴率は、90%を超えています。エレベーターの中に東京エレビがあれば必ず見てもらえます。これをモデルケースとして、広告を見るお客様の満足度も高くて、視聴率も高い、それこそが広告主へのメリットになる、という仕組みを実証したいと思っています。

(将来的にはグローバル展開を目指すという羅氏。夢の実現に向けて一緒に取り組むAndroidエンジニア、Webエンジニアを現在募集中だ。)

――今後の事業目標はどのように描かれていますか?

羅:日本にはエレベーターが約66万台あります。まずは最初の5年で東京エレビを 5万台導入したいですね。もしかしたら10年かかるかもしれませんが、どんどん導入していきたいです。将来は日本の人口の10%がユーザーになっているようなサービスに育てたいと考えています。

僕は東京エレビを「製品が東京エレビで紹介されていたよ」と話題になるようなメディアにするのが夢です。
例えば、全国紙の全面広告やテレビCMというのは広告という以上に何かエポックメイキングなメッセージ性があります。センター試験の直後に河合塾が「自分の夢まで、自己採点しないでください。」という全面広告を打ったり、ソフトバンクがSMAP×SMAPの最終回に「さよならじゃ、ないよな。SoftBank→SMAP」というCMを流したりしています。

それこそがメディアのブランド力なのだと思いますが、広告だけにとどまらず、流すことがニュースになりうるようなそれ以上の付加価値があるメディアにしていきたいと思っています。

将来はサービスのグローバル展開も視野に

羅:エレベーターがあるのは高いビル、つまりある程度の人口密度があってビルが高層に伸びていくような都市になります。世界でサービス展開するためには高い競争力が求められると思っていますので、ある程度東京で東京エレビの地盤を固めた上で、世界進出したいです。日本の次は例えばインドのデリー、インドネシアのジャカルタなど、これからさらに成長が見込まれている大都市を視野にいれ、グローバル展開を目指したいと思っています。

(編集・田中佑佳)

AKIBAから一言

ある日、DMM.make AKIBAのフリーアドレスエリアに、若い男子の集団が出現。時折キャッキャウフフしつつ、毎日みんなで頭を突き合わせて黙々と仕事をしている。かと思えば、CEOと思われる青年がホワイトボードに落書きをしていると、メンバーに「資料できたの?」と冷静にツッコミを入れられている。でも、とにかく楽しそう。気になって声を掛けてみたら、東大の学生を中心に起業したスタートアップとのことでした。っていうか、本当にかわいいな君たちは。それ以来、我が子を見守るような気持ちで陰ながら応援してきたのですが、彼らは毎朝欠かさずミーティングをして(リモートのメンバーもスカイプ参加している模様)、その日のタスクや進捗を確認しているようなのです。おお、ものすごくキチンとしている・・・!と感心させられつつ、本気でビジネスにしていこうという熱意が伝わってきます。いつも元気で明るい羅くんを中心に、みんなで楽しそうに仕事している株式会社東京の成長を、これからも楽しみにしてきたいと思います。

(とにかく仲良しで楽しそう)

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