MAKERS #25「株式会社Rhelixa代表 仲木竜」――計算生物学者にして秘密結社「ブロック団」の代表

MAKERS #25「株式会社Rhelixa代表 仲木竜」――計算生物学者にして秘密結社「ブロック団」の代表

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2018/05/30
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・金子亜裕美)

人間の遺伝子情報であるヒトゲノム。約30億塩基対のDNA(デオキシリボ核酸)から構成されるその配列は、2000年に初めて解読された。AKIBA界隈ではあまり耳にすることがない話かもしれないが、ゲノム情報を読み解く技術は革新的な飛躍を遂げており、私たちの生活にも深く関わり始めている。今回はゲノムに刻まれた生命情報を読み取り、活用する統合解析プラットフォームの創出を目指す株式会社Rhelixa(レリクサ)代表の仲木竜氏にお話を伺った。
仲木氏は、計算生物学者としてバイオベンチャーを運営する一方、レゴやダイヤブロックなどを使ったイベントを企画実行する秘密結社「ブロック団」の代表という一面も持つ。ヒトゲノムとレゴという、一見すると何の関連もなさそうな分野だが、どのような共通点があるのだろうか。

(株式会社Rhelixa代表 仲木竜氏)

<プロフィール>
仲木 竜(なかき りょう)
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。計算生物学者。大学院在学中に遺伝情報を読み解く解析技術を応用し研究開発を行う株式会社Rhelixaを設立。
株式会社Rhelixa: http://rhelixa.com

――バイオベンチャーRhelixaが、どのような会社なのか教えてください。

仲木:Rhelixaは、簡単に言うと自然がやっているものづくりを読み解いている会社です。生き物、例えば我々ヒトは頭があって手があってと、同じような形をしているわけですが、これは生命の設計図みたいなものがあるからです。動物でも植物でも身体が傷ついても直りますし、よほどのことにならない限り死にません。これもこの設計図があるからで、私たちの仕事は最終的にこの生命の設計図であるゲノムを読み解くことです。ゲノムを読み解いてその仕組みを知っていくということです。

ヒトゲノムを読み解くということ

仲木:我々の身体はとても複雑ですが、それを記述している設計図は実はすごくシンプルです。ゲノムの正体は二重らせん構造をしている長い分子なのですが、それを構成する物質はA(アデニン)/C(シトシン)/G(グアニン)/T(チミン)の4つしかありません。この複雑な身体も、ACGTの4種類の並んだ文字列により設計図が作られているということです。そして、こういうイベントが起きた時はこう対処をしようとか、年を取ったらこうなりますということも、基本的にはACGTの並びとしてゲノムに書かれています。

近年、ゲノム情報を読み解くことで特定の病気になりやすいかどうかを判定するというような遺伝子検査が行われています。この遺伝子検査では、ゲノムの「ここを見るとこう判断できる」という、すでにある程度読み解かれた部分を切り出して利用しています。実は、ACGTの並び方がわかっているけれども、その配列の持つ意味についてはまだまだわかっていないというのが現状です。

(ゲノム情報を使う企業は増えてきたが、独自に解析できる力があるところは少ないという)

私たちは、大学の先生や企業の研究者らと協力して、ゲノムを読み解くというB2Bをメインに研究開発をしています。Rhelixaのメンバーは、ゲノムの活性にどのような変化が生じてどのような病気になるのかとか、この病気を早期発見するための指標とかはどこを読み解けばいいのかなど、遺伝子情報を利用するための解析のプロフェッショナルです。

――遺伝子解析の最先端に取り組まれているわけですね。DMM.make AKIBAというと、バイオテクノロジーというよりは、ものづくりやハードウェアスタートアップというイメージが強いのですが、AKIBAとはどのようなきっかけでつながりができたのでしょうか?

AKIBAと出会うきっかけは「レゴブロック」

仲木:AKIBAに来ることになったのは、「ブロック団」というコミュニティがきっかけです。組織理念が「世界をよりよく洗脳する」という怪しい秘密結社なのですが(笑)

――急にわかり易い話になりました(笑)どのような団体なのでしょうか?

