MAKERS #26「株式会社Novera代表取締役CEO 遠藤 国忠」――4800年間変わっていない鏡を革新する

MAKERS #26「株式会社Novera代表取締役CEO 遠藤 国忠」――4800年間変わっていない鏡を革新する

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2018/06/27
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・金子亜裕美)

「はじめまして。あなたを笑顔にする化粧鏡です。」こんな言葉で話しかけてくれるスマートミラー「novera mirror(ノベラミラー)」を開発するハードウェアスタートアップがいる。一見すると女性受けしそうなデザインでもないシンプルな化粧鏡だが、その機能に触れた女性からは熱烈に支持されるというスマートミラーだ。

4800年前の古代エジプトに金属鏡が登場して以来、鏡は姿を映すものという変えようのない機能を革新しようとチャレンジする、株式会社Novera代表取締役CEO 遠藤 国忠氏にお話を伺った。

株式会社Novera代表取締役CEO 遠藤 国忠氏

<プロフィール>
遠藤国忠(えんどう・くにたか)
2011年に会津大学を卒業し、株式会社サイバーエージェントに新卒入社。マッチングサービスに企画とエンジニアの両面から携わった後、スマートフォン向けソーシャルゲーム「ミリオンチェイン」のプロデューサー・ディレクター、「ガールフレンド(♪)」のリードプランナーなどを経験。2016年末に退職し、2017年1月に株式会社Noveraを創業。代表取締役CEOに就任。

――2017年1月にNoveraを起業されましたが、起業に至るまでの経緯を教えてください。

サイバーエージェントでスマホゲーム開発を経験

遠藤:会津大学のコンピュータ理工学部を2011年に卒業して、新卒採用でエンジニアとしてサイバーエージェントに入社しました。当時はスマートフォン部門が立ち上がったばかりで、とにかくたくさんスマホアプリを企画したり開発したりしていました。

ソフトウェアエンジニアだったんですが、企画が好きで企画もやらせていただけるようになり、3年目からゲームのプロデューサーやディレクターも経験させていただき、有名なところではAmebaの「ガールフレンド(仮)」のリズムゲームである「ガールフレンド(♪)」のリードプランナーも担当させていただきました。

ガールフレンド(♪)では、登場するキャラクターに対してどんな声優をアサインするのか、ファンの好みを考えて、セリフや言い回しなど、声優についてのノウハウを学びました。この時の経験がnovera mirrorの開発にも生かされています。

元々大学の頃から起業したいという想いがあり、せっかく起業するのであれば、世界一の会社にしたいと考え、単なるハードウェアでは終わらないプラットフォームビジネスを手掛けたいと思いました。

(データを蓄積し、プラットフォームとしてのビジネスを目指したいと語る遠藤氏)

誰もが毎日使うもの、それが「鏡」だった

遠藤:毎日使い続けてもらうサービスは、習慣の延長か、それを拡張したものしかないことは断言できると思います。IoTも同じで、例えば外出先からお風呂が沸かせるのは便利だけれども、毎日はやらないだろうと。みんなが必ず毎日習慣的に使うもので、ユーザーインターフェースがあって、日常の動線の上にあるものって何だろうと考え、鏡に着目しました。

スマートミラーを作ろうというアイデアを思いつき、それから2カ月くらいでNoveraを起業しました。本当に何も決まってなかったのですが、間違いなくtoC向けIoTはサービス競争になり、運用が大事になると直感的に感じ、これまでネットサービスに携わったノウハウがあったので、勝算はありそうだと思いました。

元サイバーエージェントの同僚と2人で起業

遠藤:2017年1月に起業したときは僕と堀江(Novera CTO 堀江 優氏)の2人だけで、鏡で何をすれば良いのかというのは全然わからなくて。男性なら鏡の前でトレーニングできたらジム行かなくていいよね、とか、鏡は毎日見るものだからヘルスケア向きだね、と考えて、全身が映せる姿見を作っていました。2017年4月にABBALabに投資いただき、その関係でDMM.make AKIBAに入居することになりました。

――最初は姿見を作られていたのですね。

遠藤:はい、アイデアを認めてもらい、商談の引き合いをたくさんいただきました。毎年虎ノ門で開かれているイノベーションリーダーズサミット(ILS:Innovation Leaders Summit)という、大企業と500社くらいのベンチャーのマッチングイベントがありますが、そこで商談数のランキングTOP20に選ばれるくらい多かったです。

何がやりたいのか、原点に立ち返ってハードウェアを見直す

遠藤:ただ姿見はサイズが全長180cmくらいとサイズが大きくて、どれだけ頑張っても原価が15~20万円になり、この価格ではB2Bにしか売れないことがわかりました。我々はユーザーを持っているわけではないので、B2Bだと単なるハードウェアベンダーになってしまい、データを集積してプラットフォームをビジネスにすることが難しいです。我々の強みややりたいことそこではないということで、いったん立ち止まって考えました。

