MAKERS #40 「クリエイター DAN NAKAMURA」――「透明」を追い求める若きクリエイターの挑戦

MAKERS #40 「クリエイター DAN NAKAMURA」――「透明」を追い求める若きクリエイターの挑戦

DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBA (ID4043) 公認maker 2019/09/18
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このコーナーでは、DMM.make AKIBAを拠点に活躍しているメイカーズにインタビュー。
モノ作りをしている方々の仕事内容や、技術に関するホットなトピック、そしてオフィス内の制作環境を中心に御紹介。話題作りに御一読を!(文・後藤銀河/写真・越智岳人)

今回インタビューしたのは、DMM.make AKIBA(以下AKIBA)のSCHOLARSHIP(スカラシップ)生として活動しているクリエイター「DAN NAKAMURA」氏だ。
いかに新しく美しいものを作るのかということをテーマにする氏の最新作は、なんとライオンと一緒に作るシャンデリアだという。これまで誰もやったことのない新しい価値観を生み出そうとする若きクリエイターの挑戦について、お話を伺った。

<プロフィール>
DAN NAKAMURA(だん なかむら)
1995年 佐賀県生まれ。
京都造形芸術大学院超領域プログラム修士課程在学中
2015年 世界経済フォーラム(ダボス会議)「World Economic Forum - Global Shapers Community」メンバー選出 Design storys 第1回アート&デザイン新世代賞 最優秀賞グランプリ受賞
IG:danchim

https://dannakamura.jp/

――代表的な作品を教えて頂けますか?

DAN氏:再利用可能な資源であるプラスチックを使ったジュエリーを制作しています。いろいろな工場から出てくるプラスチック片などのゴミを集めて、それを溶かしたり、磨き上げたり、削ったり捨てられるプラスチックをダイヤモンドの原石のように磨き上げます。

ゴミをジュエリーに変えて価値を高めるアップサイクルを目指す

――廃プラスチックをリサイクルしてジュエリーを作っているということでしょうか?

DAN氏:リサイクルのようにサステナブルなものづくりなのですが、リサイクルという言葉はゴミを再資源化するという意味です。僕の場合は、ゴミをジュエリーにすることで価値を高めていますので、単なるリサイクルではなく「アップサイクル」という概念になります。

継続的に取り組んでいることは、プラスチックを使って高価なブランドモノなどと同じ価値を生み出せないか、というチャレンジです。プラスチックでワニ革を再現し、これを素材として熱分解して何度も繰り返し使うことができるワニ革のバッグを作りました。

プラスチックで作った「透明なワニ革」とバッグ

DAN氏:またこちらは、アクリルにしたワニ革を曲げて作ったバングルです。ワニは水辺に棲む生き物じゃないですか。なので、素材を磨くプロセスも自然と同じにすることを意識しています。普通は仕上げにはグラインダーを使ってバフ掛けするんですが、これは造形後に、竹のチップと油と水と炭などと一緒に大きな回転ドラムの中に入れて、何日もグルグル回して研磨しています。それによって、川の上流から石が流されながら丸く削られていくように、プラスチックのワニ革の表面を削ることで、人工的ではない丸みを出しています。

透明なワニ革のバングル。エッジや表面の処理を工夫し、自然な質感に仕上げている

――自然と同じように研磨することで、より本物の手触りや質感に近づけているわけですね。確かに、透明なのにワニ革のリアルさを感じますね。

DAN氏:クロコダイルのバッグは高価ですが、プラスチックのワニ革であれば、バッグに飽きたらジュエリーにしたり、カトラリーにしたり、まったく別のものに変えることができます。僕は、新しい豊かさの定義は、お金とか価値ではなくて、何かを生み出すエネルギーこそが新たな豊かさじゃないかと思って、透明なプラスチックに着目して制作を続けています。

――AKIBAで制作されている作品はどのようなものでしょうか?

DAN氏:ここで制作しているのは、透明なプラスチックを使った、高さ1.8mほどのシャンデリアです。まだ世界にないシャンデリアを作りたい、人間の磨きでは作る事の出来ない新しい輝きを作りたいという想いから、自然にできる傷や割れた破片の断面の輝きに注目しました。そこでライオンに協力してもらい、牙や爪で磨いたパーツを使ってシャンデリアを制作しました。

AKIBAの設備を使って制作したシャンデリア

――ワニとライオン。確かに動物繋がりですが、どのような経緯でシャンデリアを作ろうと?

DAN氏:このワニ革が、辻仁成さんが主催するDesign Storiesの「アート&デザイン新世代賞」で最優秀賞を頂きました。それで半年ほどヨーロッパ留学をさせていただいて、パリとロンドンに行く機会が頂けました。ロンドンには世界最初の動物園があったり、800年前のジュエリーを見たことから、このシャンデリアの構想を思いつきました。

ライオンのひっかき傷や歯型がついたシャンデリアのピース

自然が生み出す傷、そこから生まれる光の美しさ

DAN氏:傷があるからこそ、そこに光が集まるし、バキッと自然に割れたヒビだからこそ、光を美しく乱反射します。この時の体験が、如何に美しい傷を作るのかを考えるきっかけになりました。ライオンによって細かく砕かれたピースを、僕が紡ぎあわせて集合体にしたものが、このシャンデリアです。