仲木:ブロック団は、レゴやダイヤブロックなどを使って、子どもや親子でいろいろなものをブロックで作るという活動をしています。ブロックって何種類ものパーツがありますが基本的にはシンプルで、凹凸を嵌め合わせながらブロックを組み合わせて形を作っていきます。誰でもやったことがあると思いますが、簡単なパーツを積み上げて、複雑な形や機能をもつものを作り上げるものです。

実際にやってみるとすごく面白くて、一つひとつのパーツは単純なのに組み合わせてみるとアートになったり、工学的な仕組みや道具になったりします。単純なものを組み合わせて複雑なものを作っているのですが、実はこれはゲノムの仕組みと似ています。単純なブロックを組み立てていくことと、単純な塩基の配列を読み解いていくこと。ものづくりという視点でみると、逆方向から同じことをやっていると言えます。

(ブロックの組み立てとゲノム解析は似ているところがあると語る仲木氏)

――ブロック団設立はいつ頃ですか?
仲木:ブロックを使って子どもたちや親御さんにものづくりマインドを植え付けていこうと考えたのがきっかけで、2015年6月頃に始めました。今Facebookで連絡を入れてくれているメンバーが500~600人くらい、中心になっている幹部メンバーが10~15人くらいで、定期的に集まっています。ブロックのストックは、AKIBAの倉庫に200kg分くらい置かせてもらっています。

子どもと大人が手加減なしで競えるのがブロックの良いところ

――どのようなイベントを開催されているのでしょうか?

仲木:ブロックが面白いのは、子どもと大人が本気で一緒に遊べることです。たくさんのブロックをプールにバーンと入れて、作るテーマ決めるだけ、あとはお任せというスタイルですね。大人ってけっこう固定概念が強くて、例えば食べ物をテーマにすると、食べ物らしいものを作ろうとするんです。そうすると、この色がないとか、この形がないとか、なかなか作れない。でも子どもって、頭の中でどんどん想像を膨らませて組み合わせ、自由にブロックを積んでくる。だから大人は手加減などしなくても、子どもに勝てないんです(笑)

僕は、子どもにプログラミングとかさせているのをみると、つまんないなって思って。

――え?プログラミングはつまらないと思われますか?

自由な発想を引き出すことの大切さ

仲木:いま子どもたちが大人になる頃には今のようにゼロからプログラムを書くことはほとんどなくなっているでしょうし、単純な技術としてのプログラミングをやらせること自体には意味がないと思っています。どちらかというと、頭の中にあるゴチャゴチャしているものを、どのように形にするのかとか、ここが面白いという目の付け所を持つことのほうが大切だと思っています。ブロック団の活動というのは、あくまでもその子の中に眠っているものを引き出すことに重きを置いています。

(十人十色の発想こそがブロックの面白いところ、という仲木氏)

仲木:面白いのは、同じテーマを作らせてみても、工学的なものを作る人もいれば、アートっぽいものを作る人や、物語を重視して作る人もいます。いろいろな子どもがいて、特性が違いますし、そこに一律に同じものを当てはめようとしてもつまらないし、そういうことはしたくない。人任せ、子ども任せのイベントばかりやっていますが、それはブロック団にしかできないことかもしれないと思っています。

こういう理念に対して同調してくれる人、サポートしてくれる人、それが面白いと思ってくれる人たちは、日本中探してもAKIBAに一番集まっていると感じています。

――ブロックに本格的に取り組まれたのはいつ頃ですか?

仲木:小さい頃からレゴによる作品制作は行っていたのですが、本格的にクリエーターとして活動を始めたのは大学院に入ってからです。大学にもレゴサークルのようなものはありましたが、僕自身はレゴで何かを模写するとか、巨大なものを作るとかは、ちょっと違うかなと思って。

限られた条件の中で解決策を見出すこと

複雑な機構をつくることだけが目的じゃなくて、複雑なものを4個のブロックで表現できるということもすごいかなと。たくさんの部品を組み合わせて精巧なものを作ることは難しいですが、限られたパーツの中でデフォルメをしながら組み上げていくというのも簡単じゃありません。

――限られた条件の中でどう表現するのかが、クリエイター魂ということでしょうか。

仲木:この前、アスパラガスの皮を自動でむく機械というのをレゴで作りました(笑)意味がないようなものを作るのが好きなのですが、かなり手の込んだことでもブロックで出来るんです。

何かを作ろうとするとき、すべてが揃っているわけではなくて、色が違っていたり形が違っていたりします。限られた条件の中で試行錯誤しながら作っていく能力は、大人になっても必要だと思います。あるものを使って、いかに上手く作るのかをブロックを通して考えていければ面白いかなと思っています。

https://www.youtube.com/watch?v=CWNcUHKeZaY&t=104s

――AKIBAでもイベントを開催されていると伺いました。どのように運営されているのでしょうか?