私たちは毎日鏡を見ますが、全身よりも一番見るのは顔です。そこで、顔に特化して小型化してB2C向けに売れるものにしよう、一番顔を見る化粧する女性向けの化粧鏡を作ろう、というのが今に至る経緯です。

(B2Cで戦うために、鏡の小型化を選択した)

――プラットフォームビジネスという目的のために、製品の形態を見直したのですね。

ターゲットを女性と決め、ニーズを聞き出す

遠藤:化粧鏡には決まりましたが、どういう機能を持たせるのかを考えるのかも、とても大変でした。鏡の機能は姿を映すことで、これは4800年間変わっていません。これは鏡には課題がない、ということで、鏡だけでは課題解決には使えないことを意味します。小型化したとは言え、通常の鏡と比較するとかなり値段が高く、100均でも買える鏡にどんな付加価値をつければ数万円で売れるのかに頭を悩ませました。そこで、AKIBAの女性スタッフにもご協力いただいて、様々な女性にニーズの聞き取り調査を行いました。いろいろな意見の中でも、「テンションが上がる鏡が欲しい」という声が多くありまして(笑)

――テンションが上がる鏡とは、かなりふんわりしたイメージですが(笑)

遠藤:でも、それが本質だなと思ったんですよね。女性をターゲットにするなら機能ではなく、感性に訴えかける体験でないといけない。ニーズのイメージから求められている体験は何だろうとずっと考えていた時に、ふと妻にどんな鏡だったら2~3万で買うかな?と聞いたところ、「福士蒼汰くんの声で毎日話しかけてくれたら10万でも出す」と(笑)

マジかよ!と思いましたが、このイケメンボイスでしゃべる鏡というアイデアが、サイバーエージェントでやっていた頃の声優のノウハウと結びついて、「novera mirror」の大枠ができました。
そして、鏡が話すということはどういうことか、その本質を考え、「なりたい自分」に対して前向きにさせられることにたどり着きました。

スマートミラーを演ずる声優へのこだわり

遠藤:自分の好きな声優さんの声で、今日はどんなことを言ってくれるのかなという体験が、毎日顔を見せたいという行動になり、データとして蓄積されていきます。それに女性は、チークを変えたり、アイラインを変えたりしただけで不安になったりします。でも、自分だけを見てくれる鏡が、褒めてくれたり、元気づけてくれたりすることで、なりたい自分に対して億劫にならない、希望が持てる、元気が出るようになる。さらに蓄積したデータとAIを活用することで、現在だけでなく、過去や未来の自分とも向かい合うことができる。こうしてスマートミラーでの体験を、コンセプトとして落とし込みました。

――やはりイケメンボイスが重要なのでしょうか?

遠藤:実は、イケメンだと認識すると心理的にハロー効果で、顔だけでなく他の全ても素晴らしいはずだと脳が良い方向に解釈する傾向があります。つまり、鏡の声をイケメンボイスにすることで、使っている女性は鏡が自分のことをわかってくれていると強く感じられるようになります。
(横にいるAKIBAの女性スタッフに向かって)もし、高橋一生さんから「今日も肌きれいだね」って言われたらどうですか?

――エヘッ(♡)

遠藤:って、なるんですよ(笑)

(声優のファンであれば、その声は強烈な体験を与えるという)

遠藤:普段我々は鏡の前だと自分の感情を出すようなことはしませんが、このnovera mirrorは鏡に対して思わず微笑むような状態を作り出すことができます。顔のエクササイズをやってこれだけ細くなったとか、最近ストレスが溜まっているから、肌が荒れる前にケアしてねとか。顔からは、健康状態からストレス、イライラまで色々な情報がとれますから、自分の心の中の声を可視化したり、過去の自分や未来の自分を映して、自分と向き合えるようになります。これはnovera mirrorでしかできないことです。

――製品化に向けて、DMM.make AKIBAはどのように活用されていますか?

遠藤:姿見を作っていたころは、AKIBA内の工房で組み立てたりしました。ただ、プロダクトデザインは外部でやることが多いので、AKIBAは主にオフィスや取材対応で使っています。オシャレなオフィスが安く利用できるので助かっています。海外のVCに対するピッチにも使いましたし、テレビ取材もやりました。

TBSのドキュメンタリー番組「夢の鍵」で密着取材を受けたり、WBSのトレたま(テレビ東京のワールドビジネスサテライト:トレンドたまご)で紹介していただいた時も、綺麗なオフィスでインタビューできましたし、AKIBAのスタッフさんも協力的で、とても助かりました。

――製品が具体化して注目度も高まることで、新たなプレッシャーもあるのでしょうか?