――ライオンが傷を付けたとのことですが、簡単なことではないですよね。

DAN氏:たくさんの方々に協力していただき、シャンデリアを制作する事ができました。色々な立場で考え方の違う相手がいます。それぞれの人達に理解していただけるように、話をして意見を擦り合せて、チームとして1個のモノを作り上げる。僕ひとりでは作品の制作はできません。シャンデリアの制作にも80人くらいの人がチームとして関わっていただいています。これが、自分なりのモノづくりだということをすごく意識しています。

チームメンバーに配ったというキーホルダー

DAN氏:これはシャンデリアのピースと同じように傷を付けたアクリルを10Fの機材で研磨して、レーザーカッターで僕の名前を入れ、協力してくださった皆さんとお揃いで作ったキーホルダーです。作品を作るのも大事ですが、チームとしてメンバーの想いやモチベーションがあって、この作品に携わってくれている。その想いを大切にしたいと、こうした関係性までもクリエイティブに作ろうと考えました。

一人ではできないことを、チームとして実現することの大切さ

――人との関係性をすごく大切にされているんですね。

DAN氏:「関わる人全てのステータスに」ということは凄く意識してます。たくさんの皆さんにご協力していただいて作品ができています。DANくんの作品のここを手伝った!というのが協力していただいた皆さんの自慢になってくれたら嬉しいな、それが一番の敬意だと思っています。だからこそ、リーダーとして、自分の熱量の伝え方は、すごく意識しています。どんな言葉だったら相手が一番理解しやすいのか、相手の言語で話す事は意識しています。

――AKIBAを使うようになったきっかけを教えてください。

DAN氏:京都造形芸術大学に通っていて、今は大学院の修士課程2年生です。京都から東京キャンパスに変わって、拠点を東京に移したこともあり、AKIBAを使い始めました。

このシャンデリアのピースは、全部で1600個あります。10Fのボール盤を使って、それぞれのピースに2個ずつ、合計3200個の穴をあけて組み立てました。AKIBAには終電で来て、始発で帰るみたいな形で、ずっと作業していました。日中にボール盤を占拠してしまうのは申し訳なくて(笑)

展示会用のキャプションも、レーザー加工してスプレーガンで塗装して、博物館にある展示パネルみたいに、きれいに作る方法をテックスタッフの方に教わって、制作しました。1台目のシャンデリアは作品として完成して、今福岡の方を巡回しています。

設備を使いたいときに使えるのがAKIBAの良さ

――AKIBAは使い易いですか?

DAN氏:使い易いですね。他の施設では利用できる時間が限られていますが、AKIBAは24時間いつでも使えるので、作りたいときにサクッと来てサクッと作れます。自分に合わせてフレキシブルに使えるので助かっています。

10FのWorksで、ひたすらボール盤で穴を開けているという

シャンデリアのピースも、最初はペンチで押さえながら 1個1個穴を空けていました。するとテックスタッフの方に、「それじゃいつまでたっても終わらないよ」と言われて(笑)それで、板の上に剥離しやすい両面テープを貼って、その上にピースを並べて次々と穴をあけてみたら、と教えてもらいました。

AKIBAでは、使い方とか技術だけじゃなくて、生産性とかちょっとした工夫とかまで教えて頂けるのがありがたいです。

――ワニ革とシャンデリア、どちらも透明だということを強調されています。

DAN氏:透明には拘りがありますね。僕は、透明こそ最もラグジュアリーだと思っています。ガラスもアクリルも温度が上がると焦げて変色してしまうので、作り手として透明なものを作るのが一番難しい。傷がついても指紋が付いてもダメだし、透明は最高級で繊細、モノの価値を上げるものだと思っています。

透明性には3つの意味がある

DAN氏:身につけてもらうジュエリーであるからこそ、素材としての透明性、アップサイクルのプロセスの透明性にも配慮しています。例えば宝石を産み出す鉱山では争いが起きていたり、子どもが搾取されたり、誰かが泣きながら作っているものを、身につけてしまっているのではないか。本来、人を幸せにするジュエリーなのに、そのプロセスが不透明だと疑問を抱いてしまいます。

素材の生産から廃棄まで、プロセスにも透明性が求められる

DAN氏:でも、プラスチックなら自分で作れるし、バッグを溶かしてカトラリーに作り替えたとしても、再利用するプロセスまで透明にできます。生産するプロセスが透明、廃棄するプロセスが透明、そして見た目が透明、という3つの透明を意識しています。今、マイクロプラスチックの問題とかも言われていますが、プラスチックを使い捨てにしないことに対しても、僕にしかできないことがあると思っています。

――次の制作も透明な作品になるのでしょうか。

DAN氏:今は2台目のシャンデリアを制作しています。今度はワニ革のウロコの部分をピースにして作ろうとしていますが、平らでなくて丸みがあるので、穴を開けるようとすると割れてしまって。試行錯誤しながら進めています。

僕は、常に次に何を作ろうということをずっと考えています。これから10年後、20年後でも、同じ気持ちでいられたら良いなと思っています(笑)

編集後記

インタビューの際、ライターから質問するまでもなく次々と作品や製作についておもろしくわかりやすくお話ししてくれたDANさん。話の仕方が上手なのはもちろん、相手をみて相手に届くように伝えたいというきもちが話している内容からも、また話している様子からも受け取ることができました。

1つのプロダクトを作り上げるために、場所や業界の垣根を越えて1つのチームとして動いていけるように考え行動しているという話を聞いて、自分だけではできないモノづくりをするうえでとても大事なことを実践できているということがなにより彼の魅力なのだろうと感じます。また今後のプロダクトで一体どのような関係性を形にしてくれるのか、楽しみに活動を追いかけていきたいです。

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