仲木:最初はイベントをやりながらその参加費をいただいていました。今ではスポンサーになっていただいたり、こういうものをつくってくれという依頼をいただいたり、外注でデザインをすることも増えてきました。最近では外注を受けすぎて、あまりイベント出来ていなくて。外注だと守秘義務があるので公にできず、ほんとうに秘密結社みたいになりつつあって、申し訳ないと思っています(笑)

AKIBAで活動していると、いろいろな人がいていろいろな機械もあって、ブロックでこれができる、そこから発展するとこうなる、というのが繋がります。イベントだけだと今後どうなるのかまでは見えなかったりするんですが、ブロック団ではIntelさんとコラボして、Edisonを使って動きを制御したものを作ったりしています。AKIBAとのつながりの中で、ものづくりの先まで見えるのが良いところだと思っています。

――ブロック団、楽しそうですね。AKIBAとの関係、バイオベンチャーとしてはいかがでしょうか?

一般家庭で遺伝情報を活用するような時代が来る

仲木:遺伝子に関連した技術は、今後5年10年で私たちの生活にもっと入ってくると思っています。例えば、帰宅時に今日変な病原菌やウイスルを持って帰ってないかどうかとか、何かしらの病気のリスクは上がっていないかとか、今日の食材はどこから来たものなのかとか、そうしたことも全部ゲノムで調べられます。これを家庭で出来るようにするためには、ゲノムを読み解く機械が必要になりますが、僕のところではデバイスは作れません。制御システムや解読するソフトウェアは作れますが、ハードウェアが作れない。

(5年10年先にゲノム関連技術が一般家庭にも普及する可能性がある)

インターネット経由で私たちが提供するシステムに接続してその解析結果を利用するようなポータブルゲノムシーケンサーを、将来的に1家に1台、体温計並みに普及させたいですね。これはもうちょっとしたデバイスとかアプリのレベルではなく、世界が変わるレベルのものなので、それをAKIBAを中心に作っていければすごいことだと思います。

――AKIBA発ポータブルゲノムシーケンサーですね。

仲木:今はIoTやドローンがブームと言われていますが、流行してから始めたのでは後追いになります。グローバルなフィールドで勝負するためには、数年先を見越して動く必要があると思います。これからは、全てがゲノムの上で測れるような世界に変わっていくとみていますので、ぜひ「DMM.バイオ」も作っていただければと思っています。

――今後どのようなことを考えていらっしゃいますか?

仲木:AKIBAではブロック団の活動が中心で、直接本業の役に立っているわけではありませんが、AKIBAを通じ、ものづくりを志す人を育てていけば、将来その人たちがバイオを目指すかもしれません。これからは、ものづくりもバイオやヘルスケアなど、工学以外の分野も入れていくことが大切になっていくと考えていますし、その意味で私たちが必要とされる場も多くなってくると思っています。

(編集・田中佑佳)

AKIBAから一言

AKIBAでは、ブロック団リーダーの「りょうちゃん」として知られている仲木さん。DMM.make scholarshipにも、国内屈指の(!?)凄腕レゴビルダーとしての応募でした。応募時のプレゼンテーションでレゴ製自動紅茶マシーンのYouTube動画を見せてもらい、東京大学にはとんでもない人がいるものだと驚嘆したものです。そういうわけで、のちのち実はエピゲノム情報の大規模解析プロジェクトを主導した研究者(=すごい人)である、ということを知るまでは、完全にレゴフリークとしか認識していませんでした。きっとそう思っていた人は私だけではないはず・・・。そのくらい、気さくで愉快で親しみやすい人柄が、りょうちゃんのチャームポイントだと思います。

これからもブロック団として「世界をよりよく洗脳する」活動もしていただきつつ、DMM.make AKIBAでは少数派のバイオ系ベンチャーとしてご活躍を楽しみにしています。

[ DMM.make AKIBAについて]
株式会社DMM.comが運営する「DMM.make AKIBA」は、ハードウェア開発・試作に必要な機材を取り揃えた「Studio」、シェアオフィスやイベントスペースなどビジネスの拠点として利用できる「Base」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設です。

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