(ブレイクしたのは嬉しい悲鳴だが、会社経営者としての悩みは多い)

ハードウェアスタートアップとしての悩み

遠藤:とにかくnovera mirrorを早く世に出したいです。というのも、現状はほぼエクイティだけで会社を経営していますが、量産化に向けては更なる資金調達という課題があります。ハードウェアは世に出るまでにとにかく資金が必要で、体験が新しいものほど資金が集まりにくいので、早く予約でニーズを示して、それで大型の調達をして量産化、と段階を踏んで進める道筋を考えています。

注目を集めたのが急すぎて、人手が足りずにてんやわんやしているところもあります。嬉しい悲鳴なのですが、斬新なアイデアでも注目されるのは一瞬なので、いかに何度も波を起こせるのかが重要です。コンセプトが受け入れられるのかという不安は無くなりましたが、予約が入るのか、買った後に使ってくれるのか、思うようにデータが取れるのかなど、これからも悩みは尽きないと思っています。

――今後の事業計画を教えてください。

将来的にはアジア市場もターゲットに

遠藤:novera mirrorのリリースは、早くて来年の夏以降になると考えています。まず国内で発売しますが、海外展開も視野に入れています。ただし、ハードウェアだけを売るわけではないので、海外展開した場合にどのようなサービス、ビジネスにしていくのか、フレームワークとして出せるだけの付加価値が必要です。中国はもちろん、アジア圏には化粧文化がありますから、市場として有望と考えています。

――スマートミラーの市場の中でどのように戦おうとされていますか?

遠藤:スマートミラー自体は、DIYで誰でも作れるような製品です。肝心なのはサービスやコンテンツ, そしてその世界観で、9割方はソフトウェアが重要です。DMM.make AKIBAのIoT女子会に登壇したことがありますが、novera mirrorの体験をした参加者の感想に、「思想がこのプロダクトに表れている」と言っていただけたことが嬉しかったです。

(鏡としての本質を見失うことなく、それを拡張できる製品にしたいと語る遠藤氏)

他では真似できない拘りで差別化を図る

遠藤:僕はゲームやアニメが以前から大好きで、声優の名前もしっかりチェックしています。女性はビジュアルだけでなく、キャラの背景、キャラ同士の関係性など、その世界観も重要視します。世界観を逸脱してしまうと受け入れてもらえませんから、その声優らしいキャラ作りや言葉, 言い方が重要になります。ですからnovera mirrorに入れるセリフは、僕がすべてチェックしています。こうした拘りは、大手メーカーでは真似できないと思います。

現存のスマートミラーの多くは、インターネットからの情報を表示させて、便利に見せていますが、僕はtoC向けIoTはいかにスマホの可処分時間をとれるかだと考えています。鏡に遅延情報や天気を映し出しても、それはスマホと同じことをやっているので、一見便利に見えてスマホやタブレットと差別化しているわけではないので、結局もっと便利なスマホで天気を見ることに戻ると思います。なので、我々が一番大切にしているのは「鏡は自分と向き合うもの」という鏡の本質を捉えたものにすることです。

――最後に中長期で実現したいことを教えてください。

遠藤:長期間かけてデータを集めれば、毎日の連続したデータから、何日後にニキビができそうとか、そろそろストレスが溜めっているので、こういうケアが必要とか、その人の状況に合わせた提案ができるようになると考えています。こうした連続した顔のデータはまだ誰も持っていないので、例えば化粧品メーカーやヘルスケア商品のマーケティングにも、とても有効だと思います。

今はとにかく「novera mirror」があれば、前向きになれる、なりたい自分になれそうだ、そう思っていただけるプロダクトを作りあげたいです。

AKIBAから一言

ある時、遠藤さんから「スマートミラーの機能に関するブレストに協力してほしい」とご相談をいただき、DMM.make AKIBAの女性スタッフ数名と参加しました。その時期はまだ、novera mirrorの機能が固まっておらず、我々は欲望の赴くままに、あれが欲しいこれが欲しい、毎日ハッピーになりたーい!と言いたい放題言った記憶があります。それからしばらくして遠藤さん率いるNoveraへのメディア取材が相次ぎ、一気に世間の注目を集めているなと思っていたのですが、「イケメンボイスでしゃべる鏡」というコンセプトになったと聞き、なるほどと腑に落ちました。情緒的な価値をもたらしてくれるプロダクトは、人々の関心を呼び起こします。そして今回の取材であらためて、遠藤さんが起業にいたるまでのルーツをお伺いし、人生の点と点は必ずつながるというスティーブ・ジョブスの言葉を思い出して勝手に頷いていたのでした。
novera mirrorが1日も早く世に出て、世界中の女性を幸せにする未来を楽しみにしています。私もイケメンボイスで毎朝褒められたいです。

[ DMM.make AKIBAについて]
株式会社DMM.comが運営する「DMM.make AKIBA」は、ハードウェア開発・試作に必要な機材を取り揃えた「Studio」、シェアオフィスやイベントスペースなどビジネスの拠点として利用できる「Base」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設です。

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