待ち工場から 考えて動く町工場へ進化したい(1)「待ち工場からの発信開始」

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海内工業(湊研太郎) 0

わたくし、横浜にある海内工業という町工場で働いています。

海内工業は、創業 50 年を超える精密板金加工の会社です 。普段は、金融機器や医療器などの内部に組み込まれる内部部品等を加工しています。
みなさんに精密板金について少しでも知ってもらえたらうれしいなと思い、ライターをやらせていただくことになりました。

精密板金加工とは、どんな加工か?

皆さんの「板金」という言葉からイメージされるのは、どのようなものでしょうか? おそらく多くの方は、自動車のボディの凹みを修正するような叩き板金をイメージされるのではないかと思います。

試しに、検索サイトなどで、「板金」というキーワードで画像検索してみますと、車の画像が数多く出てきます。他にも板金というワードからは、建築に使われるような建材のイメージを持つ方も多いのかもしれませんね。

Google 画像検索:板金 http://www.google.co.jp/search?q=板金&tbm=isch

今回紹介していくのは、そのどちらでも無く「精密板金」というカテゴリーになります。

精密板金加工とは、文字通り、板を精密加工していきます。

イメージとしては、折り紙を想像してもらえるとわかりやすいと思います。折り紙は、「切る」「折り曲げる」「組み合わせる」という要素を使い、1 枚の紙が様々な形状に姿を変えていきます。精密板金加工も同じような要素を使い、1 枚の板を様々な形状へと変化させていきます。

精密板金で加工される部品の多くは、産業機器の筐体や内部の機構部品に組みこまれているものになります。 精密板金の分野は、幅が広く大きな機器の筐体やカバーから、精密な機器のコネクタ部品まで多岐に渡ります。
先ほどのように、叩き板金などの修正のイメージが強いのか、はたまた筐体やカバーなどのイメージの方が強いのか、残念なことに、一般的にエンジニアや設計者の方からは、あまり精度が出ない金属加工だと思われているようです。

今回の連載では、素材や加工の紹介、設計に対しての注意点などを紹介させていただけたらなと考えています。その中でこれも板金加工でできるんだって発見してもらえるとうれしいです。

金属板の切断

最近は、レーザーカッターの普及もあり、アクリル板や木材であれば気軽に様々な形状に切断できるようになってきましたが、金属などは、出力の関係でまだまだ切断できない現状だと思います。

金属の切断方法は様々です。
薄い材料であれば、金切りバサミやダイヤモンドカッターなどでも切断は可能です。 精密板金工場ですと、シャーリング、レーザー加工機、タレットパンチプレス、金型加工などがメインになります。他にもエッチングやバンドソー、ウォータージェットなど様々な加工方法がありますが、切断したい金属や厚さ、精度によって加工方法も変わってくるのではと思います。

レーザー加工について

今回はレーザー加工について触れたいと思います。
加工は下記のような形になります。

http://youtu.be/dIeZEHBUdQ8

もし、町工場に依頼するとなると、CAD データを作って依頼するのが良いと思います。 (曲げ加工に関してですが、こちらはまた別途で書いていきたいと思います。)
その際の拡張子ですが
2次元ですと「.dxf」「.dwg」
3次元ですと「.sat」「.igs」「.x_t」「.stp」
上記の形式が弊社ですと対応可能ですが、事前に加工先に確認するのが良いと思います。

Illustrator のデータを dxf に変換して作成する

昨年になりますが、上野にある WEB 製作会社 LIG さんの移転パーティーの際に作ったキーホルダーの例で説明します。
LIG の副社長とたまたま幼馴染で何かお祝いをしようと思い、ロゴのキーホルダーを製作しました。

これまず、頂いた ai データをアウトライン化して、dxf データに変換。

これを CAD に取り込んで、板厚の設定やキーホルダー化し、加工データに変換して加工。

完成です。

円弧部分について

今回の LIG さんのロゴは、比較的データの作成が簡単に進んだのですが、後に出てくる teamLab さんのロゴのデータの作成には手間取りました。R の部分のスプラインが細かくなっていまして、これをポリラインにしても、海内工業の CAD では、読み込めずという感じでした。最終的に、Illustrator でパスの単純化をしてから DXF データに書き出しという形をとりました。これだと細かいデザインの部分が崩れてしまうので、要検討ですね…。

スプラインが細かくでも読み込める CADCAM などもあるかもしれませんし、もっと良い方法もあるかもしれないのですが、知っている方がいましたら教えて下さい。

2 次元 CAD ソフトでデータを作成する

次は2次元CADソフトを使って、dxfデータを作成してみます。
今回使うフリーソフトは、draft sight( http://www.3ds.com/products-services/draftsight/ )という2次元CADソフトになります。

こちらで加工したいものを作ります
例:4隅に穴のあるプレート

最後にデータの書き出しの部分でdxfを選択します。

ここで何種類かバージョンがあり迷うところですが、新しいものを選択しておきましょう。

加工依頼先のCADのバーションによっては、読み込めないということも発生しますので、その際はバージョンを落としてみるのと読み込めるのではと思います。

加工の依頼をする際に、気をつけなければいけないのが、CADで作ったからと言って、互換性が100%ではないということでしょうか。
CADソフト同士の相性等もあるので、寸法などを書いた紙の図面を添付するのが良いと思います。

3次元CADソフトでデータを作成する

今回使うのは、フリーの3DCADソフトの123D DESIGN ( http://www.123dapp.com/design ) です。

これから3Dプリンターを使ってみたい人が使うことが多くなりそうということを教えていただいたので使ってみました。
使い方はDMMさんのサイトでも掲載されていますね.
http://make.dmm.com/howtomake/autodesk123ddesign/;jsessionid=19007135E890D9BC720A21DBDB03FED4.web01

初めて使ってみましたが、慣れの問題でしょうが、使いにくい…
慣れればこれでもスムーズにモデリングできるようになると思います。

今回は、チームラボさんのロゴデータをいただいたので文字プレートを製作します

拡張子について

123D DESIGNでは、他の拡張子での出力が限られているので弊社のCADソフトで読み込めるのか?というところが問題でした。
下記が読み込める拡張子と出力できる拡張子みたいです。

■.123dx
123D DESIGN の独自形式
123D Designへの読込 …〇
123D Designからの出力…〇

■.stl
3Dプリンターに出力するのに使用される形式
123D Designへの読込 …×
123D Designからの出力…〇

■.stp
3DCADで多く使用される中間ファイル形式
123D Designへの読込 …〇
123D Designからの出力…×

もう少し互換性があると良いな感じますが、フリーソフトですので文句は言えませんね。
有料のCADソフトウェアは、かなり高いです…。弊社の3DCADも車が買えてしまう価格です。

今回、出力する拡張子は、STLを選択。

これをそのままCADで読み込むと見ることはできるのですが、加工データの作成ができませんでした。(これもCADの互換性の問題なのかもしれませんが...)

ですので、他のフリーソフトを使いました。

InStep
http://www.solveering.com/instep.htm

もしかすると他の方法もあるのかもしれませんが、調べてみたところ、これが一番簡単そうでした。

こちらでSTLをSTPに変換したところ、3次元ソフトで読込可能で、加工データも作成できました。

いざ加工

http://youtu.be/F29SPoLsZVk

加工を依頼する際に気を付けること

加工を依頼する際の注意事項ですが、2次元、3次元ともにデータのみでなく、ラフでかまわないので紙図面もいっしょに作成してつけてもらえると助かります。切断の寸法などがCADの互換性の関係でmmがインチになってしまったりということも起こりうります。他は、ネジ穴の加工も依頼する場合に、ネジ穴なのかただの穴なのかがわからない場合があります。
下記のような手書きで良いので指示があると助かります。

NCデータに変換

弊社のCADソフトは、アマダ社の2次元は、AP100 、3次元はSheet Worksになります。

こちらで作成した2次元や3次元のデータをNCの加工データに変換します。
3次元CADの互換性についてですが、Sheet WorksのベースCADがSolid Worksになりますので、Solid Worksと同じ形になります。詳しくは、海内工業までお問合せ下さい。
また、加工を依頼する先によってはdxfデータでもバージョンが合わない場合がありますので、読み込めないと言われたら、draft sightでバージョンダウンして書き出せば大丈夫だと思います。

素材について

今回の加工は、切断のみになります。
海内工業でレーザー切断加工な素材と板厚は、下記のようになります。

・JIS記号
一般的な素材名
加工可能板厚
- - - - - - - - - - - -

・SPCC
冷間圧延鋼板
0.5㎜~3.2㎜
いわゆる鉄です

・SECC
処理鋼板
0.5㎜~3.2㎜
表面にメッキの付いている鉄です

・SUS304
ステンレス
0.3㎜~4.0㎜
代表的なステンレス鋼

・SUS430
ステンレス
0.3㎜~4.0㎜
クロム系ステンレス鋼 磁性有

・A5052
アルミ合金
0.5㎜~5.0㎜
板金では、一般的なアルミ素材
銅合金
(C2600やC5191など)
真鍮
リン青銅
0.2㎜~2.0㎜
銅合金


*弊社のレーザー加工機では、純アルミ、純銅は、レーザー加工できません

価格について

おそらくこれが一番気になるところになるのかもしれませんね。
これは素材、板厚、大きさ、精度、製作数量によって変わってきます。
今回の例であげた3種類ですが、3パターンとも精度はできなりという形です。(できなりと言っても±1.0のズレはありませんが)

1. LIGさんのロゴプレート/製作数200個
素材SUS304/板厚0.5㎜/20㎜×50㎜
一個当たり300円くらい スプラインの問題等でデータの作成で時間がかかるともう少しかかるかもですね。(この時は、ヘアラインの端材があったので、表面はヘアラインになっています。

2. 4隅に穴のあるプレート/製作数1個
素材A5052/板厚1.0㎜
1個あたり8000円
1個の製作になると段取り等が1個のためにかかるので、かなり高額になってしまいます。単純なものであれば自分で作った方が安いと思います。

3. team Lab☆さんのプレート/製作数50個
素材SUS430/板厚0.5㎜
一個あたり600円くらい データの変換の手間がかかってしまいます。STPまで変換しての3Dデータですと割りとサクサクいくのでよいかもしれません。

価格に関しては、加工先々でバラバラかもしれません。個人の案件は断っているところも少なくないと思います。見積りを一度依頼してみるところからのスタートでしょうか。
海内工業では、私が窓口になっていますが、1人で対応するところが多いのでレスポンスが遅いかもしれません。入力しやすいフォームを作ったり、社内に細かい案件でもスムーズに流れる仕組みを作ったりしないといけないなと感じています。

工場に依頼するということ

「町工場」「職人」などの言葉から、とても近寄りがたいというのが現状ではないでしょうか?
最低限の人数でやっているところがほとんどですので、細かい案件に関わっていると、それだけで時間がかかってしまうというのも現実です。でも、それだと、いつまで経っても現状が変わらないと感じています。

以前、参加させていただいたMCT2013でのIANASの小林茂先生のこのスライドが心に残っています。

両者が少しずつ知るということが第一歩かなと感じています。今回の記事の掲載が少しでもそのお役に立てることを祈っています。

参考にしてくれた記事

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